名無し

柔道一直線」の作画で知られる永島 眞一先生の短編漫画集です。ここに納められている7編は1962年から1963年にかけて描かれた作品なので、画風やあらすじが少し古臭いのは否めません。でも、今読んでもそこにえも言われぬ新鮮さが感じられるのは、作品の一つ一つがいつまでも変わることのない、人間の本質を見抜いた鋭い感性から描かれているからでしょう。
各作品は物語が淡々と語られるように進行するのみで、読者をハラハラさせる展開も、ドキドキさせるクライマックスも、納得させるオチもありません。ただただ、解釈の方法は読者の手にゆだねられているかのようです。どの作品も楽しく、明るいテーマを題材としているものではありません。犯罪者の複雑な心境や苦労人の話など、どちらかと言えば暗いテーマを取り上げているのですが、読んだ後には何とも言えない温かさや清涼感を覚えます。漫画というよりは、優れた短編小説集なような味わい深い作品集です。

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フーテン

フーテン

昭和30年代の新宿。仕事もなく金もない自らを「フーテン」と称して、その日その日を凌ぐ人たちが日本中から集っていた。漫画が描けない漫画家「ダンさん」こと長暇貧治はそんな連中の顔役で……様々な人間模様を織りまとめて描く、永島慎二の私小説風傑作シリーズ!

首

「ある瞬間の、ある人間を、自然の心でとらまえて描きつづっていく…(略)…そこから生まれる作品群は、一篇の詠嘆詩であるだろう」(あとがきより) 永島慎二の中期傑作劇画短篇集。珍しいセルフカバー作品の「殺人者たち」を収録。

優れた短編小説を読むような、味い深い短編漫画集にコメントする
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