地域の相楽さん

カムバック新連載「地域の相楽さん」

地域の相楽さん 花木アツコ
かしこ
かしこ

短期集中連載されていた「地域の相楽さん」がシーズン2として新たにスタート!これまでの計4回のお話がとても面白かったので、連載復活は嬉しい限りです。だいぶお隣さんと仲良くなりましたが、まだ設楽さんの素性?は知らないようですね…。 ちなみにこれまでのあらすじ。町内会に新しく入ってきた相楽さんは中性的な見た目でかっこいい。引っ越してきた当初は一軒家にひとり暮らしなんて…と、近隣住民に不思議がられていましたが、町内のゴミ拾いでの仕事っぷりのよさ、回覧板まわし騒動で見せた意外な熱血さ、大晦日に神社で配る豚汁作りでの機転のきかせ方、を経て徐々に受け入れられてきた模様。 実は…という程でもないかもしれませんが相楽さんは女性です。あまりにもクールなので、第1話では町内会の全員が「男性なのかな?女性なのかな?でもすごく聞きにくい」と悩んでいて、そこがすごく面白かったです。私も正直どっちなんだろうって思いながら読んでいました。相楽さんはあらゆる物事を推理するクセがあることがずっと描かれていましたが、それも職業がミステリー作家だからということがシーズン1の最終話で判明してます。そのことをお隣さんはまだ知りません。 毎回クスッと笑えるところがあって個人的に激推しの新連載です!!

かしこい男は恋しかしない

恋多き超進学校男子ラブコメのコメがすごい #1巻応援

かしこい男は恋しかしない 凹沢みなみ
兎来栄寿
兎来栄寿

『星子画報』の凹沢みなみさんによる新作です。目に見えて画力が上がり、とても読みやすく魅力的な絵になってきています。 「東工大の彼氏を尊敬していたが、東京工業大学だと思っていたら東京工芸大学(偏差値37)で100年の恋も醒めた」という笑い話も漏れ聞きますが、実際に『純猥談』などでも語られていた通り高学歴の男性に欲情する女性は存在するようです。ただ、それは生存戦略的には実に真っ当なことで、高学歴であるということは現代社会においてはイコール経済力の高さに非常に結び付きやすい要素。昔でいえば、大きなマンモスを狩る能力に匹敵するわけで、それは遺伝子レベルで惹かれることも不自然ではありません。 しかし、この日本の最高位とされる進学校にはひとつ問題があります。それは、中高一貫の男子校であるということ。何なら、開成だけではなく他の御三家である麻布と武蔵も、関西の雄である灘も、全部男子校です。世界には、男と女が半々でいるにも関わらず、思春期の6年間の長い時間を男性のみがいる場所で過ごす。そして見事に東大に進学し、突如普通に女性がたくさんいる環境に置かれたときに何が起こるかは火を見るよりも明らかです。 個人的には、割とこれは根深く重大な問題だと思っています。日本最高の頭脳である東大理Ⅲの男性が、異性とのコミュニケーション能力に乏しかったり免疫がなかったりする状態は大変によろしくないのではないか。 そういう意味では、この作品の主人公・大沢正直(おおさわまさなお)のように、少々痛々しく見えてもいろいろな経験を若いうちにしておくのは大事なことだと思います。 本作は、コメディ成分が多く見た目以上に男性でも楽しく読めるであろう進学校男子のラブコメ。 「使われてる…! 他人の青春のダシに使われてる…!」 というフレーズで開幕し、他校の男女から動物園の見世物的な扱いを受けつつも、偏差値や将来性などで心の中でマウントを取りながら何とか精神の安寧を保っている普通の賢い男子高生たち。そんな彼らが慣れない女の子たちとの関わりを通して味わい深さをもたらしてくれます。 この作品の特徴は、何といっても凹沢みなみさんの卓抜したセンス。 ・「青春陳列剤」 ・「トロミをつけてクラフトビール飲むサブカルジジイ」 ・青臭いことを語ったり距離が縮まりがちな「放課後ファミレス」の言い換え→「アオハル阿片窟」 ・「目クソ鼻クソ世界王者決定戦」 ・「公立…内申点という邪教を拝する異教徒!!」 などなど、語彙力が天才的でパワーフレーズが大連発されます。架空のマンション広告のキャッチコピー「都心、開闢」などさり気ないところにも好きポイントがたくさんあります。 性格の悪いシグマ、実家が太く聖人な樹太郎らいつも3人組でつるんでいる同級生や、昂ると薩摩武士のような表情になり誤解を招くヒロインのちほねなどサブキャラクターたちも漏れなく魅力的です。 ギャグは冴えに冴えわたっているのですが、恋愛の部分や人間ドラマ的な部分もギャップで見せてくれるところが多々あります。 巻末には、外山薫さんによる外伝小説付き。サブキャラの魅力を補強する1篇となっています。 普段、少女マンガを読まない男性にもお薦めします。進学校あるあるが楽しめる方はより楽しめることでしょう。

片翼のドロップス

世界でただひとり空を飛べない少女の物語 #1巻応援

片翼のドロップス sora
兎来栄寿
兎来栄寿

『墜落JKと廃人教師』のsoraさんが、並行して短期連載していた作品です。 舞台は西暦3015年。温暖化と海面上昇により海が地球の90%を占めるようになったころ、人類は建物をどんどん高層化しながら自然と空を飛べるように進化したという世界。そんな世の中で唯一空を飛べない人間、「旧世代(ドロップ)」として差別を受けながら生きるのが本作の主人公・深海ツバサです。 「飛べない人間って人間なの?」 とまで言われてしまう世界。階段が設けられている学校すら希少で、移動のために常にマイハシゴを持ち歩いているヒロイン。まず、この設定が独特で面白いです。独自の理がある世界で必死に生きるツバサは白泉社の良きSF感を覚えさせてくれます。 そんな彼女が出会うのは、何やら謎めいた事情を抱えているイケメン・鷹月レン。彼との関係性も見所です。 ファンタジックな設定ですが、ツバサの抱える疎外感や無力感は現実の私たちと地続きであり共感できるものです。そんな中でも、ツバサだから見ることのできる世界の美しさ・素晴らしさもある。設定を上手く利用しながら実に良いシーンを描いているところもあって、好きです。 soraさんの画力がそれらをより引き立てているのもありますし、1話と最終話の対比構造も綺麗で素敵な物語です。 巻末には短編の「アブダクション」も収録。命の危機にあるときのツッコミたくなるところへのツッコミが好きです。