火神の子として生きる高校生、るな。かつて火神の子であり、鍼灸院を経営する祖母、「おばば」と一緒に暮らしている。鍼灸院では火神の子であるるなの血が入ったモグサを使い、「自己実現」を売っている。いわゆる信者ビジネスである。るなは「宗教の人」としてクラスでいじめられるが、唯一の理解者であるスバルとは良い友人関係を築いている。ある日、るながいじめられているところをクラスの人気者、ケンショーが助けてくれる。その出来事をきっかけにふたりは距離を縮め、るなはケンショーに恋をしてしまう。だが、神の子であるるなに恋は許されない。るなは、ケンショーを「ビジネス」に取り込むことを決意する。『アマゾネス・キス』『魔術師A』の奇才、意志強ナツ子、待望の最新作! 何も考えず、とにかく読んでみてください。読めば必ず、気付かぬうちにるなの魅力に取り込まれていることでしょう。
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るなしい
「るなしい」は,意志強ナツ子先生の新刊です。今のところ,既刊は1巻のみ。
掲載誌はなんと小説現代。
意志強先生の過去作は,「魔術師A」と,あとは「りゅうのすけくん」だけ読んだことがありました。
マイナーマンガ紹介ブログ・なめくじ長屋奇考録の管理人&特殊出版レーベル・おおかみ書房編集長。得意ジャンルはエロ劇画とコンビニコミックス。好きなマンガは将太の寿司。
どちらも面白いのですが,エロ比重が大きすぎて,正直自分の中で持て余していたところ,
本作は,(少なくとも1巻の時点では)直接的な描写はなく,比較的読みやすい作品になっています。
主人公の「るな」は,学校内でいじめをうけている,もっさりした感じのメガネ女子高生。
彼女は,広報委員会に所属しており,その中では「オタサーの姫」的な扱いを受けています。
一方で,彼女は,学校内で,処女の血がしみ込んだモグサを売って,
希望者にお灸をする(しかも有料)という,やや怪しげな活動にも手を出している人物。
そんな彼女が,ふとしたことから背の高いイケメンと仲良くなって…というところからストーリーが始まります。
…こう書くと,なんだかラブストーリーが始まりそうですが,
意志強先生のお話ですので,そうではなく,
中心になっていくのは「やや怪しげな活動」の部分です。
るなの「おばば」は,
るなを「神の子」とするリアルな「信者ビジネス」を営んでおり,
その考え方は,ほぼカルトです。
悩みがある者を焚き付け,家族と切り離し,
奇跡を見せて,取り込んでいく…。
もちろんガッチリお金をとる。
るな自身も,そのことを充分に把握したうえで,
これに加担し,背の高いイケメン(ケンショー君)を取り込んでいく…。
破滅が確定している結末に向けて,
不穏さばかりが増していく物語。
オバケが出てくるわけでもないのにホラー感は強く,
ゾクゾクするような読み味であり,きっと名作になるであろうと予感させてくれる作品です。