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世界が恋したヒロインに、また会える―― ※この作品は2014年~2015年に、加筆修正・カラー完全再現のうえ刊行された『YAWARA! 完全版』全20巻を、全29巻に再編集したデジタル特別版です。素敵な恋に憧れる普通の女の子・猪熊柔は、実は祖父・滋悟郎の指導を受けた柔道の天才少女。そんな彼女がオリンピックの金メダルと国民栄誉賞、そして日本スポーツ界のスーパースターになることを目指す!? 柔の巴投げを見て、日本スポーツ界のスーパースターになると確信したスポーツ紙記者・松田は、記者生命を賭けてその正体を突き止めようとする。一方、滋悟郎は、柔の金メダル・国民栄誉賞に向け、着々とデビュー計画を進める。その過程で柔の強さが徐々に明らかになっていき…… 世に女子柔道ブームを巻き起こした大ヒット作『YAWARA!』が雑誌掲載時のカラーページを再現した完全版となって登場! 浦沢直樹が打ち立てた、スポーツ漫画の金字塔―― 第1集!
カワイイと強いは普通は両立しない。
カワイイってのはカヨワイとかケナゲに近いし、
強い、とは対極ともいえる存在だと思う。
カワイイ、と思う感情は
守ってあげたい、と思う気持ちに通じるだろうし。
柔道という体力や体重が強さに大きく関わる競技では
強くなるには筋肉質にならざるを得ないし、
筋肉質になればなるほどカワイイとは遠ざかると思う。
そう考えるならYAWARA!も所詮は漫画ドリームだ。
漫画の中だからこそ、見た目が綺麗で可愛くて、
ナイスバディとまではいえなくてもスタイルも良い
けれど強い、が成立する。
筋肉質のガッチリした体型でもない女の子。
それでいてメチャクチャ強い。
そんな猪熊柔(主人公)は漫画の中だからこそ存在出来ている。
猪熊柔はけして「柔道大好き」を前面に出していない。
本質的には好きだろうし誇りもあるのだろうが、
最初のうちは、人生の優先事項の第一位は柔道ではない。
むしろ普通の女の子として普通の生活、
普通な恋愛に憧れている。
そんな猪熊柔がストーリの進行と共に
自分が柔道を好きなこと、楽しみたいこと、
柔道をすることで自分が出来ることを考えていくようになる。
なので話の前半では一歩間違えたら
「才能があるのに贅沢言っている勘違い女」
と、カワイイとはまさに真逆な
反感買い捲りキャラになりかねなかったかもしれない。
実際、そのへんを勘違いしたスター誕生物語漫画も
他にはけっこうあると思う。
また、現実の世界でもよく
強くて才能があって見た目が綺麗な女子アスリートを
「柔道漫画のYAWARAちゃんみたいに」と形容するのを
見ることがある。
だが、それは違うと思う。
猪熊柔のカワイイし強い、とは
心が一途だからであって、
強い弱い抜きに、その一途さがカワイイし、
その一途さが、自身の強さと更なる努力で
自分も周囲も幸せにしていくから
「カワイイし強い、凄い!」
という漫画になっているのだと思う。
父母と普通に楽しく暮らしたい。
好きな人と普通の恋愛がしたい。
そして自分は柔道が好きだからしたい。
そういう一途さが実は一貫している。
だからカワイイし強いと読者は感じるのだと思う。
また、猪熊柔を勝手に?ライバル視する敵キャラ
「本阿弥さやか」も、一見、勘違いギャグキャラだが
(実際、かなりの勘違いキャラではあるが)
一途さでは猪熊柔を超える面もあってカワイイ。
猪熊柔の親友「富士子」さんも、
やはり一途な部分があってカワイイ。
その上で柔道の試合のシーンとかも凄く良いし、
カワイイと強いが両立した良い面白柔道漫画だと思う。
「カワイイと強い」は女性をとりまく永遠のテーマですよね。YAWARA!は読んだことがないのですが、名作と言われる所以がすごくよくわかりました。本当に素晴らしいレビューをありがとうございます。今度読んでみます。