人の生き様を教えてくれる短編集にコメントする
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HUMANITAS ヒューマニタス

人や国や時代によって違う生死や闘いの意味

HUMANITAS ヒューマニタス 山本亜季
名無し

日本人なら何度かは 「武士道とは死ぬこととみつけたり」 という言葉を聴いたことはあるだろう。 武士道の心得を記述した書「葉隠」の一節だ。 武士とは何か、生きるとは死ぬとは何か。 死を覚悟して生きるのが武士道。 生きるために闘うがそれだけではない。 もしも今の時代の日本人に「葉隠」を漫画化して 読ませたらどう感じるだろうか? (実際に、そういう漫画はあるみたいだが) 日本人の魂を見出す人も居れば、 単なる精神論の一つとみなしたり、 ただの武家社会の建前論と評する人もいるだろう。 どちらかというと現代日本ではありえない、 ある種の異文化・異世界の話と感じる人が多いと思う。 「HUMANITASU」は 世界各地で似て異なるように存在した 葉隠的な文化を描いていると思う。 人類は過去から現代まで連綿と、 地球上の世界各地で生き抜いてきた。 そして生き抜くために戦ってきた。 それぞれ独特なコミュニティを作り、 独特な文化・風習を産み育て、 それらを作るため守るために闘い、 ときに己の意思に従い、 ときに意思に反しながらも闘い、 自身や他者の生殺与奪すらも行ってきた。 それぞれの独自な文化や価値感のもとに。 「HUMANITASU」ではそれぞれ3つの短編で、 アメリカやソ連や北極圏など地球上の各所での 色々な時代での人や国家体制や大自然を相手にしての 生きるための闘いを描き、意味を問うている。 もしかしたらそれらは外国人が日本の時代劇を見て 「ワオ!ホワッツ、ハラキーリ!」 と驚いているような種類なだけの話なのかもしれない。 結局は今ではなくなった時代の話に過ぎないのかもしれないし、 もしかしたら誤解や虚構も混じっているかもしれない。 だが自分は読んで胸を撃たれたし、 日本にある「葉隠」のような文化や風習、 生きるための戦いを、人類は それぞれの異文化の中でそれぞれの形で 行っていたのだろうな、と思わせてくれた。 その闘いという行為の意味や価値については、 読む人それぞれに違う思いを感じるだろうけれど。

COBRA THE SPACE PIRATE

夢と呼ぶにはあまりに厳しく余りに哀しい影に向かってのオデッセイ

COBRA THE SPACE PIRATE
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ)
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ)

著者のライフワークなので一言で括れない幅がある作品で、私は 1.手塚治虫的なタッチが残り奇想展開なアイディアの楽しい「少年ジャンプ初期」(「コブラ復活」~「ラグボール」) 2.線がややソリッドになりシニカルな描写の増えた「少年ジャンプ中期」(「二人の軍曹」~「黄金の扉」) 3.ヒロイックな描写の光る「少年ジャンプ後期」(「神の瞳」~「リターンコブラ」) 4.「聖なる騎士伝説」 5.CGフルカラー期 で分けている。どの期間も見るべき所のある漫画であるが、4.の「聖なる騎士伝説」について書きたい。  「聖なる騎士伝説」は青年誌に掲載された長編で他の話より暗く、いつもよりシリアスでアダルトな展開や描写が多い異色のエピソード(何てったって、レディーさえ出てこない) だ。ここでは新世界の興奮は悪鬼に蹂躙され、コブラのいつもの剽軽な態度やヒロイックな勇気は鳴りを潜め、笑みは嘗て見られなかった暗い影を忍ばせている。絵の線もどの辺よりも細く、陰影もまた濃く、混沌とした悪意蔓延る世界をこれでもかと描き出す。筋も宝や冒険ではなく悪鬼の暗殺と言う剣呑な代物で、終盤に明かされる種も周到に張られた伏線もあり陰惨な世界観を補強する。  今までのスペースオペラと比べると余りにもノワールであり、退廃的でもあるが、それだけに強烈であり、私はこのエピソードが一番好きだ。けだし、このノワールが単なる露悪に終わらず、コブラが常に世を儚むようなニヒルな皮肉を呟きながら銃をぶっ放しながらもどこか善や正義を諦めきれていないからではないかと思う。有名なコマでもある様にコブラは終盤、実際には何の利益を齎さなかった教会を批判し「神か……最初に罪を考え出したつまらん男さ」と呟いてみせたが、これはやはり神や正義についてどこか夢を持っている証拠に他ならないと思う。さもなくばこんなセリフは決して言わないだろう。  コブラの海賊としてのアウトローな性格や享楽主義は上記の理想主義的な思想やストイックさに支えられている。寺沢武一は彼の初期作品を「思弁的」と批評していた記憶があるが、そういった性格が彼の作品から消えた事は一度も無かったことは確かだろう、そしてそれこそがこの漫画をいつまでも輝かせているのだろう。海賊と言う自由とギルドに対抗する高潔な戦士の顔を持つあの男のとこしえの旅に祝福を。

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