強制ヒーロー

果たしてひとは「ヒーロー」になれるのか?

強制ヒーロー 宮下裕樹
ANAGUMA
ANAGUMA

民間人が犯罪者を逮捕し、その場で判決を下すっていう裁判員的な制度「徴正令」がテーマの本作。 徴正令の対象者に選出され「強制的に」ヒーローをやる羽目になった冴えないサラリーマン・青田とともに、読者は毎話さまざまな悪事を通じて善悪と正義について考えていくことになります。 なんといっても本作の魅力はとにかく地味ィ〜〜〜〜なこと!(※褒めてますよ!!!) 出てくる悪事はチカンとか下着ドロとか生活に密着したショボいものが多くて、だからこそ、そのしょーもない罪を犯したおそらく自分たちと大して差がないであろうひとの人生を、自分たちの意思で左右していいものかどうかがズッシリと(地味に)響いてきます。 なかでも、青田が大学時代好きだった先輩の結婚式で酔っ払って醜態を晒すっていう最悪のエピソードが僕は一番好きで。この回は本当にどうしようもない展開になっていくんですが、情けなさのリアリティが真に迫ってるんですよね…。 青田も主人公だからといってヒーローや「正義」にふさわしい人間では決してないんです。 登場人物全員、等身大のダサさと魅力を持っているので、読めば読むだけ親近感が湧いてきて、そんな彼らがなけなしの勇気を出して何かを決断した時、本当の意味でヒーローに「なろうとする」ときのカッコよさのギャップがじ〜んと沁みてくるんですよね。 3巻と短いですが、読み通せば「正義ってなんなんだろな〜」ということを薄ぼんやり日常の色んなシーンで考えるようになる…かもしれません。

東京カラス

赤マントはトラウマ

東京カラス コザキユースケ 宮下裕樹
mampuku
mampuku

 民話や伝承の類ではなく都市伝説にスポットを当てた漫画です。「人面犬」「てけてけ」「赤マント」とかそういうやつです。昔ブームというか社会現象にまでなってたみたいですけど、最近の子どもはトイレの花子さんとか知ってるんでしょうか?私は「地獄先生ぬ~べ~」を読んで育った世代なので作中登場したようなのはだいたいわかりましたが(あと「学校の怪談」とか)  さて「東京カラス」はというと、ホラーというわけでもなく謎解きというわけでもなく、キャラの濃い変な人たちがドタバタやりながら事件解決という掴みどころのない内容。ただ霊感のない主人公・満子が知恵と勇気で突き進んでいくさまは結構爽快感でした。  かの「ぬ~べ~」が小学校の先生という役柄上、妖怪などの伝承が持つ教訓的な側面がフィーチャーされがちだった(「化物語」とかもそうです)のに比べ、「東京カラス」は作中でも言及している通り「教訓という側面をもたない」都心伝説がテーマだからこそ自由で前向きで親しみやすいコメディになれたのかなぁなんて思います。"無責任さ"とでも言い換えられそうな。  それはそうと「化物語」楽しみですね