ピーチボーイリバーサイド

"正解"のない問いの答えを探し求めるファンタジー

ピーチボーイリバーサイド クール教信者 ヨハネ
sogor25
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元々はクール教信者さんが2008年からwebマンガとして投稿していた作品で、作画としてヨハネさんを迎えてマガジンRにて商業作として連載を開始した作品。 ベースとなる物語は誰もが知る御伽話「桃太郎」。小国の姫・サルトリーヌ(サリー)の住む城に日本から来た少年・キビツミコトが訪れるところから物語が始まる。ミコトを追ってきた鬼が小国を襲ったことをきっかけに、ミコトとサリーの鬼との戦いの旅が始まる…というお話なのだが、単純なバトルものとして展開していかないのがこの作品。 「正義の反対はまた別の正義」という言葉があるが、本来"悪"として描かれるはずの鬼たちの背景もページ数を割いて描かれる。最初こそ人間の生活を脅かす存在として描かれるが、鬼たちが主人公一行を襲う動機も殺された仲間の敵討ちであったり、人間社会から迫害されたことにより生まれた羨望・怨念であったり、徐々に"完全悪"ではない存在として描かれていく。そして、主人公であるミコト・サリーの存在も"完全なる正義"としては描かれない。ミコトは鬼を全て討ち滅ぼすべき存在として捉え、サリーは鬼を対話により分かり合える存在として考え、共存の道を見つけるために旅をする。特にミコトの鬼に対する感情は強烈な怨恨として描かれており、少なくとも鬼に対する思想についてはサリーと完全に対立する形をとっている。(もしかしたらミコトのこの怨恨の感情が人間の心に巣食う"鬼"である、という意味もあるのかもしれない) つまりこの作品は「人間 vs 鬼」というバトルマンガの体を取りながら、ミコト・サリー・鬼という三者の"正義"同士の戦いの物語でもある。大方この鼎立の構造に明確な"正解"を出すことは出来ないが、対立する者同士の共存という恐らく三者の中で最も困難な道を選んだサリーが旅の果てにどのような答えを出すのか、それがこの作品の最大のテーマなのではないかと思っている。 と、すごい畏まった作品紹介をしてみたが、そもそもミコトとサリーの冒険譚として読んでも、亜人との遭遇や人間社会の内部にある差別の構造など様々な困難に直面し乗り越えていく様が面白い。ちなみに共に旅をしていくっぽい書き方をしていたが、ミコトとサリーは基本的には道中を共にしない(訪れた街でたまたま出会うことはあるが)。それは上記の考えの相違も一因なのだがもっと大きな理由もあって…それは本編を読んでからのお楽しみということで。 6巻まで読了

ふたりぼっちのオタサーの姫(読切)

「オタクと姫」の新しい関係性にキュンとする!

ふたりぼっちのオタサーの姫(読切) クール教信者
たか
たか

読み始める前はエロを意識したカラー絵を見て「作風が合わないかも…」と危惧していたけれど、全然そんなことなかった! かなり前のめり気味で「オタサーの姫になってチヤホヤされたい」女の子・大山さんが主人公。 「チヤホヤされるため、いかにも姫っぽいフリルの付いたブラウスにハイウェストのスカートを着て、サークルの中でも人数が少ない(=他に姫がいない)サークルに加入するが、人数が少なすぎて自分の他にはオタク男が1人しかいない」というあらすじ。 この唯一のサークルメンバーであるオタクの「タク」の性格がすごくいい…! 主人公の色仕掛けに微塵も動じず、ただ淡々と褒め続けるところは少女漫画のヒーローなみにクール。(むしろなんでそこまで女の子に慣れていてオタクなんだよというレベル) **本当は大きなサークルで姫として君臨したいのに、オタクくんの大変素晴らしいチヤホヤにほだされてしまう姫がすごく可愛い。** 超次元ラクロスアニメにハマった大山さんが、話について来れないイケメン(オタクの友達)よりオタクと盛り上がるシーンではニヤけてしまった。 この2人の毎日のサークル活動や、タクとイケメンの過去など、これは連載でもっと見たい…!