1981年〜1986年にビッグコミックで連載ということで、時代的にはキャプテン翼と同じ連載開始年ですね。感慨深いです。 内容は、鉄板のビッグコミックものですので、ハズレがありません。 よく「手塚先生の先祖(曽祖父)の手塚良庵を主人公とした物語」「手塚治虫のルーツを描いた作品」みたいに紹介されたりするのですが、あまりそこがメインのテーマではないので、ミスリードな感じがします(メインキャラとして手塚良庵はガッツリ出てきますが)。 手塚良庵も結構好感が持てる性格(女好きでだらしないが、やるときの集中力がやばい)で愛せるのですが、もう一人の主人公の伊武谷万二郎もそれとは反対(不器用で融通が効かない正義漢)ですが、かなり愛せます。 二人はいつも殴り合ってるのですが、本当は仲良くて尊敬しあってるところが良いですね。退廃の時代に咲いた一輪の友情の花ですね。現代にこれが連載されていたらBLの同人誌が多数作られていてもおかしくないです。 色々な人に目をかけられるほどの資質を持った万二郎でしたが、その性格のためにあまり出世せずに、最後は悲しい最期を遂げてしまいます。わたしも出世とかは良いので、自分に正直に生きようと思いました。
1974〜1975年に漫画サンデーに連載された作品です。1900年、清朝末期の中国での物語から、主人公の亡命によって舞台は日本へ。史実の事件や人物等も交えながら展開します。 正直、最初に読んだときはピンと来なかったんですよね。当時は火の鳥から手塚にはまって読み漁っていた時期だったので、火の鳥っぽい要素を求めすぎていたのかもしれません。 それから幾星霜、わたしも大人になりまして、そういうのヌキで読めるようになったのですが、ムムム意外と面白い!!ちょうど盛り上がってきたところで打ち切りにより終了してしまうのですが、本当にもったいないですね!!昭和初期まで各構想があったようで、続きがすごく気になります!! あとがきで、「第二部では、日本の軍閥の跋扈と退廃、北青年の失意と上海での執筆活動、そして二・二六事件の青年将校の蜂起、という核心に移していきたいと思っています。どこかで連載をやらせてくれないでしょうか。」と手塚先生自ら営業されてます。実現しなかったのが残念でなりません。 あと短編が6編併録されています。サスペンス感あふれる作品中心にまとまっていて、ものすごく読ませるもので溢れてます。 ■時計仕掛けのりんご ■バイパスの夜 ■嚢 ■イエロー・ダスト ■悪魔の開幕 ■山楝蛇 特に「嚢」は奇形嚢腫を扱った1968年作品で、ピンときた方もいらっしゃるかと思いますが、ピノコ誕生の話のプロトタイプ的なものです。 「時計仕掛けのりんご」も全集のタイトルとなったこともあるほどの作品で、当然面白いですし、「バイパスの夜」は世にも奇妙な冒険でドラマ化もされたようです。
同僚に激しく勧められ、辛い環境に身をおく同志として火の鳥は読んだ方がいいと言われ手に取りました。スタートから重々しく、気軽に手に取る漫画ではないですが、ハードメンタルを求められる環境に身をおく仲間はこちらの作品に支えられたそうなのでオススメです。
1967〜1968年に週刊少年サンデーに、その後1969年に冒険王にて連載された作品。サンデー時代は「暗い」という理由で打ち切りになったようです。 なぜか手塚治虫先生の代表作の一つっぽく扱われることが多いのですが、自分自身(ヅカラーです)はそこまで好みではありません。 2000年代に入ってからも、2度の小説化(2001、2006)、ゲーム化@PS2(2004)、アニメ化(2019)、映画化(2007)、舞台化(2004、2009、2019)と、ひくて数多のメディアミックス王となっています。 そして2022年12月になんとタテヨミマンガとしてリメイクされ、日韓同時配信開始とのことでしたので、再読しました。 https://tezukaosamu.net/jp/mushi/entry/26314.html ストーリーは、戦国時代に、父の天下統一の願いと引き換えに魔神の生贄とされた主人公(百鬼丸)が、失われた自己の48個の体のパーツを取り戻すため、48匹の妖怪を倒す旅に出るというものです。 つくりは、基本的には1匹とのバトルを1週〜数週で描くのの繰り返しで、いわゆるバトルものの王道ともいえるものになりましょうか。ちなみに百鬼丸は拾って育ててくれた医者に、ピノコ的な魔改造を施され、失ったパーツの各部分に武器(剣や爆弾など)を仕込まれており、それらを駆使して敵と戦います。 ヅカ先自らお認めになられてるとおり、水木しげる先生の各種妖怪もののヒットに触発されて生み出された作品とのことですが、正直手塚先生にこういった王道バトルものは向いてないように思われます。 各種メディアミックスの影響や、あたかも先生の代表作かのような扱いで誤解してほしくないのですが、手塚先生の作品に興味を持つことがあったら、個人的には、絶対にどろろからは読んでほしくないです!!!火の鳥やブラックジャック、ブッダ、きりひと讃歌、奇子、陽だまりの樹、アドルフに告ぐあたりがまだでしたら、そちらの方を先に読んでほしいです!!!! もし「どうしてもバトルものが読みたいんだ!!」ということでしたら手塚先生の作品ではなく、宮下あきら先生の「魁!男塾」にしてください!
医者のブラックジャック、代役専門の舞台役者の七色いんこと並ぶ裏稼業プロ三部作のひとつです!今回の主役は、無免許タクシードライバーのミッドナイトこと三戸真也!!1986〜1987年にチャンピオンで連載された作品です!! ブラックジャックこと間黒男もゲスト出演しています。ゲスト出演どころか、最終話のかなり美味しいところでもガッツリ出てるので、見ようによっては、ミッドナイトという作品自体がブラックジャックの壮大な長編の1話のようにも思えてきます。 そのラストはかなり意外なおわり方でした。。。基本的にはヒューマンドラマ・人情ものの1話完結が続くBJ方式ですが、通底するストーリーがあり、入院中の女(スケ)のため、タクシードライバーをやりつつお金を稼いでいる、というものでした。なので、そのスケの病状のゆくえや、背景に隠されたドラマなどがものすごく気になりながら読んでいったのですが、まさかあんな感じの終わりかたとは・・・。けして期待はずれで面白くない、ということではないのですが、想像と違ったのでびっくりしました。繰り返しますが、完全にブラックジャックの話になってます。 ちなみに私が好きな話は、以下のとおりです。 ・トン骨の話 ・お茶の水博士の話 ・タヌキの話 ・平さんの最終出勤日の話 ・猫の引っ越しの話 気に入ったセリフは「空き巣は芸術だぞ、オレ芸術家だからベレーをかぶる」です。
ヅカラーの間では「ぱちマリ」の愛称でお馴染みの同作品。1970年にチャンピオンに連載された作品となります。文庫全集版の表紙のマリアはかなり良く描けてますね。本文中とは印象が違います。 一応、性に関する描写などあるのですが、いまどきのジャンプとかマガジンとかに比べるとおままごとレベルですし、だいぶ健康的で文化的です(性的な興奮を得ることが目当ての読者は別のマンガにしたほうがいいと思います)。ですが信じられないことに、ぱちマリが掲載されたチャンピオンが福岡で有害図書指定されたことがあったようですね。時代を感じます。 主人公の焼野と、焼野から出てきたエクトプラズムが入り込んだダッチワイフのマリアがほのぼのとした恋をはぐくみますが、ビニール製のダッチワイフでは何事も如何ともし難く、最後の最後で羽澄マリという激かわの転校生に持ってかれます。 ただ、相手がダッチワイフという存在だったからこそほんのりとした健康的な愛情を育むことができたのかなと思います。 また、舞台が私と同じ市立第十三中ってのも愛着が湧きます。ちなみに作中手塚先生が書いたオバQと鬼太郎が出てきますが、激うまです。さすがプロ。 最後に、主人公に敵対する組織のトップであるボスナンバーワンが女性ってのも当時かなり新しかったと思いますが、そのデザインも2022年の今でも通用するモダンさで、昨今大ブーム中のスプラトゥーンとかに通じるものを感じます。さすが天才。
1972〜1973年にビッグコミックで連載された作品。ハズレのないビッグコミック × 手塚先生のニックス作品です。しかもタイトルに「奇」が入ってるマンガ作品は、三年奇面組、ハイスクール奇面組、ジョジョの奇妙な冒険、寄生獣、やまだたいちの奇蹟などハズレ知らずなので、面白くないはずがないです。 舞台は、敗戦とGHQによる統治を契機とする価値観の一新・一変に混乱する日のもとニッポン。ある農村の封建的で閉鎖的な旧家での陰鬱で破廉恥な常識。変わろうとする人、変われたように見える人、変われなかった人たちの悲喜交々の20数年間が描かれます。 タイトルにもなってる奇子は、戦後直後から20数年間外界との接触を断たれて成長し、あの頃のまま外界に飛び出し、変わろうとした人、変わったように見える人、買われなかった人たちとさまざまな出来事に出くわします。 手塚先生によるともっと長編にする予定だったそうで、その構想も見てみたかったです。 同時収録で以下の短編作品も読めます! ・鉄の旋律 ・白い幻影 ・レボリューション
手塚治虫先生のような上質なマンガ家になろうと思い、手に取りました。ただ色々な事情があったようで、あまりマンガの技法だったりとかそういったことには触れられておりません。 なので、これを読んだからといって、明日から手塚治虫先生のような上質なマンガが描けるようにはなりません。ちょっと残念でした。 ただ、所々メッセージは込められています。良い漫画を描くには「まず下品な言葉をかかないこと」だそうです!!!ことに不良の使う言葉やきたないいなか言葉はNGです! といいながらご自身の作品にも「このオッタンチンのやきブタオヤジのデベソッパゲ!!」など出てくるのですが、確かに不良はこのような言葉は使わないし、いなか言葉でもないのでセーフですね。非常に上品です。 表題作の他、 ・珍アラビアンナイト ・化石島 ・罪と罰 の3本が収録されています。 いずれも1950年代前半の単行本作品です。 さすがに70年前の作品ですので、今読むと技法的にもストーリー的にも若干厳しめな部分もあり、手塚ファン以外では、あえて今この作品を読む必然性は全くないと思います。残念ですが。 ただ、現代でも皆があまりやっていないような実験的なコマ割りや手法が使われてるシーンも多々あり、キラリと光る作家性を隠しきれていない部分はさすがだなと思いました。
誰が始めたかは知らないが漫画アニメとアメコミ・ディズニーの対立を煽る言説が流行りだしてから30年近く、そして現在進行形でこの偉大な漫画が本編を一切読まない下品な人間たちにダシにされ、愛国ポルノとして搾取され続けていることに非常に憤りを覚えています。弱肉強食の野蛮な世界から脱却し、肉食と草食、そして人類とも共存できる存在になろうとするレオ達の努力を踏みにじるな!そしてジャングルを切り開いての田畑の整備や肉食獣の草食化・文明化を進める姿勢は果たして善なのか?フィクション内では成功しているが、現実での中国・アフリカ・東南アジアの国々はどうなっているか?21世紀を生きる現代人ならではの視点でこの作品を読み解くと更に世界を掘り下げられる。未読の方は下品なメディアに惑わされずに、この漫画に等身大で対峙してもらいたい。そしてできる事なら初期バージョンの漫画少年版とも読み比べ、手塚治虫が残した大いなる遺産を堪能して、今後の人類が成すべきことは何かを真剣に考えてくれ!
1988年に朝日ジャーナルに連載された作品です。 手塚先生はファウストが大好きだったらしく、取り上げるのは今回で3度目です。タイトルにファウストと入っているので、そこから材を採ったことは明らかなのですが、基本的なテーマだけ借りたオリジナル作品といった方がいいと思います。 流石にファウストは何度も読まれていたそうですし、マンガにするのも3度目ということで、かなり手塚先生の中で消化され、こなれた手塚マンガとしてアウトプットされていると思います。遺作となった3作品の中では、個人的に一番完結して欲しかった作品です。 第2部突入直後にお亡くなりになられて未完になっているのですが、お亡くなりになる4ヶ月ほど前(1988年9月27日)の講演で、本作の2部以降の壮大な構想について語られており、そのバイタリティの豊富さに尊敬の気持ちを超えて呆れてしまうほどです。すごすぎる・・ その講演の文字起こしや、未完成ネームも併録されていますので、気になる方は購入されるとよいと思います(私が読んだのが文庫全集版ですので、他バージョンにそれらが収録されてるかは未確認ですのでご注意ください)。
1981年〜1986年にビッグコミックで連載ということで、時代的にはキャプテン翼と同じ連載開始年ですね。感慨深いです。 内容は、鉄板のビッグコミックものですので、ハズレがありません。 よく「手塚先生の先祖(曽祖父)の手塚良庵を主人公とした物語」「手塚治虫のルーツを描いた作品」みたいに紹介されたりするのですが、あまりそこがメインのテーマではないので、ミスリードな感じがします(メインキャラとして手塚良庵はガッツリ出てきますが)。 手塚良庵も結構好感が持てる性格(女好きでだらしないが、やるときの集中力がやばい)で愛せるのですが、もう一人の主人公の伊武谷万二郎もそれとは反対(不器用で融通が効かない正義漢)ですが、かなり愛せます。 二人はいつも殴り合ってるのですが、本当は仲良くて尊敬しあってるところが良いですね。退廃の時代に咲いた一輪の友情の花ですね。現代にこれが連載されていたらBLの同人誌が多数作られていてもおかしくないです。 色々な人に目をかけられるほどの資質を持った万二郎でしたが、その性格のためにあまり出世せずに、最後は悲しい最期を遂げてしまいます。わたしも出世とかは良いので、自分に正直に生きようと思いました。