フルカラー縦スク時代の2020年、読んでおいてほしいフルカラーMANGAにコメントする
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たか
たか
1年以上前
読み終わって「はあーーー……」と深い溜め息が出てしまうくらいも〜面白い。 ほぼ15年ぶりに読んだのですが、バスケ部だった中学生のときと同じように新鮮にワクワクしてしまいました。 当時はちょうど「スラムダンクあれから10日後」というイベントがやっていた頃で、それでイベントについて検索したときに井上雄彦のHPを見つけ『BUZZER BEATER』を知ったという流れだった思います。 (ちなみに井上雄彦先生は電子書籍嫌いで作品が電子化されていないことで有名だそうですが、私は『BUZZRE BEATER』を自サイトで掲載していた印象が強かったので「えっ、そうなの」とかなり驚きました) そもそも突然読もうと思ったきっかけは、先月「永里優季、“歴史的”な男子チームへのレンタル移籍が決定!」というニュースを見たことです。 https://www.soccer-king.jp/news/japan/japan_other/20200910/1117148.html このニュースを見て真っ先に、「いやこれアピルじゃん…!!」と思ったんですよね。それでどんな話だったか思い出すために15年ぶりに読んだんですが……。もう本当に無駄なく美しく完成されていて圧倒されました。 ### 手描きフルカラーがヤバい いや、手描きフルカラーですよ? 吹き出しの中のセリフすら全て手書き。普通にヤバい。 コピックで塗られる絵が本当に眼福でパラダイス。絶妙な影を作るために2色を重ねて塗ったり、その回のテーマカラーを決め色数を制限して統一感を出したり、ショックを受けているシーンでは人物が真っ青に塗られたり……。 井上雄彦というものすごい実力を持った漫画家が「漫画をカラーで描く」ことで、漫画という表現媒体の持っているポテンシャルがギュンギュン引き出されているのを感じられます。 グラフィック・ノベル、アメコミ、バンド・デシネだってフルカラーで横書きですが、「漫画」を描く一流の技術を持った人がフルカラーで描くとこれほど漫画って進化するのかと。もう、普通にすごすぎてすごい。 ちゃんと「漫画み」を感じるものの1つに、「扉絵」があります。 6ページから構成される各話の冒頭の1ページ目か2メージ目が必ず「扉」となっており、作品名・作者名・話数がドーーーンと挿入されるんです。 いやこれがもう、本当めっっっちゃかっこよくて。 タイトルロゴがドーンって、アニメでも漫画でも万人に愛される演出でみんな大好物だと思うんですけど、それを毎回やってくれるんですよ。 手を変え品を変え、毎回違う手描きタイトルロゴを見せてくれて……こんな贅沢あっていいのかという感じ。 (ただ後半はこの手描きロゴはなくなり、デジタルなデザインのロゴで固定になります)    ◆ ◆ ◆ ちなみに当時、HPではページが上下に6つ並べられて掲載されていました。上から下に、スクロールして読む。 そう考えると『BUZZRE BEATER』ってようは2020年の今どこでも読める「フルカラー縦スクロールウェブコミック」なんですよね。 井上先生の公式サイトによると、『BUZZRE BEATER』はオンラインコミック(スポーツアイ-ESPNのHP)として1996年5月より連載開始したそう。 いやもう、途方もなくすごい……。時代の先を行き過ぎ。 「フルカラー」で「縦スク」で「ウェブ連載」で、現在、星の数ほどある無料アプリコミックと共通する部分はたくさんあるのですが、先に書いたように「漫画を描く一流の技術を持った人がフルカラーで描く凄まじさ」は唯一無二なので、マジで1回味わってほしいです。ヤバいので。   ### 正方形のページに広がる無限のコマ割りがヤバい 最初から英語版と中国語版を出すことを想定していたのか、この作品のセリフは横書きで描かれており、正方形のコマ内は左上から右下に読みます。 正方形のページをコマで割るって……割れるか…??? って感じですけど、もうバリバリ割ってるんですよねー。 途中からページが正方形ってこと忘れるぐらい、それはもう普通の漫画のように迫力があってクールなコマ割りの連続。 茶室は宇宙なんていいますけど『BUZZRE BEATER』読んでそれが理解できました。 こんな狭くて制限されたスペースでも無限の可能性を見出せるんですね。   ### 多様性があまりにも自然に描かれ、2020年の今読んでも引っかかる描写が1つもないのがやばい 舞台は西暦2×××年。金も名誉も手にした老爺・ヨシムネが、宇宙リーグに地球チームが参加するという夢を叶えるため、地球最強のプレイヤー12人を集めることを計画。 そこへストリートチルドレンの主人公・ヒデヨシが一攫千金を求めてセレクションに参加し物語が始まります。 地球全体から選ばれ作られた最強チームだけあり、選ばれた12人の人種はみごとにバラバラ。日本、ロシアなどルーツが推測できるメンバーもいる一方で、見た目からは国籍不明の人物も多い。 サポート陣も多様で、白人女性、白人男性、黒人男性、そして医療スタッフの中には女性的な話し方をする男性がいます。 そして、最強のプレイヤーを集めるため必然的に大人ばかりになってしまったところへ、主人公・ヒデヨシとイワン、そしてヨシムネの孫娘・チャチェが待ったをかけメンバーに加わる。 こうして地球最強チームは、大富豪とストリートチルドレンという貧富の差を含むあらゆる人種・年齢・性別が結集した、まさに「地球代表」と呼ぶにふさわしい編成になったわけです。 大切なのは、意図的に多様なメンバーを集めたわけでなく、「優秀なバスケプレイヤーが同じ目標のために集結した結果、多様なバックグラウンドを持つ人間が集まっただけ」だということ。 そのため物語の中でその多様性を誇示することは一切なく、ただありのままにいろんな人達が描かれていて、それが本当に心地いい……! それぞれが地球最強チームに加わるだけの実力がきちんとある。だから子供や女性という、物語において「苦労する弱者」という役割を任されがちな属性を持っていても、周囲に貶められる展開にはならない。 たとえば、孫娘・チャチェがマルにシュート勝負を挑んだとき、マルは子供に舐められ内心カッとするけれど礼を欠くことは決してせず、それどころか「世界一のシューターに挑戦する君に敬意を表して」と尊重する。 物語の鍵を握る最強のポイントガード・DTには、女性的な喋り方の男性が担当の医療スタッフとして付いていますが、彼のことをからかったり馬鹿にしたりする人は出てこない。 こんなふうに、物語全体がフラットな人間関係で出来ている。 「どんなバックグラウンドを持つ相手であろうと、相手に対して敬意を持って対等に接する」というフラットな姿勢が物語の根幹にあるからこそ、四半世紀前に描かれた作品でありながら鼻に付く箇所がまったくないのだと思います。 (あとポケベルや携帯電話のように、後の世の読者が古いと感じるガジェットが登場しないというところも重要かもしれない)   ### 中学生のときオッサンだと思ってた登場人物が年下になっててヤバい 漫画はNGという方針の家庭だったのであまり幼少期に漫画を読んでいないため、これが初めての「あのキャラが年下に…!?」体験でした。マルが出てきた瞬間にマンガを放り出してベッドに崩れ落ちました。 マル27なのかよ〜〜〜〜!!! 妻子いたよね!? えーっ! 27〜? 27かぁ……。そしてモーも27なのかよ……! 彼らの年相応の大人らしい落ち着きぶりと、自分の人間的な成長のなさを直視してしまい見事に打ちのめされました。シンプルにつらい。 でも結果として「自分もこんなふうにちゃんとした大人になりたい」と、気持ちを新たにできたのでよかったかなと思います。   ### 当時気づかなかった細やかな伏線・小ネタがヤバい **【今回読んで気付いたこと】** **・DTとヒデヨシだけが合宿初日からご飯をもりもり食べられた** **・地球チームのユニフォームの柄はただの模様じゃなくてひらがなの「ちきう」を図案化したもの** **・「ディフェンスを飛び越えるジャンプ」はマジで存在する** 2000年シドニー・オリンピックのヴィンス・カーターの人間越えダンク https://twitter.com/olympicchannel/status/956945965486870536?s=20 https://the-ans.jp/news/16338/ **・ラズーリは正体を明かすまでずっとユニフォームやビブスの下にTシャツを着ている**    ◆ ◆ ◆ 特にラズーリのシャツは、気付いたときゾワッとしたほど感動しました。 バスケの、昔ながらの肩ひもが細いランニングシャツ型のユニフォームは、脇ベロベロなので着ると胸が見えちゃうんですよね。 (なのでこのランニングタイプの場合、女子用ユニは男子に比べると襟ぐりが浅くて脇が詰まったデザインになっている) 現在は男女ともに、胸も脇も空いてないノースリーブのTシャツ型のデザインが主流となっていますが、90年代の作品なので地球チームのユニフォームはこのランニングシャツ型。 そのためチャチェは練習中にはビブスの下にシャツを着ているものの、正式な試合では着ていません(なので黒いインナーが見えてしまっています)。 しかし、試合中でも下にシャツを着ているキャラが1人だけいるんですよね。それがラズーリ。 最初から女子メンバーとして参加しているチャチェとは違い、ずっと正体を隠していた彼女はインナーを見られるわけにはいかず、ずっと下にシャツを着ていたんだな……とやっと気づきました。    ### ストーリーについて 『SLAM DUNK』といい『BUZZER BEATER』といい。一番いい所で寸止めして、これからも登場人物たちの人生は続いていくのだと、未来の様子を少しだけチラ見せする終わり方が本当に良すぎる。 うまく言えないのですが……未完に感じられるところであえてストーリーを終わらせるのって無茶苦茶切なくて美しい。 ……もしやこういう味わいを「未完の完」というのでしょうか。 茶室の次は徒然草に繋がってしまった。    ◆ ◆ ◆ ストリートチルドレンのヒデヨシは、地球チームに入ったことで、初めて衣食住が足りた状態でバスケが出来るようになります。 自ら勝ち取ったチャンスとはいえ、このように多大な恩を受けている状態に置かれ、初めヒデヨシは医者やコーチといった周囲の大人たちに従順に従っていた。 それはおそらく、ヒデヨシ自身が路上で育ったこと、学がないことに起因している。大人はストリートチルドレンのことなんて金と力でどうとでもできる。よくわからないけれど、こういう偉そうな、ちゃんとした大人の言うことは素直に言うことを聞いた方がいい――経験からそう考えたのではないか。 しかし驚くべきことに、自分をプレイで圧倒してみせたDTは一切医療スタッフの言うことを聞いていなかった……! これはヒデヨシにとって、価値観を変えるほどのものすごい衝撃だったと思う。 食うのにも寝るのにも困っていたストリートチルドレン時代、大人に反抗したところで、その先に待つのは死しかなかったはず。 元気いっぱい生意気で勝ち気なヒデヨシだけど、大人には従順にしたほうが良いと、無意識に刷り込まれていたのではないだろうか。 「大人に反抗して良いんだ」という気づきを得たヒデヨシは、DTの真似をして大人の言うことを聞かない反抗期に入る。 大人になった今、このヒデヨシが普通の子供のように健全に成長している姿にもうジーンときてしまいました。 ハリー・ポッターもそうですが、虐げられて育った子供が心から安らげる場所を手にしたことで、普通の子供らしく反抗できるようになるって本当にいいですよね……泣いてしまう。    ◆ ◆ ◆ ヒデヨシはチームを外されることを恐れ酷い頭痛を隠し続けていたわけですが、隠しきれない状況に追い込まれたときに頼ったのはDTなんですよね。 屋外でのシュートの癖とか、頭痛に苦しんでることとか。DTは最初っからちゃんとヒデヨシを見てたし、ヒデヨシもまたそのことに気付いてたという。 ふざけたところもあるけど頼れる大人のDTが導き、まだまだ子供のヒデヨシがそれを慕うという、兄弟のような関係。 そしてこの2人は物語の最後で、同じ道を別のスタンスで行くことになる。 家族との唯一の繋がりであるアイデンティティ守りゴル星人として宇宙リーグに挑戦することを選んだヒデヨシと、地球人たちに「地球人でも宇宙リーグに行けるという」という“夢”を見せるため地球人として臨む“Dream Time”。 ヒデヨシという少年が、仲間と尊敬できる存在と出会い、変わり、成長し、そして別れてまた新しい一歩踏み出す。    ◆ ◆ ◆ もうめっちゃ少年漫画だ……めちゃめちゃ少年漫画。 1996年にこの作品が描かれてから24年。 その間にJBLスーパーリーグができ、bjリーグと分裂し、JOCから資格停止処分を受け、2016年には悲願のBリーグという統一プロリーグが誕生。そしてついに2019年には男子バスケが44年ぶりとなるオリンピック出場を決め、八村塁選手がNBAドラフト一巡指名を受ける。 漫画も、スマホでタダで読むのが当たり前となった。 デジタル作画の普及もあって、漫画よりもスマホに適した「フルカラー縦スクロールコミック(=ウェブトゥーン)」という新しい形態のコミックが親しまれつつある。 そんな2020年だからこそ、このちょっとすごい「フルカラー縦スクロール“マンガ”」を読んでみてほしいなと思います。こんな感じでヤバいの連続なので。

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たか
たか
1年以上前
読み終わって「はあーーー……」と深い溜め息が出てしまうくらいも〜面白い。 ほぼ15年ぶりに読んだのですが、バスケ部だった中学生のときと同じように新鮮にワクワクしてしまいました。 当時はちょうど「スラムダンクあれから10日後」というイベントがやっていた頃で、それでイベントについて検索したときに井上雄彦のHPを見つけ『BUZZER BEATER』を知ったという流れだった思います。 (ちなみに井上雄彦先生は電子書籍嫌いで作品が電子化されていないことで有名だそうですが、私は『BUZZRE BEATER』を自サイトで掲載していた印象が強かったので「えっ、そうなの」とかなり驚きました) そもそも突然読もうと思ったきっかけは、先月「永里優季、“歴史的”な男子チームへのレンタル移籍が決定!」というニュースを見たことです。 https://www.soccer-king.jp/news/japan/japan_other/20200910/1117148.html このニュースを見て真っ先に、「いやこれアピルじゃん…!!」と思ったんですよね。それでどんな話だったか思い出すために15年ぶりに読んだんですが……。もう本当に無駄なく美しく完成されていて圧倒されました。 ### 手描きフルカラーがヤバい いや、手描きフルカラーですよ? 吹き出しの中のセリフすら全て手書き。普通にヤバい。 コピックで塗られる絵が本当に眼福でパラダイス。絶妙な影を作るために2色を重ねて塗ったり、その回のテーマカラーを決め色数を制限して統一感を出したり、ショックを受けているシーンでは人物が真っ青に塗られたり……。 井上雄彦というものすごい実力を持った漫画家が「漫画をカラーで描く」ことで、漫画という表現媒体の持っているポテンシャルがギュンギュン引き出されているのを感じられます。 グラフィック・ノベル、アメコミ、バンド・デシネだってフルカラーで横書きですが、「漫画」を描く一流の技術を持った人がフルカラーで描くとこれほど漫画って進化するのかと。もう、普通にすごすぎてすごい。 ちゃんと「漫画み」を感じるものの1つに、「扉絵」があります。 6ページから構成される各話の冒頭の1ページ目か2メージ目が必ず「扉」となっており、作品名・作者名・話数がドーーーンと挿入されるんです。 いやこれがもう、本当めっっっちゃかっこよくて。 タイトルロゴがドーンって、アニメでも漫画でも万人に愛される演出でみんな大好物だと思うんですけど、それを毎回やってくれるんですよ。 手を変え品を変え、毎回違う手描きタイトルロゴを見せてくれて……こんな贅沢あっていいのかという感じ。 (ただ後半はこの手描きロゴはなくなり、デジタルなデザインのロゴで固定になります)    ◆ ◆ ◆ ちなみに当時、HPではページが上下に6つ並べられて掲載されていました。上から下に、スクロールして読む。 そう考えると『BUZZRE BEATER』ってようは2020年の今どこでも読める「フルカラー縦スクロールウェブコミック」なんですよね。 井上先生の公式サイトによると、『BUZZRE BEATER』はオンラインコミック(スポーツアイ-ESPNのHP)として1996年5月より連載開始したそう。 いやもう、途方もなくすごい……。時代の先を行き過ぎ。 「フルカラー」で「縦スク」で「ウェブ連載」で、現在、星の数ほどある無料アプリコミックと共通する部分はたくさんあるのですが、先に書いたように「漫画を描く一流の技術を持った人がフルカラーで描く凄まじさ」は唯一無二なので、マジで1回味わってほしいです。ヤバいので。   ### 正方形のページに広がる無限のコマ割りがヤバい 最初から英語版と中国語版を出すことを想定していたのか、この作品のセリフは横書きで描かれており、正方形のコマ内は左上から右下に読みます。 正方形のページをコマで割るって……割れるか…??? って感じですけど、もうバリバリ割ってるんですよねー。 途中からページが正方形ってこと忘れるぐらい、それはもう普通の漫画のように迫力があってクールなコマ割りの連続。 茶室は宇宙なんていいますけど『BUZZRE BEATER』読んでそれが理解できました。 こんな狭くて制限されたスペースでも無限の可能性を見出せるんですね。   ### 多様性があまりにも自然に描かれ、2020年の今読んでも引っかかる描写が1つもないのがやばい 舞台は西暦2×××年。金も名誉も手にした老爺・ヨシムネが、宇宙リーグに地球チームが参加するという夢を叶えるため、地球最強のプレイヤー12人を集めることを計画。 そこへストリートチルドレンの主人公・ヒデヨシが一攫千金を求めてセレクションに参加し物語が始まります。 地球全体から選ばれ作られた最強チームだけあり、選ばれた12人の人種はみごとにバラバラ。日本、ロシアなどルーツが推測できるメンバーもいる一方で、見た目からは国籍不明の人物も多い。 サポート陣も多様で、白人女性、白人男性、黒人男性、そして医療スタッフの中には女性的な話し方をする男性がいます。 そして、最強のプレイヤーを集めるため必然的に大人ばかりになってしまったところへ、主人公・ヒデヨシとイワン、そしてヨシムネの孫娘・チャチェが待ったをかけメンバーに加わる。 こうして地球最強チームは、大富豪とストリートチルドレンという貧富の差を含むあらゆる人種・年齢・性別が結集した、まさに「地球代表」と呼ぶにふさわしい編成になったわけです。 大切なのは、意図的に多様なメンバーを集めたわけでなく、「優秀なバスケプレイヤーが同じ目標のために集結した結果、多様なバックグラウンドを持つ人間が集まっただけ」だということ。 そのため物語の中でその多様性を誇示することは一切なく、ただありのままにいろんな人達が描かれていて、それが本当に心地いい……! それぞれが地球最強チームに加わるだけの実力がきちんとある。だから子供や女性という、物語において「苦労する弱者」という役割を任されがちな属性を持っていても、周囲に貶められる展開にはならない。 たとえば、孫娘・チャチェがマルにシュート勝負を挑んだとき、マルは子供に舐められ内心カッとするけれど礼を欠くことは決してせず、それどころか「世界一のシューターに挑戦する君に敬意を表して」と尊重する。 物語の鍵を握る最強のポイントガード・DTには、女性的な喋り方の男性が担当の医療スタッフとして付いていますが、彼のことをからかったり馬鹿にしたりする人は出てこない。 こんなふうに、物語全体がフラットな人間関係で出来ている。 「どんなバックグラウンドを持つ相手であろうと、相手に対して敬意を持って対等に接する」というフラットな姿勢が物語の根幹にあるからこそ、四半世紀前に描かれた作品でありながら鼻に付く箇所がまったくないのだと思います。 (あとポケベルや携帯電話のように、後の世の読者が古いと感じるガジェットが登場しないというところも重要かもしれない)   ### 中学生のときオッサンだと思ってた登場人物が年下になっててヤバい 漫画はNGという方針の家庭だったのであまり幼少期に漫画を読んでいないため、これが初めての「あのキャラが年下に…!?」体験でした。マルが出てきた瞬間にマンガを放り出してベッドに崩れ落ちました。 マル27なのかよ〜〜〜〜!!! 妻子いたよね!? えーっ! 27〜? 27かぁ……。そしてモーも27なのかよ……! 彼らの年相応の大人らしい落ち着きぶりと、自分の人間的な成長のなさを直視してしまい見事に打ちのめされました。シンプルにつらい。 でも結果として「自分もこんなふうにちゃんとした大人になりたい」と、気持ちを新たにできたのでよかったかなと思います。   ### 当時気づかなかった細やかな伏線・小ネタがヤバい **【今回読んで気付いたこと】** **・DTとヒデヨシだけが合宿初日からご飯をもりもり食べられた** **・地球チームのユニフォームの柄はただの模様じゃなくてひらがなの「ちきう」を図案化したもの** **・「ディフェンスを飛び越えるジャンプ」はマジで存在する** 2000年シドニー・オリンピックのヴィンス・カーターの人間越えダンク https://twitter.com/olympicchannel/status/956945965486870536?s=20 https://the-ans.jp/news/16338/ **・ラズーリは正体を明かすまでずっとユニフォームやビブスの下にTシャツを着ている**    ◆ ◆ ◆ 特にラズーリのシャツは、気付いたときゾワッとしたほど感動しました。 バスケの、昔ながらの肩ひもが細いランニングシャツ型のユニフォームは、脇ベロベロなので着ると胸が見えちゃうんですよね。 (なのでこのランニングタイプの場合、女子用ユニは男子に比べると襟ぐりが浅くて脇が詰まったデザインになっている) 現在は男女ともに、胸も脇も空いてないノースリーブのTシャツ型のデザインが主流となっていますが、90年代の作品なので地球チームのユニフォームはこのランニングシャツ型。 そのためチャチェは練習中にはビブスの下にシャツを着ているものの、正式な試合では着ていません(なので黒いインナーが見えてしまっています)。 しかし、試合中でも下にシャツを着ているキャラが1人だけいるんですよね。それがラズーリ。 最初から女子メンバーとして参加しているチャチェとは違い、ずっと正体を隠していた彼女はインナーを見られるわけにはいかず、ずっと下にシャツを着ていたんだな……とやっと気づきました。    ### ストーリーについて 『SLAM DUNK』といい『BUZZER BEATER』といい。一番いい所で寸止めして、これからも登場人物たちの人生は続いていくのだと、未来の様子を少しだけチラ見せする終わり方が本当に良すぎる。 うまく言えないのですが……未完に感じられるところであえてストーリーを終わらせるのって無茶苦茶切なくて美しい。 ……もしやこういう味わいを「未完の完」というのでしょうか。 茶室の次は徒然草に繋がってしまった。    ◆ ◆ ◆ ストリートチルドレンのヒデヨシは、地球チームに入ったことで、初めて衣食住が足りた状態でバスケが出来るようになります。 自ら勝ち取ったチャンスとはいえ、このように多大な恩を受けている状態に置かれ、初めヒデヨシは医者やコーチといった周囲の大人たちに従順に従っていた。 それはおそらく、ヒデヨシ自身が路上で育ったこと、学がないことに起因している。大人はストリートチルドレンのことなんて金と力でどうとでもできる。よくわからないけれど、こういう偉そうな、ちゃんとした大人の言うことは素直に言うことを聞いた方がいい――経験からそう考えたのではないか。 しかし驚くべきことに、自分をプレイで圧倒してみせたDTは一切医療スタッフの言うことを聞いていなかった……! これはヒデヨシにとって、価値観を変えるほどのものすごい衝撃だったと思う。 食うのにも寝るのにも困っていたストリートチルドレン時代、大人に反抗したところで、その先に待つのは死しかなかったはず。 元気いっぱい生意気で勝ち気なヒデヨシだけど、大人には従順にしたほうが良いと、無意識に刷り込まれていたのではないだろうか。 「大人に反抗して良いんだ」という気づきを得たヒデヨシは、DTの真似をして大人の言うことを聞かない反抗期に入る。 大人になった今、このヒデヨシが普通の子供のように健全に成長している姿にもうジーンときてしまいました。 ハリー・ポッターもそうですが、虐げられて育った子供が心から安らげる場所を手にしたことで、普通の子供らしく反抗できるようになるって本当にいいですよね……泣いてしまう。    ◆ ◆ ◆ ヒデヨシはチームを外されることを恐れ酷い頭痛を隠し続けていたわけですが、隠しきれない状況に追い込まれたときに頼ったのはDTなんですよね。 屋外でのシュートの癖とか、頭痛に苦しんでることとか。DTは最初っからちゃんとヒデヨシを見てたし、ヒデヨシもまたそのことに気付いてたという。 ふざけたところもあるけど頼れる大人のDTが導き、まだまだ子供のヒデヨシがそれを慕うという、兄弟のような関係。 そしてこの2人は物語の最後で、同じ道を別のスタンスで行くことになる。 家族との唯一の繋がりであるアイデンティティ守りゴル星人として宇宙リーグに挑戦することを選んだヒデヨシと、地球人たちに「地球人でも宇宙リーグに行けるという」という“夢”を見せるため地球人として臨む“Dream Time”。 ヒデヨシという少年が、仲間と尊敬できる存在と出会い、変わり、成長し、そして別れてまた新しい一歩踏み出す。    ◆ ◆ ◆ もうめっちゃ少年漫画だ……めちゃめちゃ少年漫画。 1996年にこの作品が描かれてから24年。 その間にJBLスーパーリーグができ、bjリーグと分裂し、JOCから資格停止処分を受け、2016年には悲願のBリーグという統一プロリーグが誕生。そしてついに2019年には男子バスケが44年ぶりとなるオリンピック出場を決め、八村塁選手がNBAドラフト一巡指名を受ける。 漫画も、スマホでタダで読むのが当たり前となった。 デジタル作画の普及もあって、漫画よりもスマホに適した「フルカラー縦スクロールコミック(=ウェブトゥーン)」という新しい形態のコミックが親しまれつつある。 そんな2020年だからこそ、このちょっとすごい「フルカラー縦スクロール“マンガ”」を読んでみてほしいなと思います。こんな感じでヤバいの連続なので。
幻想世界英雄列伝フェアプレイズ

クルダ流交殺法に勝てても打ち切りには勝てなかった

幻想世界英雄列伝フェアプレイズ
サミアド
サミアド

『SHADOW SKILL 影技』や『聖闘士星矢EPISODE.G』で有名な岡田芽武先生が原作・てんま乱丸先生が作画。コミックボンボンの漫画です。 よく似た漫画『幻想世界英雄烈伝 忍ザード』『幻想世界魔法烈伝 WIZバスター』が打ち切り済みでしたが数年後に不屈の闘志で再々チャレンジ!! いつも通り元気な少年&パートナーが主人公!天魔伏滅四天王!敵幹部に見覚えあるキャラ!見開きデカ文字で必殺技!既視感あるセリフ! …正直 過去作の焼き直しですが、それだけ打ち切りが無念で絶対描きたいテーマだったのだと思います。 打ち切り2作も充分面白く斬新な部分がありました。今作も「ネトゲ世界が本当の異世界で魔王が支配済み。ゲーム素体姿のパートナーと異世界にダイブして戦う。他のゲームプレイヤー達は自覚なく敵に加担している。現実世界からサポート可。異世界関係者が現実にも居る」と2001年当時としては時代先取りのワクワク設定。 代表作・影技の「我が一撃は無敵なり!」をガッツリ登場させるなど 今度こそ何としても最後まで描くぞ!という決意を感じました。 その甲斐あって?ドラマ CDとWEBアニメ(PV)が制作されゲーム化も発表!声優も募集!さぁこれから・・・! 打ち切り。え…?何が起きた…?ボンボンさん…? メディアミックスが頓挫したのか全ての企画が告知無く自然消滅。漫画も番外編で終了。ボンボンの中では人気作だったのに… 伏線が大量に残っていて今もモヤモヤしています。愛蔵版発売してオマケで設定公開して欲しいです。無理かな…。 画力は過去作より上がっていますが後半はCGが強くてちょっと読みにくいです。カラーは綺麗でアニメ向きだったと思います。 キャラも魅力的だったので打ち切りは本当に残念です。画像は人気ダントツ1位の魔法バカ親友キーン君です。

追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。 ~俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?~

「チー付与」ってなあに?

追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。 ~俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?~
toyoneko
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未読者向けに「チー付与」の話をしましょう 知ってますか?「チー付与」。まぁ私も知ったのは最近なのですが… タイトルをみれば分かるとおり、本作は、いわゆる「なろう」系を原作にしています 原作の方は、わりとタイトル通りの内容で、あまり癖はなく、読みやすいです(なお、単行本2巻まで出てますが、未完で、現在も「なろう」連載中) https://ncode.syosetu.com/n7050gs/ 「追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。 ~俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?~」という長いタイトルですが、略して「チー付与」 ところで、「なろう」系のコミカライズには、当たりハズレがあります つまり、技量の高い漫画家さんがコミカライズするか、そうではない漫画家さんがコミカライズするかで、面白さが全然違ってしまうのです たとえば、「絵が上手いか否か」は分かりやすい でも、それだけでなく、同じ文章を原作としていても、それを漫画としてどう落とし込むのか、エピソードの取捨選択、コマ割りや構成を中心とした漫画力の違いなどで、全然違う作品になってしまいます では、本作は? これは、まぁ、「当たり」か「ハズレ」かでというと、おそらく「当たり」です 絵も上手いし、漫画も読みやすい。漫画としての完成度が高い ただ、普通の「当たり」作品は、基本的には原作に忠実にコミカライズします ところが本作は、全然忠実ではないです いや、初期は(比較的)忠実だったのですが、途中から異常な改変が加えられ、結果として、他に類をみない怪作に仕上がっています その結果、一部のマニアにはメチャクチャ好評で、「このマンガがすごい!(2025)」では、オトコ編21位に入りました ストーリーの話をしましょう ただ、これは、基本的にはタイトルのとおりです。「追放」モノですね 剣と魔法のファンタジー異世界が舞台になっていて、「王獣の牙」というギルドに所属する強化付与魔術師(武器とか防具を強化する)が主人公です。名前は「レイン」 彼が、「もうお前はいらない」とギルドから追放されるところから物語が始まります レインは、付与した「強化ポイント」を全部回収し、自分の武器とか防具に付与することで、圧倒的な戦闘力を得ることになり、別のギルド(青の水晶)で活躍を始めます そんな中で、世界の危機に立ち向かったりとか、まぁそういう話 原作と漫画版のストーリーは、いろいろな設定の違いはあるものの、最初の頃は、大筋では一致していました ただ、完全に世界観を壊すような描写がされてから、雲行きが怪しくなってきます 具体的には、燐光竜という強い竜があらわれて、レインらがそいつを倒すのですが、死んだと思った燐光竜が、実はサブマシンガンを隠し持っていて、レインらを射殺しようと画策していたことが分かる、というシーンなのですが…(添付) サブマシンガン? もちろん、剣と魔法のファンタジーにサブマシンガンが存在してよいはずもありません 一応、この時点ではシュールなギャグの一種として処理されたのですが、そのほかにも、平然とパチンコが出てきたりとか、「皇帝の盾」というギルドは「CEO」と呼ばれるギルドマスターがいて、構成員全員が普通にスーツを着ていたりとか、ブラック企業みたいに全員でギルド訓唱和を始めたりとか、どんどん世界観が壊れ始めます まぁこれはもう、そういう作品なんだな、シュールコメディの一種なんだろうと読んでました。この時点では 同時並行で、作品の方向性も変わっていきます 「王獣の牙」には、「グレンダ」という幹部がいて、まぁこいつは死んでしますのですが(ちなみに原作では死なない)、それを契機として、グレンダを慕う一団が王獣の牙を脱退し、反社のような存在になっていきます この集団の代表は、「俺の半分はグレンダでできている」が口癖で、「半分」と名乗っています グレンダを慕う「半分」とその一団は、こう呼ばれるようになりました 「半グレ」 そして、レインの能力を知った「半グレ」は、レインを仲間に取り込もうと画策するようになり、「半グレ」との戦いが始まります ところが、恐ろしいことに、「半グレ」は原作には存在しません(なお、ほかに、「暗殺の母」という人気キャラもいますが、こいつも原作にいない) このあたりで、原作との乖離が決定的になったように思います そして、それなのに、「半グレ」編が圧倒的に面白い 「半グレ」の一団は、かなり戦闘力も高く、「魔法」も使えます すなわち、冒険者は「魔力」を使って戦うのですが、「魔力」は身体強化に使えるほか、それぞれが固有の「魔法」を使って戦います。ただし、どんな「魔法」を持っているかは、切り札なので、みな秘密にしている つまり、「冒険者」同士の戦いは、モンスター相手の戦いとは違って、対人頭脳戦の様相を呈してくるわけです さらにその過程で、魔力と文明の関係が明らかにされたり(先ほど言及したサブマシンガンやパチンコと世界観の関係が(後付けかもしれませんが)説明されます)、レインの付与能力が、「どのような意味で」チートなのかが明らかにされたりとか、世界観や設定がどんどん拡張されていくのです 「半グレ」連中の造形も良くて、こいつらは悪事ばかり働くロクデナシなのですが、友情はすごく大事にしていて、それがどこか魅力的でもあります 作品が進んでいくにつれ、こいつらの性格も見えてきて、どんな魔法を使うのかも分かってきて、そして、だからこその、半グレ編の「あの終わり方」は本当に衝撃的でした(47話) そして、それまで、コメディ寄りだった作風は、半グレ編のなかで、かなりシリアス寄りに変化していきます(…と思ったら、半グレ編が終わった次の話はヤケクソみたいなコメディだった) あと、テーマ的なお話を 本作は、いわゆる「ざまぁ」ではありません。いや、原作はその要素が強いのですが、コミック版は、おそらく敢えて、その要素を排除している その代わりにテーマとなっているのが、「セカンドライフ」です いろいろな事情で、第二の人生に踏み出さざるを得ないということは、多々あります 主人公のレインはそうですし、そのほかの仲間たちも、さらには「王獣の牙」のギルマスですらギルド崩壊後の、第二の人生を踏み出します 因果応報を前提に据えつつも、どのようにセカンドライフを踏み出すのか、第二の人生をどう生きる(べき)かということが、本作のテーマになっているようです 実は、根本では結構まじめな作品なんですね 一方で気になるのは、原作との関係 いや、普通はここまで改変したら原作者は怒るはず(というか許可しないはず)なんですよね ところが本作では、原作者である六志麻あさ先生は、むしろ積極的に本作を応援していて、更新のたびにツイートしてくれます 内心ではちょっと思うところはあるのかもしれませんが、何にせよ、原作者がこんなに堂々と推してくれるなら、読者としても堂々と応援できるというもの なお、さんざん改変の話をしましたが、実は、地味に原作要素は拾っているんですよね… 保持者(ホルダー)、天の遺産(レリクス)、光竜王とか、「この先の原作展開」につなげる要素が拾われていて、大筋は外さないようにしているところが伺えます あと、この漫画家さん、何者なのか?という話 コミカライズを担当した業務用餅先生は、覆面作家。これ以外にどんな作品を書いているのかとか、出自とか、全然明らかになっていません このへん、メタ的に、これがこの漫画家さんの「セカンドライフ」そのものなのかも、という感じもするところです そうすると、その正体を暴くのはヤボな気もしますが、いろいろ調べている人たちもいるので、気になればそちらから探してみてください たとえば以下のスレからとか https://itest.5ch.net/medaka/test/read.cgi/ymag/1692975216 本作は、イカれた怪作でもありますが、同時に、圧倒的な漫画力を誇る名作です 年末年始、ぜひ読んでみてください!

ぶざーびーたー
BUZZER BEATER
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