子ども向けだと思って甘く見るなかれ、めちゃくちゃ面白い。ドッグマン誕生の経緯がまずヤバくて、大事故に遭った刑事に警察犬の頭を接合するっていう壮絶なバックボーンをいきなり見せられます。そこら辺のマーベルヒーローでは及ばない悲惨さ。主導権犬が獲るんかい。

この荒唐無稽さが最高で、子どもってこういう無茶苦茶なやつホント好きなんですよね。これ読んでまだ笑える大人でよかった。

意外とテーマも考えさせられるものがあって、世界中から文字が消えたことでヒトの理性が失われ、社会が崩壊するっていう超スケールの極悪計画が平然と実行されたりします。結果としては作中ではウンコなすり付け合ってるだけなんですが。

優れた児童書の条件は「いかに子どもの想像力を刺激できるか」ということだと思うのですが、本作の自由な発想力は大人が読んでもインパクト充分。頭のネジを緩めたいときに最高の一冊です。

最後に僕が一番好きなカットを4章「ソーセージ戦争」から引用しておきます。なにこれ???

子ども向けだと思って甘く見るなかれ、めちゃくちゃ面白い。ドッグマン誕生の経緯がまずヤバくて、大...
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エロイーズ 本当のワタシを探して

物語の始まりのシーンが好き

エロイーズ 本当のワタシを探して
ANAGUMA
ANAGUMA

本作、ベンチに座っていたエロイーズがふと記憶喪失になっていたことに気付くシーンから始まるのですが、その自然さがなんだか巧みで、ピンク色のカラートーンとともに強く印象に残っています。 メインとなるストーリーラインはサブタイトルにもある「本当のワタシ」探し。 少ない手がかりを元に記憶を失う前の自分がどんな人間だったのかを調べていく…と書くと壮大なミステリーやサスペンスのようでもありますが、そうそう大変なことが起こるわけでもないのが人生というものかもしれません。 どこにでも居る女性だった(と思われる)エロイーズ・パンソンの身の回りも、世の人のご多分に漏れずありふれた出来事ばかりだったようで、一生懸命過去の自分の身辺調査を行うほどに些細でちっぽけなことばかりが判明していきます。そのようすは親近感やおかしみと同時に、どこか空虚さというか、切なさも感じさせたり…。 「記憶を失う前の自分ってどんな人間だった?」というのを入り口に「そもそも根本的に自分ってどんな人間なんだろう?」という二重の意味で「本当のワタシ」を探すことになるのが妙味です。 そんな深いテーマもありつつ、バンドデシネとしてはかなり読みやすい部類に入ると思います。エロイーズのちょっとした仕草がどれもかわいかったり、普段縁遠いフランスでの「フツーの」暮らしが垣間見えるだけでも面白いので、読む機会があれば気軽に手に取ってみてほしい一作です。

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