家族の形とは。
しっかりした小学生の勇飛くん、とても可愛いものが大好きな極道蒼井さんの関わりを面白く可愛く描かれている作品です。 題材としては‟家族”で、でも血のつながりなんて関係ないのかも?と思えるような話でした。 人は 家族=血の繋がっている人、小学生の男の子=やんちゃで可愛げがあるような子でいるべき、成人男性=たくましくかっこよく、 という昔ながらのイメージを持っている人が多いのでは?と思いますが、この作品は多様性をとても尊重している素晴らしい作品です。 縛られがちな考えを、固定概念を変えようとしてくれる作品で、そういった人にはそのままでいいんだよと教えてくれているような気がして、心暖かくなりました。 そしてどんな形の家族があってもいいという隠れメッセージも見えてくるので、自分の中の世界観が変わるいいきっかけのお話だと思いました。
あらすじと表紙、あるいは最初の1話だけを読むと、かわいいものが好きという極道のギャップを少年目線で楽しみつつツッコんで行くコメディのように思われるかもしれません。
もちろんそういった要素もあるのですが、本作は話が進むごとにどんどん新たなキャラクターが登場して来ます。少年の保護者や同級生、年上のお姉さん、極道の舎弟……そのどれもが個性溢れる良いキャラであり、キャラ同士の掛け合いが非常に良い味を出しています。
性や職業、趣味などあらゆる要素を理由に人は人を攻撃しますが、本作のメインキャラクターたちの多くは、他者から迫害された経験、その悲しみと辛みを抱いています。どんな言葉を掛けられたら痛いか知っている。だから逆に、そんなときにどんな言葉を掛けられたら嬉しいかも知っているのが本作の主人公。その優しさによって、多くの人の心を開かせる様は読んでいる方の心もぽかぽかさせます。
本当は自分も同じようなことで人から傷つけられた経験を持つのに、自分も同じようなことを人にしてしまっていることに自覚的になる瞬間なども非常に上手く描かれており、色々な人に刺さるであろう内容となっています。
しかしながら、基調としてはコメディ。笑って楽しみながらも、時折心に沁みる話が出てくるバランスが非常に良いです。
たまに古風なネタや演出も出てきながら設定的には令和感溢れるハートフルコメディとして、広くお薦めできる作品です。『ロマンティック・キラー』に続いて、こちらもぜひアニメ化などして欲しいですね。