WORST外伝 グリコ 髙橋ヒロシ 鈴木リュータ 高橋ヒロシ
ああ、私の「好き」がそこにある #1巻応援
大海に響くコール 遊維
『ゲッサン』の読切でフレッシュな魅力を披露してくれていた遊維さんの、連載作品です。
テーマはずばり「シャチ」。
推し力士がいたり、推しVtuberがいたりと心から好きなものがはっきりしている友人たちに比べて、流されるまま・合わせるだけで特に自分だけの何かを持っていなかった女の子・かわず(通称ぴょこ)。そんなかわずが、成績優秀でモデルのスカウトも受ける美貌も併せ持つ神崎さんとお近づきになることで、神崎さんがこよなく愛するシャチの魅力に気付かされ、初めて心からの好きを得ていく物語です。
兎にも角にも、「好き」で駆動する物語って良いですよね。「好き」は何にも増して強くて素晴らしい感情です。本作は筆者がシャチが大好き、かつ新担当編集もシャチが大好きというところに立脚しているようで、作品全体からシャチへの深い愛が迸っているのを感じられます。
『七つの海のティコ』を観て育った身としてはシャチに対して親近感もあり。神崎さんやかわずほどの深愛ではないですが、シャチ、いいよね……という気持ちで読みました。
そして、マンガ自体の良さ。第1話のサブタイトルがバチっとハマる瞬間の気持ち良さであったり、第4話のタイトルを回収するシーンだったり、遊維さんの絵の魅力と演出が掛け合わさって胸踊るような描写がガンガン出てきます。
羅臼ではないですが、北海道の知床沖に船で出たときの雄大な自然に感動した瞬間を読んでいて思い出させてくれました。本当に地球や生命の偉大さを感じさせてくれますし、自然と涙も出てくるんですよね。
「本当に好きなものを見つける」というかわず物語として読んでも非常に良いですし、一方で神崎さんの抱える難しい感情もまたひとつ味わいを加えてくれます。神崎さんと同じような絶望を抱えたことがある人には刺さることでしょう。なお、私は言うまでもなく自らを強く貫きながら好きなシャチの前では破顔する聡明な黒髪ロングストレートの神崎さんがとても好みです。
読んでいて、心が洗われていくような素敵なお話です。シャチに興味がある人はもちろん、そうでない方にもお薦めです。
主人公の好きな絵師の絵をツイッターに無断転載しているアカウントを発見したが、そのアカウントぼ写真に写り込んだものが自分と同じクラスの葉山だと分かるものだった。なぜそんなことをしているのか、どういう人物なのか観察しながら追っていくと少しずつ彼女のことが分かってきて…。
一軍のような集団の中で微妙に取り残されている子が葉山さんで、彼女らから「あの子ってちょっとズレてるよね」、といった悪口を盗み聞いてしまう主人公と葉山さん。
主人公もそもそも人とあまりうまくいかないタイプで漫画部でもいつも一人。
そんなある日、葉山が主人公がいる漫画部に忍び込んで主人公の描いた漫画を読んで続きはないの?というところから二人の話は始まる。
葉山が小さいころは絵を描くのが好きだったが、親や中学のやつらに下手だと言われた話をすると主人公が
「ふーん つまんないこと言うやつもいんだね。」「これから上手くなんのにね!」
とあっさり言ってのける。
これがとてもよかった。
いい見開きだった。
誰しも最初は素人だし、なにをやるにも下手なのは当たり前だ。
人の芽を摘むようなものいいは周囲にはやめてほしいが、何も持たない人はおいていかれるような気がしたり自分より秀でたりしているものを見るとケチをつけたくなるものだ。
いい友情が始まったなと思える読み切りが好きなのでとても好きだった。
他人に何を言われようが自分の未来を創るのは自分だ。
それを忘れないでおきたい。