タタラシドー

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名無し

お笑いをテーマとした青春劇として素晴らしい読切作品でした。

獅道爽真と須藤多々良は深夜ラジオ好きな男子高校生。
獅道が女子に告白し無様に振られ、周囲から雑にいじられ、二人で文化祭のお笑いコンテストに出て見返すために奮起する!

職業としてお笑い芸人を十年ほどやっているもので、「お笑い」が題材として扱われている作品はできるだけチェックしています。
その中でも、必然性の無いお笑い要素という出方だったり、リアリティが無さすぎたり、ファッションとして消費されてる印象を受けたり、不勉強さを目の当たりにしたりと読んだ時の感想はしっくりこない…というものでした。

この読切は、まず画力の高さによって描ける表現の幅が広く、細かな表情や動きなどからもキャラの魅力が存分に伝わってきます。
芸人にはネタを考える脳みそや高いコミュニケーション能力など必要なものが多いんですが、特にそのキャラクターの人間的な魅力が必須です。
そして、ストーリー的に深夜ラジオ好きなだけだった二人が「お笑いコンテストに出てネタをやる」ことに無理がない展開になっています。それどころか、それぞれにコンテストに出ることでしか解消できない強い思いがそこにはあります。
この二人のバランスも素晴らしいです。
獅道爽真は太ってて若干小汚い無精ひげが生えてて精神的にタフで人間臭くいじられ上手でコミカルな高校生で、深夜ラジオにハガキを投稿してもなかなか採用されず。
一方、須藤多々良はラジオでよく読まれるハガキ職人。
面白いネタを書く多々良と人間的魅力に溢れる獅道。
これはいいコンビですよ。
きっと実在する「空気階段」がこの二人のモデルと思われるのでキャラを立たせる意味では少しずるい気もしますが目の付け所が素晴らしいです。

何より良いのが、こういうお笑いがテーマの漫画では、キャラの見せづらさなどから会話劇として面白く読める漫才を使いがちなのですが、コントをやっていること。
ここにもきちんとコントでやる意味があって、冒頭で告白して振られた獅道を正しく笑いに変えて昇華する意味でもあり、演技的に一度体験したシチュエーションでもあるからやりやすい。そして漫画的にも、獅道が本人役をやることで見づらくならない形になってるんですよね。
構成が上手い。

オチも、最終的には上手くはいかないっていうのが最高です。
芸人として考えたとき、最高の幸せ、大成功よりも失敗の方が美味しいことも多いわけで、成功だけど残念な形がとてもよかったです。
この漫画化二人のタッグ、サイコウサイコウサコウ!でした!
お笑いへの愛を感じました。連載で読みたいです。

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