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空が灰色だから

気づけば10年

空が灰色だから 阿部共実
toyoneko
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気づいたら「空が灰色だから」の最終巻が出てから10年以上が経っているんですよ えっ…?10年…? ひょっとして「空灰」を読んでない漫画好きって結構いるのでは…? もしかしてこの傑作が忘れられてしまう危険性もあるのでは…? と危惧し、ここに改めて紹介するものです まずは作者の阿部共実先生の話をしましょう 阿部先生は週刊少年チャンピオンでデビューした漫画家です デビュー作は「破壊症候群」 タイトルはヤバいですが、内容は、ポップで明るいアクションです。「斬り介とジョニー四百九十九人斬り」をポップにした感じ、というか この作品は短編集(大好きが虫はタダシくんの)に収録されています ちなみに、阿部先生は、昔はブログで漫画を発表しており、 短編集表題作の「大好きが虫はタダシくんの」は、 そこに掲載されていた作品でした 以下のアーカイブから辿れます https://web.archive.org/web/20120915070936/http://blog.livedoor.jp/ikaruga99999/ その後、週刊少年チャンピオンで始まった連載が、「空が灰色だから」です 最初は短期集中連載だったのですが(3話まで)、 その後本格連載になりました 基本的には、連作短編集です 決まった主人公やキャラクターはほとんどおらず、毎回、異なる話が描かれます 女の子が主人公の話が多いです コメディのこともあるし、ホラーのこともあるし、恋愛要素もあったり、なんだかよく分からない話もあります しかしまぁ、やはりこの作品の魅力は何といっても、このキャッチーな絵柄で描き出される地獄でしょう 心の柔らかな部分、忘れていた学生の頃の あの感情を的確にエグってくる作品群がとにかく印象的です 具体的には以下の話ですね ・ 9話 夏がはじまる(1巻) ・ 18話 信じていた(2巻) ・ 27話 4年2組熱血きらら先生(3巻) ・ 35話 別に大丈夫やけどな(3巻) ・ 45話 名乗る名もない(4巻) ・ 最終話 歩み(5巻) それ以外にも私は以下の話が好きです ・ 2話 お前は私を大嫌いなお前が大嫌いな私が大嫌い(1巻) この話を読んでこの作品の虜になりました 試し読みできるよ! https://www.akitashoten.co.jp/comics/425321715X ・ 12話 ガガスバンダス(1巻) 不思議系の話でありながら、無限に読み込んで考察できるのがたまらない 「おばあちゃん」を「ランドセル」で炊いてガガスバンダス ・ 17話 こわいものみたさ(2巻) とれちゃった ・ 21話 こんなにたくさんの話したいことがある(2巻) イメージの洪水から「星なんてひとつもなくて」に繋がるのが美しい ・ 22話 ニッポン嗚呼、人情カツアゲ傷害ウルトララプソディ(2巻) 漫才みたいでありながらホラーで落とす手法の見事さ ・ 29話 少女の異常な普通(3巻) その二面性は普通じゃないよ!…いや、よく考えたら普通か? ・ 36話 ただ、ひとりでも仲間がよしい(3巻) 今でもたまに「きょう気」という表現使ってます ・ 39話 世界一我侭な私から世界一ブスなお前に(4巻) 泣ける ・ 40話 マシンガン娘のゆうつつうつうつうつうつうつうつうつうつうつうつうつうつ(4巻) 最終頁、セリフのないコマが怖すぎる これも試し読みできます https://www.akitashoten.co.jp/comics/4253217184 ・ 55話 さいこうのプレゼント(5巻) これは別途コメ欄に 試し読みできますのでまずはこちらをドウゾ https://www.akitashoten.co.jp/comics/4253217192 ・ 57話 マルラマルシーマルー(5巻) トランシーバー効果でもいいと思いますよ 連載は約1年、後半はややテンションが落ちてきたようにも思いますが、最後の最後にこれでもかという話をぶちこんで(「歩み」)、見事に全5巻で完結しました 週刊連載とは思えないほどのクオリティで、本当に毎週楽しみに読んでいたものです 試し読みをいくつか貼りましたので、読んだことがない人はまずはそちらから! チャンピオンクロスでもかなり読めると思います なお、このあとに発表した「ちーちゃんはちょっと足りない」も大傑作でした こちらは「このマンガがすごい!」で1位をとった作品でもあります なお以下の画像は、好きな話には挙げていないけど好きなコマ

幻想世界英雄列伝フェアプレイズ

クルダ流交殺法に勝てても打ち切りには勝てなかった

幻想世界英雄列伝フェアプレイズ
サミアド
サミアド

『SHADOW SKILL 影技』や『聖闘士星矢EPISODE.G』で有名な岡田芽武先生が原作・てんま乱丸先生が作画。コミックボンボンの漫画です。 よく似た漫画『幻想世界英雄烈伝 忍ザード』『幻想世界魔法烈伝 WIZバスター』が打ち切り済みでしたが数年後に不屈の闘志で再々チャレンジ!! いつも通り元気な少年&パートナーが主人公!天魔伏滅四天王!敵幹部に見覚えあるキャラ!見開きデカ文字で必殺技!既視感あるセリフ! …正直 過去作の焼き直しですが、それだけ打ち切りが無念で絶対描きたいテーマだったのだと思います。 打ち切り2作も充分面白く斬新な部分がありました。今作も「ネトゲ世界が本当の異世界で魔王が支配済み。ゲーム素体姿のパートナーと異世界にダイブして戦う。他のゲームプレイヤー達は自覚なく敵に加担している。現実世界からサポート可。異世界関係者が現実にも居る」と2001年当時としては時代先取りのワクワク設定。 代表作・影技の「我が一撃は無敵なり!」をガッツリ登場させるなど 今度こそ何としても最後まで描くぞ!という決意を感じました。 その甲斐あって?ドラマ CDとWEBアニメ(PV)が制作されゲーム化も発表!声優も募集!さぁこれから・・・! 打ち切り。え…?何が起きた…?ボンボンさん…? メディアミックスが頓挫したのか全ての企画が告知無く自然消滅。漫画も番外編で終了。ボンボンの中では人気作だったのに… 伏線が大量に残っていて今もモヤモヤしています。愛蔵版発売してオマケで設定公開して欲しいです。無理かな…。 画力は過去作より上がっていますが後半はCGが強くてちょっと読みにくいです。カラーは綺麗でアニメ向きだったと思います。 キャラも魅力的だったので打ち切りは本当に残念です。画像は人気ダントツ1位の魔法バカ親友キーン君です。

追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。 ~俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?~

「チー付与」ってなあに?

追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。 ~俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?~
toyoneko
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未読者向けに「チー付与」の話をしましょう 知ってますか?「チー付与」。まぁ私も知ったのは最近なのですが… タイトルをみれば分かるとおり、本作は、いわゆる「なろう」系を原作にしています 原作の方は、わりとタイトル通りの内容で、あまり癖はなく、読みやすいです(なお、単行本2巻まで出てますが、未完で、現在も「なろう」連載中) https://ncode.syosetu.com/n7050gs/ 「追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。 ~俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?~」という長いタイトルですが、略して「チー付与」 ところで、「なろう」系のコミカライズには、当たりハズレがあります つまり、技量の高い漫画家さんがコミカライズするか、そうではない漫画家さんがコミカライズするかで、面白さが全然違ってしまうのです たとえば、「絵が上手いか否か」は分かりやすい でも、それだけでなく、同じ文章を原作としていても、それを漫画としてどう落とし込むのか、エピソードの取捨選択、コマ割りや構成を中心とした漫画力の違いなどで、全然違う作品になってしまいます では、本作は? これは、まぁ、「当たり」か「ハズレ」かでというと、おそらく「当たり」です 絵も上手いし、漫画も読みやすい。漫画としての完成度が高い ただ、普通の「当たり」作品は、基本的には原作に忠実にコミカライズします ところが本作は、全然忠実ではないです いや、初期は(比較的)忠実だったのですが、途中から異常な改変が加えられ、結果として、他に類をみない怪作に仕上がっています その結果、一部のマニアにはメチャクチャ好評で、「このマンガがすごい!(2025)」では、オトコ編21位に入りました ストーリーの話をしましょう ただ、これは、基本的にはタイトルのとおりです。「追放」モノですね 剣と魔法のファンタジー異世界が舞台になっていて、「王獣の牙」というギルドに所属する強化付与魔術師(武器とか防具を強化する)が主人公です。名前は「レイン」 彼が、「もうお前はいらない」とギルドから追放されるところから物語が始まります レインは、付与した「強化ポイント」を全部回収し、自分の武器とか防具に付与することで、圧倒的な戦闘力を得ることになり、別のギルド(青の水晶)で活躍を始めます そんな中で、世界の危機に立ち向かったりとか、まぁそういう話 原作と漫画版のストーリーは、いろいろな設定の違いはあるものの、最初の頃は、大筋では一致していました ただ、完全に世界観を壊すような描写がされてから、雲行きが怪しくなってきます 具体的には、燐光竜という強い竜があらわれて、レインらがそいつを倒すのですが、死んだと思った燐光竜が、実はサブマシンガンを隠し持っていて、レインらを射殺しようと画策していたことが分かる、というシーンなのですが…(添付) サブマシンガン? もちろん、剣と魔法のファンタジーにサブマシンガンが存在してよいはずもありません 一応、この時点ではシュールなギャグの一種として処理されたのですが、そのほかにも、平然とパチンコが出てきたりとか、「皇帝の盾」というギルドは「CEO」と呼ばれるギルドマスターがいて、構成員全員が普通にスーツを着ていたりとか、ブラック企業みたいに全員でギルド訓唱和を始めたりとか、どんどん世界観が壊れ始めます まぁこれはもう、そういう作品なんだな、シュールコメディの一種なんだろうと読んでました。この時点では 同時並行で、作品の方向性も変わっていきます 「王獣の牙」には、「グレンダ」という幹部がいて、まぁこいつは死んでしますのですが(ちなみに原作では死なない)、それを契機として、グレンダを慕う一団が王獣の牙を脱退し、反社のような存在になっていきます この集団の代表は、「俺の半分はグレンダでできている」が口癖で、「半分」と名乗っています グレンダを慕う「半分」とその一団は、こう呼ばれるようになりました 「半グレ」 そして、レインの能力を知った「半グレ」は、レインを仲間に取り込もうと画策するようになり、「半グレ」との戦いが始まります ところが、恐ろしいことに、「半グレ」は原作には存在しません(なお、ほかに、「暗殺の母」という人気キャラもいますが、こいつも原作にいない) このあたりで、原作との乖離が決定的になったように思います そして、それなのに、「半グレ」編が圧倒的に面白い 「半グレ」の一団は、かなり戦闘力も高く、「魔法」も使えます すなわち、冒険者は「魔力」を使って戦うのですが、「魔力」は身体強化に使えるほか、それぞれが固有の「魔法」を使って戦います。ただし、どんな「魔法」を持っているかは、切り札なので、みな秘密にしている つまり、「冒険者」同士の戦いは、モンスター相手の戦いとは違って、対人頭脳戦の様相を呈してくるわけです さらにその過程で、魔力と文明の関係が明らかにされたり(先ほど言及したサブマシンガンやパチンコと世界観の関係が(後付けかもしれませんが)説明されます)、レインの付与能力が、「どのような意味で」チートなのかが明らかにされたりとか、世界観や設定がどんどん拡張されていくのです 「半グレ」連中の造形も良くて、こいつらは悪事ばかり働くロクデナシなのですが、友情はすごく大事にしていて、それがどこか魅力的でもあります 作品が進んでいくにつれ、こいつらの性格も見えてきて、どんな魔法を使うのかも分かってきて、そして、だからこその、半グレ編の「あの終わり方」は本当に衝撃的でした(47話) そして、それまで、コメディ寄りだった作風は、半グレ編のなかで、かなりシリアス寄りに変化していきます(…と思ったら、半グレ編が終わった次の話はヤケクソみたいなコメディだった) あと、テーマ的なお話を 本作は、いわゆる「ざまぁ」ではありません。いや、原作はその要素が強いのですが、コミック版は、おそらく敢えて、その要素を排除している その代わりにテーマとなっているのが、「セカンドライフ」です いろいろな事情で、第二の人生に踏み出さざるを得ないということは、多々あります 主人公のレインはそうですし、そのほかの仲間たちも、さらには「王獣の牙」のギルマスですらギルド崩壊後の、第二の人生を踏み出します 因果応報を前提に据えつつも、どのようにセカンドライフを踏み出すのか、第二の人生をどう生きる(べき)かということが、本作のテーマになっているようです 実は、根本では結構まじめな作品なんですね 一方で気になるのは、原作との関係 いや、普通はここまで改変したら原作者は怒るはず(というか許可しないはず)なんですよね ところが本作では、原作者である六志麻あさ先生は、むしろ積極的に本作を応援していて、更新のたびにツイートしてくれます 内心ではちょっと思うところはあるのかもしれませんが、何にせよ、原作者がこんなに堂々と推してくれるなら、読者としても堂々と応援できるというもの なお、さんざん改変の話をしましたが、実は、地味に原作要素は拾っているんですよね… 保持者(ホルダー)、天の遺産(レリクス)、光竜王とか、「この先の原作展開」につなげる要素が拾われていて、大筋は外さないようにしているところが伺えます あと、この漫画家さん、何者なのか?という話 コミカライズを担当した業務用餅先生は、覆面作家。これ以外にどんな作品を書いているのかとか、出自とか、全然明らかになっていません このへん、メタ的に、これがこの漫画家さんの「セカンドライフ」そのものなのかも、という感じもするところです そうすると、その正体を暴くのはヤボな気もしますが、いろいろ調べている人たちもいるので、気になればそちらから探してみてください たとえば以下のスレからとか https://itest.5ch.net/medaka/test/read.cgi/ymag/1692975216 本作は、イカれた怪作でもありますが、同時に、圧倒的な漫画力を誇る名作です 年末年始、ぜひ読んでみてください!

そらがはいいろだから
空が灰色だから 1巻
空が灰色だから(2)
空が灰色だから(3)
空が灰色だから(4)
空が灰色だから(5)
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