産める方の産婦人科個人医院のお話
「コウノドリ」のように産科でのお仕事をテーマにした漫画。 こちらは個人病院で、産める方の産婦人科で、堕胎も取り扱っているそうで、街のお医者さんならでは、「コウノドリ」とは違った大変さが語られている。 そんな中で見習い看護師として働いていた、高校3年生×華ちゃんは、なかなか肝が座った子だと思う。 産婦人科って、赤ちゃんがぴょこぴょこホギャホギャしていて心あらわれる風景があるのは、健康な赤ちゃんがコットで寝ている新生児室くらいで。 病院へ行ってみると、婦人科も、産める産婦人科も、産めない産婦人科(妊娠後期は転院)も、どこも独特の緊張感が満ちている。 病院だけでなく患者側もピリピリしている。 不調を治したい人、おさえたい人、子供を産みたい人、産みたくない人、全部まとめてかかっているのだから、当然だと思う。 赤ちゃんはかわいいけれど、それだけじゃない。 出産は病気でも怪我でもないけど、死ぬかもしれない事象。 生殖のための臓器が絶妙なバランスで成り立っているものだから、ちょっとしたことで起こる不調。 残念ながら、すべて望まれている生ではないということ。 読んでいて、こんなお仕事を裏ではしていたんだなと思うと同時に、この中で働き続けられる医療従事者ってすごいなと思った。 沖田×華さんは「毎日やらかしています」の印象が強かったのですが、変わりました。
看護助手の視点からみた産婦人科を訪れる人々の色んな事情。ふだん絶対に自分が直接目にすることのない世界を垣間見せてくれます。妊婦さんの幸せな姿だけじゃない事情を抱えた妊婦、中絶後の胎児を“処理”するなどシビアな世界で、読んでいて気が重くなることもしばしば。でも、この作者さんの絵がもつ飄々とした雰囲気がそれを和らげてくれます。作者さんご自身が発達障害の苦労もあって、いろんな人の気持ちに寄り添い、入り込み過ぎず、大げさすぎず、程よい優しさをもって描くことができるのかな、と感じました。