豊田徹也の始まり
漫画家としてデビューし、成功するまでのハードルは高い。 というかタイミングだったりなんだったり色々とそれこそ運命のようだ。 豊田徹也センセイはアフタヌーンで本作の連載が始まるまでちょっと時間がかかったタイプだったようだ。当時ちょうどアフタヌーンを読んでたので(BLAME!!とか無限の住人、EDEN目当てで買ってた)懐かしい気持ちで電子の単行本を読み返した。 短編集。集まるとこういう意味があるんだ、やはり好きだ。 一気読みする気持ちよさは本作には結構あって、色々と豊田徹也の始まりらしい作品になっている。後の作品にも通ずるキャラや設定が出てきたりするのでぜひ読んでみてもらいたい。 私は「とんかつ」が好きでした。
私が豊田徹也さんの作品と出会ったのは町の古本屋でした。珈琲時間とゴーグルがビニール掛けをされて売っていましたが表紙を見た瞬間に「これはいい漫画だ」とビビッと来てレジに駆け込んだことを覚えています。その後で実は漫画好きの間で語り継がれている漫画家だということを知りました。いい漫画との出会いはたくさんあったけど中でも幸福な出会いの一つだと思います。
この度再読して「ゴーグル」がデビュー作であることと改めてその完成度に驚きました。映画化された代表作「アンダーカレント」でも心の傷がテーマになっていると思いますが、短編であるからこそよりシンプルに伝わる登場人物の心の機微があります。家主と居候というデビュー作なら敬遠しがちな突飛な設定や、話の中でしか登場しない優しかった少女の祖父(後に収録されている「海を見に行く」には登場しますが、描かれたのは「ゴーグル」の約9年後なんですね)の存在も漫画っぽくならずリアルなディテールとして機能している。まさに完璧な一作です。