「お手持ちのもっとも派手で華やかな美しい衣装」。そんなドレスコードを受けて、思い思いに着飾って松本の高原ホテルに集まったのは、大学の同級生を中心とした佐原真人の友人たち。今日は彼のお別れ会=告別式だった……。自分は「何者」なのか。悩める神鳥谷等が佐原真人と出会ったのは、その七年前のことだった……。
大吾の口から、最近担当となった別な校正者への褒め言葉を聞き、自分がすべてを担当することはできないとわかってはいたものの、苛立ちと複雑な思いを抱える正祐。そんな正祐に、同僚の篠田を通し、同業者同士の飲み会の話が持ち上がる。そこには、問題の「校正者」が……!? 大人気シリーズ最新巻!!
作家・白洲絵一(しらすえいち)。本名・神代双葉(かみしろふたば)。かつて捨てたその本当の名前を、若い愛人であるところの時代小説作家・伊集院宙人(いじゅういんそらと)は、大切に呼ぶ。二人は、うっかり撮られた写真のおかげで、全世界的に認知された恋人同士だ。だが、訣別したはずの過去、長く思い続けた初恋の人が、何もかもを投げ捨て、双葉の前に再び姿を表し求愛する。白州英知(しらすえいち)――かつて双葉が名前を奪ったその男に、果たして宙人の勝ち目はあるのか……!?
「私、あなたとお別れしたく存じます」。年中喧嘩しつつもそれでも睦まじく過ごす二人なのに、突然こぼれ出た正祐の言葉。それは、本と大吾を愛するが故のものだった。愛を知り人の心の機微を学んでいく正祐と、愛を深くする大吾の関係は、ついに「同棲」へと……!? 「色悪作家と校正者の別れ話」、「色悪作家と校正者の同棲」、掌篇「色悪作家と校正者の朝顔」の三篇を収録した、傲岸不遜な色悪作家×本を愛する美人校正者の人気シリーズ第五単!!
容姿端麗な文壇の寵児、現代文学文学の旗手、そして人気作家・東堂大吾の天敵でもある白洲絵一は戸惑っていた。つまらないパーティの後、塞ぐ気持ちを晴らすため飲みすぎ、翌朝ホテルで裸で目覚めると、自分を腕に抱いていたのは、眩暈を起こすような謎の日本語を操る金髪のおバカ作家で……!? 殺意を胸に再び彼、伊集院宙人と会うことにした絵一だったが……。「色悪作家と校正者」シリーズ、スピンオフ!!
「あなたを殺してしまいたい。いいえ――私は今、あなたに殺してほしいのです」。恋を知り、揺らぐ感情をひとつひとつ覚えていく正祐。一方大吾には、当然過去の恋と別れがあった。大吾が以前つきあっていた年上の女性作家の存在を知り、正祐は……。 人気シリーズ第四弾!!
ポストに白い封筒を、大切にそしてどこかうれしそうに微笑みながら投函する正祐の姿を目撃した大吾は、まったくもって面白くない。時は夏至、文壇は賞レースのまっただ中、ただでさえ不愉快な時期なのに。「私は手紙が好きです」。恋人はそう言って、三ヵ月もそっと文通を続けていたらしい。しかもその相手ときたら……!? 書き下ろしでは、二人の舌戦の俎上に夏目漱石が。書を愛するすべての人に贈る、大人気シリーズ第三弾!!
今日も今日とて行きつけの「鳥八(とりはち)」で酒を味わい、本の話と旨い肴に舌鼓をうつ大吾(だいご)と正祐(まさすけ)。――人気の時代小説作家とその校正者だった。思いがけず恋に落ち、口喧嘩を繰り返しながらも誰よりも互いを理解し強く惹かれ合うようになった二人だったが、そんな彼らの前に宇宙人のような新人作家が現れる。しかもそいつは、正祐を専属に囲いたいと言い出して……!? 書き下ろし「色悪作家と校正者の弟」も収録!!
実はファンだったが絶対近づくまいと思っていた人気作家・東堂大吾(とうどう・だいご)に、その校正担当者・正祐(まさすけ)は行きつけの居酒屋でつい声をかけてしまった。心の支えでさえあった大切な大好きなキャラが、彼の新刊の中で死んだことが許せなくて。「今殺したいくらいあなたが憎いです」。自分の正体を隠していた正祐だが、ある日ついに大吾にバレてしまい……。書を愛する、水と油、対照的な二人の、ビブリオ・ラブコメ!!
せつなげに遠くを見ていた少年。何かを言ってやりたくて、ついに伝える事ができなかった。思い起こせばそれが魚彦(なひこ)の初恋だったかも知れない。大学三年になった今、再会した彼・貴史(たかし)は、不眠に苦しみ魚彦のもとでなら眠れると、夜ごと訪れる。おかげで反対に魚彦の眠れない日が続いていたのだが……。
私は"LGBT"という呼称が好きではない。L/G/B/T(もしくは"Q"に分類される定義も含め)それぞれが全く違う性質を有しているのに、"LGBT"という名前を獲得した結果、あたかも同一の性質をもった1つの集団のように見える感覚、それがどうも受け入れがたいのである。 この作品の主人公・神鳥谷等(ひととのや ひとし)も、子供の頃から自分で自分を"普通"ではないと認識しながら、どうにも名前をつけること、定義づけをすることができないある"性質"を持っていた。 神鳥谷のその"性質"はジェンダーなのか、好みの問題なのか、それとも何かの病気なのか。そして果たして自分は何者なのか。これはそんな悩みを持つ神鳥谷と、彼とは逆に自分自身に対して不満も疑問も全く持たない大学の同級生・佐原真人、そしてその周囲の人々との物語。 神鳥谷の疑問に対して作品の中から無理やり答えを捻り出すとするなら、「自分は自分でしかない」という陳腐な言葉になるかもしれない。しかし、それを神鳥谷と佐原の、そして周囲の人々との交流を通して作品全体で表現している。物語としても、雑誌連載の作品を単行本化する際に話と話のつなぎ目をなくして1本の大長編のような構成にすることで、神鳥谷と佐原がともに歩んだ人生をまるごと描いたような、そんな壮大な雰囲気の作品になっている。 読む人によって、誰の視点を強く意識するか、そしてこの作品がどういう物語なのかという定義が変わってきそうな、いろんな表情がある作品。タイトルだけを見るとジェンダーがテーマのようにも見えるけど、実際はもっと受け入れる裾野の広い、"何者にもなれない"全ての人を肯定してくれる物語。 上下巻読了
私は"LGBT"という呼称が好きではない。L/G/B/T(もしくは"Q"に分類される定義も含め)それぞれが全く違う性質を有しているのに、"LGBT"という名前を獲得した結果、あたかも同一の性質をもった1つの集団のように見える感覚、それがどうも受け入れがたいのである。 この作品の主人公・神鳥谷等(ひととのや ひとし)も、子供の頃から自分で自分を"普通"ではないと認識しながら、どうにも名前をつけること、定義づけをすることができないある"性質"を持っていた。 神鳥谷のその"性質"はジェンダーなのか、好みの問題なのか、それとも何かの病気なのか。そして果たして自分は何者なのか。これはそんな悩みを持つ神鳥谷と、彼とは逆に自分自身に対して不満も疑問も全く持たない大学の同級生・佐原真人、そしてその周囲の人々との物語。 神鳥谷の疑問に対して作品の中から無理やり答えを捻り出すとするなら、「自分は自分でしかない」という陳腐な言葉になるかもしれない。しかし、それを神鳥谷と佐原の、そして周囲の人々との交流を通して作品全体で表現している。物語としても、雑誌連載の作品を単行本化する際に話と話のつなぎ目をなくして1本の大長編のような構成にすることで、神鳥谷と佐原がともに歩んだ人生をまるごと描いたような、そんな壮大な雰囲気の作品になっている。 読む人によって、誰の視点を強く意識するか、そしてこの作品がどういう物語なのかという定義が変わってきそうな、いろんな表情がある作品。タイトルだけを見るとジェンダーがテーマのようにも見えるけど、実際はもっと受け入れる裾野の広い、"何者にもなれない"全ての人を肯定してくれる物語。 上下巻読了