"自分にとっての幸せ"とは何かを見つめ直せてくれる物語
2016年の熊本地震をきっかけに同居することになった40代書店員の灯、30代女医の鹿乃子、20代インテリアショップ店員の仁、そして(元々は鹿乃子の飼い猫であった)ミカヅキ。年齢も性別も境遇もバラバラの3人が、地震という不意の出来事を契機にして共に生活を送る物語。 といっても、3人の中の誰かが付き合ったり、もしくは恋仲に発展しそうになったり、というような展開は出てこない。なんなら灯以外の2人にはどうやらちゃんと恋人がいるという描写がある。 いわゆる"シェアハウス"を舞台にした作品では、同性どうしであれば外での恋愛模様に喧々諤々としたり、もしくは異性間の同居となると同居人どうしの恋愛に発展したりしなかったりと、どうしても"シェアハウス"という空間と恋愛が相反する存在として描かれる傾向が強いように思う。しかし、この作品では3人の中での楽しい共同生活とその外の恋愛というのが完全に独立した状態で存在している。一応3人の間に恋愛が生まれなさそうな設定上の仕掛けがあるのだけども、恋愛そのものを否定せず、むしろ肯定したうえで、恋愛に囚われない幸せもあるということを描いている稀有な作品。 もちろん現実ではこんなに人たちに出会えるとは限らないし、この3人も奇跡的なバランスで関係性が成り立っていると思うけど、何が自分にとって幸せなのかを見つめ直させてくれると共に、恋愛だってなんだって、探せば幸せはいろんなところに転がっていると気付かせてくれる、読んでいて多幸感で満たされる作品。
そんな生活が成り立つわけない、と最初に思ってしまった。
実際奇跡のバランスということだとしてもご都合主義的な部分は多少なりあるのだと思う。
長女44歳と末男(パンセクシュアル)29歳ですら何か起きてしまうのではないかと思っちゃうし。
次女34歳はビアンなので彼には興味がないが、長女にもきっとそういう目は向けないのだろう。
※実際は姉妹でも姉弟でもないしそういう表現もないのですが便宜上そんな書き方をしました
なんかそういう性的な関係を超越してしまう年齢ってあるんだと思う。
とはいえそれなしで色恋沙汰は出来ないだろう。
逆に色恋ナシなら共同生活のパートナーとしてありなのだろうか。
色々そういう下世話な心配ばかりしながら読んでしまったけど、実際はとてもスマートな関係で理想的なバランスが保たれていて、1巻は次の展開が気になる締めくくりをされていた。
2巻でも彼女らが幸せに過ごしてくれることを願う。