巨悪を公憤で撃たずに、小悪党を私憤で弄ぶ痛快さ
野宮警部補は許さない 宵田佳
警察官っていうのは、なにかあったら
「警察官ともあろうものが」と糾弾される。
一般的な職業に比べ、ストレスの溜まり方が強い
大変な職業らしい。
なのでこのマンガは、警察内部ではホントに
こんな低レベルな揉め事が、ストレス解消策として
実際に頻発しているのかもしれないと
思ってしまうリアリティはある。
だからといってストレス解消をパワハラ的、モラハラ的な
理不尽な手段で行使し発散しても良い、とはならないわけで、
そこに悲哀が生じてしまう。
このマンガは、そこからさらに一捻りして、
そういった警察内部の揉め事や問題点を
野宮警部補が論理的でいて、ときに詐欺的だったりする手法で、
小悪党を成敗するという痛快ギャグ漫画に仕立てている。
しかし野宮警部補は、けして正義感や道徳観から
巨悪を正そうとは思っていない。
倫理観で行動をしていない。
子供じみた感情や気分、過去の恨みからの私憤で行動している。
「野宮警部補は許さない!」の、許さない、は
けして正義感や公的な憤慨からの「許さない」ではなく、
個人的な好き嫌いや恨みが原動力になっている
「許さない」だと思う。
そこには実は「正義」はない。
だが、だからこそ、薄っぺらい正義感や
実は現実的でない勧善懲悪話よりも
独特な価値感やリアリティによる
爆笑ギャグを感じてしまって面白かった。