洗礼

母と娘の関係の真理をついてる

洗礼 楳図かずお
かしこ
かしこ

絶世の美女として有名な大女優・若草いずみには誰にも言えないコンプレックスがあった。それは普段はドーランを塗り固めて隠している顔にできた大きなアザと、どうしても抗うことのできない老いである。しかし主治医からある提案をされたことにより、彼女は女の子を産む。そして芸能界を捨てて表舞台から姿を消した…。数年後、大女優だった面影がないほど醜くなった母親は、昔の自分のように美しく育った小学生の娘・さくらを襲う。そして娘の身体に自分の脳を移植する手術を行うのだった!美しい身体を手に入れた母親は、これまでの人生では手に入れられなかった平凡だけど幸せな生活を送る為に、新婚だった担任の家に潜り込み、その妻を殺そうとする…。 母親と娘の関係って怖いですよね。仲が良くても悪くても怖いよな〜って、自分を見ても、他人を見ても感じます。やっぱり似てしまうからしょうがないってところもあるんでしょうけどね。脳移植後の見た目は少女だけど中身はオバサンっていう恐怖は「エスター(映画)」にも似てるなって思いましたが、オチは「洗礼」の方が怖かった。自分が娘だからより怖く感じたんだと思う。これを少女コミックで連載してたってヤバすぎる。笑!

わたしは真悟

壮絶なまでの、愛と真実の物語

わたしは真悟 楳図かずお
影絵が趣味
影絵が趣味

奇跡は 誰にでも 一度おきる だが おきたことには 誰も気がつかない 各巻の冒頭に冠せられる一句です。 このことを産まれてくることのメタファーと捉えるかどうかは、ひとまず端に避けておきたいと思います。 それはともかくとして、皆さんにも憶えがあるでしょうか。子どもの頃に、どうやったら子どもができるんだろう、と悩んだことが。 小学三年生の夏休みでした。私は急性の髄膜炎に罹り、救急車に運ばれました。運ばれた先の入院病棟で、私はAちゃんと知り合ったのでした。 私たちはすぐお互いを好き同士になりました。 それぞれの学校で、日記の宿題がでていたのですが、外へ出られない入院患者の私たちには書くネタがほとんどありません。そこで、ふたりで協力をして、空想の日記をしたためることにしたのです。 この悪巧みは、部屋の消灯時間がきてから秘密裏に行われました。灯りが落とされると、どちらかがカーテンに閉ざされたベッドのなかに忍び込みます。そして布団をあたままで被ってライトのひかりを漏らさないようにしながら日記を綴りました。 ある日の夜、空想の日記を書く延長で筆談をしていたときでした。どうしたら子どもができるのか、という話になったのです。当時の私にとって、その謎はあまりにも大きなものでした。それはAちゃんにとっても同様だったようです。私たちは日頃の空想癖にさらに拍車をかけて、どうしたら子どもができるのかについて筆談しつづけました。しかも、その謎はあまりに大きなものでありながら、あらゆるところで人知れず行われている、もっとも身近で、もっとも不可思議なことなのでした。 Aちゃんはまだ憶えているでしょうか、あの日の夜のことを。私は『わたしは真悟』を読み返して、また、ふと思い出しました。きっと、この本を読み返すたびに思い出すのだと思います。