超有名な表題作が面白いのはもちろんなんですが、それ以外の短編ももれなくすべて面白かった。 親と子という関係を描く中で、親は大人だからと言って心まで大人になりきれているとは限らないんだなと思える表現が多い短編集だった印象。 そんな中でも異彩を放っていたのが「学校へいくクスリ」。かなりSF色が強めで、作者の遊び心も見えて、何を伝えたかったのかはよく分からなかったけど読んでて楽しい一作でした。
料理漫画について調べるとだいたい萩尾望都の『ケーキ ケーキ ケーキ』と望月三起也の『突撃ラーメン』が始まりだと言われている話が多い。それ以前にも『トンカツちゃん』などありますがその辺に関しては本題と関係ないので触れないです。 内容は主人公のカナの頭の中は、いつもお菓子のことばかり。ある日素晴らしいフランス菓子を作る青年に会い菓子職人になるためにパリへ渡る。 原作ありなので俺の読んだことのある萩尾望都作品とは違う感じでしたが今読んでも面白かったです。 ただ同じ初期だと『モードリン』/『小夜の縫うゆかた』/『雪の子』とか方が好きかな。
読まねば…読まねば…と思いつつ未読だった名作「11人いる!」ですが、実は全部で120ページの短い作品だったんですね!なんと手に取りやすい。 舞台は宇宙大学受験での最終テスト。10人一組で宇宙船に乗り込み53日間、誰一人として欠けることなく生き延びること。しかし船の中には…11人いる!!という話。密室に招かれざる人物がいるなんてハラハラドキドキの最高にサスペンスな始まりで一気に引き込まれました。 他の方もクチコミを書かれていましたがフロルが可愛いですね。「続・11人いる!東の地平・西の永遠」、番外編「タダとフロルのスペースストリート」と可愛さがどんどん増していくのも見どころでした。
「天然コケッコー」が映画化された時に描き下ろされた読み切り3本が収録されているということで購入しました。大沢くんがそよちゃんを好きになった瞬間が描かれていて、本当に読んでよかったと思いました…。 書き切れない位たくさんの漫画家さんが漫画やイラストを寄せているのですが、紡木たく先生ファンの方は必読なんじゃないかと思います。くらもち先生と対談されているのですが、紡木先生のデビュー間もない頃から仲が良いそうで、お互いに影響されたという貴重なお話を楽しそうにしていらっしゃるんです。ここでしか知ることが出来ないこともあると思いますよ!
ちょっとわがままで、たまに人に迷惑もかけるけど、素直さと可愛さでなんでも許されるレオくんが主人公の猫マンガ。萩尾望都先生の猫がモデルなのかな? 学校に行ってみたり、漫画家のアシスタントに行ったり、お見合いをしたり(人間と!)、グーグーだって猫であるの映画に出ようとしたり、人間と同じようなことをする、いわゆる2足歩行できるタイプの猫です。 その一方、トイレは猫用だったり、ネズミを追いかけたり、「猫のくせに」とバカにされたり、と、猫っぽい人間のような人間っぽい猫のような絶妙な存在。 他の「猫マンガ」とは一味違うけど、猫の可愛さは存分に味わえる一冊です。
美しいものが好きな方は読んでください! 天才萩尾望都先生の美しくも哀しいバンパネラの少年少女の物語です。 ヨーロッパ好き、美少年好き、少女文化好き、ゴシックロリータ好きの方は特にオススメです。 名作なんてもんじゃありません、漫画を超えて文学と言っても良いくらいの作品です。知らないなんて勿体ないですよ。
ドイツの男子校寄宿舎のなかでの人間関係を非常に細やかに丁寧に描かれたストーリーです。そこで暮らす彼らの精神的基盤にはキリストの教えが常にあり、とても新鮮で少年らしい純粋さが読んでいる者にも安らかさを与えてくれます。コマ割りが細かいですが、背景も手を抜かず描かれており、まるでアンティークを見ているようです。
自分が生んだ娘がイグアナに見えてしまい、どうしても愛することのできない母親と、自分もイグアナだと信じてしまっている娘の物語。 主人公の見た目がイグアナなんて、絵も物語もなかなかシュール。 それでも、健気に母親の愛情を求める主人公の姿には涙が出ます。 よりによって、妹の姿は普通の人間の子に見えるお母さん。姉妹の扱いは雲泥の差に…。 母親の態度が、いかに子供の人格形成に影響するか! これは今でいう「毒親」の物語かもしれません。 最後は、死んだお母さんの姿もイグアナで、主人公はその気持ちを思い、許すのですが…。 心に突き刺さる、母と娘のお話でした。
※ネタバレを含むクチコミです。
唐突ですが、他人のする夢のはなしほど面白みに欠けるものはない、と思ったことはないでしょうか。 夢、それ自体は魅惑的なものにちがいありません。何なら、夢のたったひとつで人生だって狂いかねない。私には経験がありますが、当時の恋人に「夢のなかでひどいことをされた!」と泣きながら怒られたことがあります。その当時は、なんて理不尽な! 寝言は寝てから言うものだ! と思って、まったく取り合わなかったのですが、いまでこそ気持ちが少しわからないでもない。 他人のする夢のはなしほど面白みに欠けるものはなけれど、夜にみる夢ほど魅惑的なものもまたとないのです。 まだ経験があります。ある夜、知人が夢にでてきたのです。そして翌朝、目が覚めると、私はそのひとのことを現実に好きになっていました。たかが夢にみたことで、そのひとと現実になにかあったわけではないのにもかかわらず……。夢で体験されたことというのは誰とも共有できない代わりに、少なくとも本人にとってみれば、まがうことなき事実なのです。 夢の夢たる最たる由縁はきわめて体験的なところにあると思います。夢はほかでもない当の本人に体験されてはじめて夢となる。夢でひどいことをされて激怒する、というだけにとどまらず、夢に知人が出てきて、それがきっかけでそのひとを好きになってしまうことがあるのも、それが当人にしてみれば、きわめて体験的な事実だからだと思われます。夢をはじめから嘘と決めつけていればそんなことは起こるはずもありません。それどころか、夢には現実を変容させる力さえあります。 他人のする夢のはなしが往々にして面白くないのは、体験という夢の本分を欠いて、それを言葉にのせて話しているからなのでしょう。しかも、その言葉が夢にみた事実に近づけば近づくほど、かえって面白さからは遠く離れてゆく。というのは、やはり、夢は体験された本人"だけ"のものだからです。 夢のはなしを面白く聴かせるのには、ある種のテクニックが必要となってきます。すなわち、夢をわたし"だけ"のものにしないということです。つまり、嘘という手法をつかって、夢の枠をあなたにも伝わるようにひろげてあげるんです。そうすることで、夢の核たる部分は失われてしまいますけれど、少なくともあなたには伝わるようになる、共有に耐えうるものになるんです。 それは、なんだか不誠実だと感じられますか。そんなひとのために、もうひとつだけ方法があります。つまり、嘘をつかって夢の枠をひろげるのと真逆のことをするのです。ひろげるのではなく、夢を閉ざしてゆく、針先の鋭い一点のように凝縮するまで閉ざしてゆく。そうすれば、もし運がよければ、生きているあいだに、もうひとつの針先とぶつかることができるでしょう。確率はとても低いと思われますが。しかも、それまであなたは誰とも夢を共有することができず、とても孤独な思いをすることになるでしょう。 もし、それでも誠実を貫こうという方がいらっしゃるならば、萩尾望都の『バルバラ異界』を読むことをオススメします。あなたはここで夢を体験することができる、ひとに聴かされる夢のはなしではなしにです。この『バルバラ異界』というマンガを読んでいる時間だけは、あなたは孤独を忘れることができる。なぜなら、バルバラ異界はほかでもないあなたに体験される夢なのですから。
超有名な表題作が面白いのはもちろんなんですが、それ以外の短編ももれなくすべて面白かった。 親と子という関係を描く中で、親は大人だからと言って心まで大人になりきれているとは限らないんだなと思える表現が多い短編集だった印象。 そんな中でも異彩を放っていたのが「学校へいくクスリ」。かなりSF色が強めで、作者の遊び心も見えて、何を伝えたかったのかはよく分からなかったけど読んでて楽しい一作でした。