世界と闘う乙女の身体美!
【世界と戦うアスリート漫画②〜スポーツコラム風に】 『もういっぽん!』等の柔道女子漫画を描かれる村岡ユウ先生が作画を担当された、七人制ラグビー女子日本代表が2016年リオ五輪出場を目指した記録であるこの作品。まず注目すべきは、闘う女子の身体描写である。 肥大した太腿、広い肩幅、鍛えて大きくなった身体に比して、小さな頭。そのプロポーションが、自然かつ美しく描かれている。レオナルド・ダ・ヴィンチがかつて導き出した理想の比率が、コートで躍動する、その美しさ、力強さ! 世界で闘う為に、極限まで鍛えられた身体に感動させられた後で、それがむごい程にぶつかり合い、弾き飛ばされ、振り解かれるのを見る時、私達は世界レベルの厳しさを共に体感する事になる。これでもまだ、敵わないのか……と。 日本の女子ラグビーの競技人口は2012年で2355人(https://www.jpnsport.go.jp/kokuritu/sisetu/kankou/tabid/409/Default.aspx )。世界1位のニュージーランドの約1万人には敵わないが、1988年の女子協会設立以来の普及・強化の努力で幼少からラグビーに親しむ女子も増え、その中から生まれた代表選手達が、より高い世界を見据えていた。 そしてそこに、他競技からの転向組が混ざり合っていく。 物語は陸上の円盤投げからの転向組・ラグビー歴1年の桑井亜乃選手が代表に招集されるところから始まる。 ラグビーにおいては当たり負けない事も重要だが、七人制では更に、走り負けない事が重視される。短い試合時間・速い展開・短いインターバルという特性から、気持ちの切り替えの速さも大切なようだ。 そういう点に強みを持っていれば、他競技で活躍してきた転向組にもラグビー経験の浅さを補ってチームを底上げし、鼓舞する可能性はある。 陸上の円盤投げで上を目指すのを諦めた桑井選手は、特性を見込まれてラグビーを始めるが、すぐに次を見据え前向きなスピリットで走り続け、苦しいチームに明るい風を入れる事で、リオ五輪出場の夢を繋いだ。そんな風に個人もチームも、例え挫折があっても、前向きにチャレンジし続ける事が大事なのだ、という事をこの作品は教えてくれる。 因みに、日本のラグビー女子競技人口は、平成30年度で4672人に増えた。(https://blog.rcn.or.jp/rugby/ ) リオ五輪代表の頑張りが、結果としてこの様な所にも現れている。その頑張りの軌跡、前を向いて進んだ姿の記録として、この作品は大事な物と言えるだろう。
ときどき新ジャンルとか無名だったりマイナーな競技で
オリンピックを目指す、という物語が出てくる。
有名なところでは外国映画でボブスレーを扱った
クールランニングとか。
それらは物語の設定としては面白いのだけれども、
それってホントに価値あることなのか、という疑問も
つきまとったりする。
競技人口が少なかったりレベルが低かったりするジャンルで
オリンピックにでてもどうなのよ?って感じる。
それと、
やってる人がホントにそのスポーツを好きでやってるの?
やっていて楽しんでるの?ってことを考えたりすると
「目指せ!オリンピック!」という気持ちに
あまり共感できなくなったりする部分がいつもあった。
そしてそう思った時点で、その試合を観戦しても
楽しめなくなる。
「サクラセブンズ」も読み始めでは、
その感覚がぬぐえなかった。
登場人物達が一生懸命努力しているのはわかるが
そこまでしてもオリンピックに出たいという気持ちに
共鳴する部分があまりなかった。
自分はラグビーについては一般人レベルの知識しかない。
ただこの漫画を読み始めた前半で、
7人制(人数が少ない)なので
攻めまくったり攻めまくられたり、
攻守の交代とか激しそうだということはわかった。
膠着状態が少ない(=休む暇がない)分だけ、
通常のラグビーよりハードなのかもな、とは理解した。
そういう必ずしもこの漫画にノレていない状態で
後半のオリンピック出場をかけた試合も読み始めたのだが
かなり7人制ラグビーが激しくスピーディな試合で
あることが見て取れて、だんだんと話にノレていった。
このへん、作者の画力や構成が良いのだと思う。
女子7人制ラグビーでオリンピックに出場することの
価値に付いては読み終えたあとでも
懐疑的に思う部分はあるが、
7人制ラグビーが過酷で、選手達がハンパではない
練習に耐えて過酷な試合を行っているのだ、
ということは感じられた。
そして実際に観戦したら想像より面白いスポーツかも、
と思わせられた。