SF・ファンタジーマンガの感想・レビュー6030件<<3132333435>>26歳と66歳のクロスロードブルース #1巻応援ブルーブルーそしてブルース 榎屋克優兎来栄寿『日々ロック』の榎屋克優さんが、ブルースを描く。それだけで事件ですし、熱いものがこみ上げてきます。 忌野清志郎と甲本ヒロトを愛していて「ブルースはどちらかというと古臭い」「ビートルズやストーンズの方がかっこいい」と思っていたという榎屋さん。ですが、この作品を描くにあたってブルースを聴いてみたらどハマりしてしまったそう。 そもそも、作中でも語られる通りロックのルーツもブルースですからね。必然的な帰着なのかもしれません。私自身も元々はロックが大好きでしたが、ジャズやブルースをこよなく愛する親族の影響で有名どころは聴いてきています。ブルースにはブルースの、また違った良さがありますよね。 本作では第1話「Change My Way」からサブタイトルがブルースの有名楽曲名となっています。ブルースに馴染みのない方も、まずはこのサブタイトルになっている曲辺りから聴いてみると良いのではないでしょうか(第2話の「Everything's Gonna Be Alright」は検索するとSweetboxの方が先に出ると思いますが、Muddy Watersの方でしょう)。 本題の作品内容は、26歳の健康食品会社の営業である田中が十字路で悪魔に40年の寿命と引き換えに「ブルースマンになりたい」という願いを叶えてもらう契約することで、憧れの66歳のブルース奏者である仲村弦と入れ替わってしまうというものです。27歳で逝去した伝説のブルース歌手ロバート・ジョンソンのクロスロード伝説に擬えているのは言うまでもないですね。 ただ、ロバート・ジョンソンは恐るべきギターの腕前を手に入れましたが、田中はさしてギターも上手くないまま弦と入れ替わってしまったことで、むしろ苦労します。 通常、転生モノや入れ替わりモノだと、元の体での経験や知識を活かして無双したり、あるいは替わった先の体の超絶技能を駆使する展開だったりが多いですが、田中はその逆を行っているのが面白いところです。もし自分が推しに転生したらと想像すると、恐れ多すぎて慄きまともに動けないことでしょう。田中の苦労は察するに余りあります。 一方、元の田中の体には弦が入り、ミュージシャンとして自由を謳歌してきた人生から一転して毎日満員電車に乗って出勤するサラリーマンとしての生活をスタートします。弦が未経験ながら持ち前のコミュニケーション能力で見事に営業の仕事を行うシーンでは、アンドリュー・カーネギーを思い出しました。このふたりの入れ替わり生活の対照的な様、それでも根底にある音楽の楽しさや素晴らしさが読んでいて心に響きます。 3月に発売した『メゾン・ド・レインボー』などでも顕著でしたが、榎屋さんの描くキャラクターたちの何とも言えない人間臭さや温かみが心地良く、随所で利いています。人生のどこかで交差したことがあるようにも感じられるサブキャラクターたちもとても魅力的で、ふたりと彼らの関係性も見どころのひとつとなっています。会社のメンバーとのカラオケのシーンや、ボトルネック奏法のシーン、京都の一幕など好きな良いシーンがたくさんあります。音楽が絡むシーンの熱量は流石です。 物語の行く末は開幕1ページ目で暗示されており、まさに憂歌の様相を感じさせていますが、40年の寿命を捧げた田中と40歳差の弦は果たしてこれからどうなっていくのか。 ウイスキーと音楽と一緒に嗜めば、良い夜になること請け合いの作品です。ただの異世界転生物とは違うデッドマウント・デスプレイ 藤本新太 成田良悟starstarstarstarstar_border宮っしぃまずデュラララの原作者が入ってるので、物語の質がかなり高い 異世界で魔王的な扱いをされていたが、最後に転生をし現代の新宿へ そこから日本を舞台にした異世界・魔法・異能などなどが入り乱れたバトルや物語が始まり、ただの異世界転生物としては全く違う楽しみがある 特に元々新宿にいる異能力者的なキャラや殺し屋たちがかなりキャラ立ちしてて、どのキャラも味がある 物語自体がしっかり作り込まれてて設定とかも濃厚な雰囲気漂うなどなど、総じてクオリティが高い良作だった中途半端なとこで終わって...最速無双のB級魔法使い 一発撃たれる前に千発撃ち返す! 阿倍野ちゃこ CK 山浦柊starstarstarstar_borderstar_border宮っしぃ魔法の総容量で全てが決まる魔法ファンタジー世界で、主人公は容量が少なくB級呼ばわりされてる、貴族だが家族からも見放されるが、実は魔力の変換速度が以上に速く弱い魔法を最速でぶっ放しまくれて俺ツエーしつつも学園生活を送り〜、と魔法の設定とか色々と面白い内容だったが、俺たちの冒険はこれからだぜ!で完結 ものすごく中途半端...! 前半の魔法設定とかはしっかり描かれてたけど、途中からそれも無くなり、結構勢いで進んでいくのも個人的に× もうちょいちゃんと続いて描かれていれば結構面白かったのに残念な作品龍虎と〇ョ〇〇〇の稀代のマリアージュ!!虎は龍をまだ喰べない。 一七八ハチ天沢聖司※ネタバレを含むクチコミです。 良設定のシブいサスペンスだが竜頭蛇尾感が否めずオールド・ボーイ 嶺岸信明 土屋ガロン名無し韓国映画版のは気持ち悪さを覚えて嫌だけどオチ部分で厚みの 必要性には賛同出来てしまうのが。 ルーズ戦記というサブタイそのままグダグダ引っ張りまくった 末にこれでは物足りないなと。 このオチなら巻数を減らして短くまとめていれば納得度も上がった 気がする。 宝石ロマン瑠璃の宝石 渋谷圭一郎素人ノワール宝石詳しくなくても読める! カラーじゃない白黒漫画なのに色とりどりの石を採掘してる感じがしてよいです…ラブラブエイリアンの打ち切りの歴史ラブラブエイリアン 岡村星まみこ※ネタバレを含むクチコミです。 料理と食材に対する知識がすごい信長のシェフ 西村ミツル 梶川卓郎starstarstarstarstar_borderゆゆゆ戦国時代の人物をあまり覚えていないのですが、『何度、時をくりかえしても本能寺が燃えるんじゃが!?』を読んだあとなので、聞き覚えがある名前がちらほら。 あちらはデフォルメされているのもあり、あの人がこの人!と当てはめて先の展開を楽しんでいます。 タイムスリップしたシェフが信長に拾われる物語ですが、主人公が悩む「タイムスリップした人が関わることで、歴史は変わるのか、変わらないのか」問題。 いや、変わることすら込みで、歴史なのか。 タイムスリップものを読むと、鶏がさきか卵がさきか、という感じで考えてしまいますね。 すべてのタイムラインが存在しうるとしても、自分がいるのはその一つですし。 醤油もない戦国時代での料理。 料理家を通してみる歴史もおもしろいですね。クラブカルチャーへの傾倒と早過ぎたポータブリズムPico★Pico 衛藤ヒロユキstarstarstarstarstardjsouchou※ネタバレを含むクチコミです。宇宙人が"お風呂"に出会ったら...宇宙でいちばん熱い風呂 いしがきのぼる名無し宇宙の未知の外来種から地球の平和を守るため、保全官としてやってきた宇宙人・クーンは人間・乾としてサラリーマン生活を送っているんだけど、満員電車や仕事の重圧で想像以上にハードでストレスフルな生活に疲弊してしまいます。 そんなときに「風呂」に出会ってその魅力の虜になるというはなし。しかし同僚には風俗にハマっていると勘違いされしまうのであった… これはヤバイ...!図書館の大魔術師 泉光starstarstarstarstar宮っしぃ久しぶりに個人的にかなり当たり作品 めちゃくちゃ高画力とハイファンタジーならではの世界観・設定で、ファンタジー好きにはかなり刺さる内容 本を読むのが好きだが自身の出生が世界的に黒歴史になっている世の中で、この世に存在する「書」を守る図書館の職員に憧れ、図書館員を目指す主人公 自身の種族としての苦労や人生を乗り越えて大人になっていく生き様もかなり良い 何より世界観と主人公の成長を見て行く過程でどんどんとファンタジー世界にハマっていき、最新刊まで速攻で一気読み、めちゃくちゃ面白かった 転生やらなにやら、ファンタジー物が増えまくってる昨今、純粋な魔法のファンタジーを読みたい人はこれをオススメしたい「勇者」とは何か?異世界ファンタジーの根幹を問い直す期待の新連載魔々勇々 林快彦starstarstarstarstar_bordermampuku「魔王」と「勇者」という、楽をしようとすれば楽をできそうな定番のフォーマットでありながら、世界観からキャラクターから何から非常によく練り込まれた意欲作でした。 「魔王と勇者」に家族愛要素を持ち込んだ意外性に、そもそも「勇者」とは何かを問い直す根源的な大テーマ、気合十分な画力と、個人的に『あかね噺』以来のスーパー新連載始まったか?と期待しています。いやおもしろ!!幻狼潜戦 桜井亜都starstarstarstarstarたか※ネタバレを含むクチコミです。 最高のコミカライズ Part4本好きの下剋上 第四部 椎名優 勝木光 香月美夜狐優曇華※ネタバレを含むクチコミです。ちょっと惜しい冒険者をクビになったので、錬金術師として出直します! ~辺境開拓? よし、俺に任せとけ! 紺野賢護 佐々木さざめき 獅子唐 あれっくすstarstarstarstar_borderstar_border宮っしぃ微妙に可もなく不可もなしな感じ... 個人的にはスローファンタジー系好きだけど、ちょっとどの方向性なのかが分からなく、気付けば完結... 魔法の才能がなくてパーティをクビ、そこから錬金術師としての才能が開花して無自覚無双してくが、バトルとかはなく開拓を目的にしたのんびりファンタジー 可愛らしいイラストで登場キャラも結構良かったが、物語の起伏が少なくて読んでいても記憶に残りづらく、ちょっと残念だったいい意味で予想を裏切られる魔法先生ネギま! MAGISTER NEGI MAGI 赤松健starstarstarstar_borderstar_borderママ子最初は可愛いこどもの先生との学園ラブコメかぁと興味薄でしたが、徐々に魔法駆使したバトル漫画に展開で読み応えがありました。 キャラクターが多いけど細やかな設定があり、手抜き感がなく、キャラ被りていなくて面白いな~と。 学校ならではのイベントがトンデモ展開になっていて一度読んだら手が止まらないかもしれない… 気になる不思議な生物たちゲレクシス 古谷実干し芋2巻読了。 表紙のインパクトが強すぎで気になっていたけど、後回しにしていた作品。 この不気味な生物たち、見慣れてくると個性的で可愛く感じてしまったのは、私だけ!? 日々生活している中で、ある日突然こんな姿になったら、人間でも怪物でもなく、自殺することも選べず、でも、人間に会ってしまったら絶命してしまうって、何のために生きているのだろうと考えてしまう。 一日一日大切に生きていかなきゃって思った。憧れのツインズミラクル☆ガールズ 秋元奈美starstarstarstarstarママ子双子で超能力使えるなんて夢が詰まってる! テレパシーにテレポーテーション。読んでいてワクワクします。 秋元先生が描く女の子が繊細ですごく当時から好きでした。 そしてちょっと意地悪だけどいざという時は頼りになる運動神経いい男子。 小学生の頃、絶対みんな好きだったタイプ! 超能力使いながら苦手をこっそり補い合ってる双子ちゃん。 周りにバレずに恋愛も学校生活も上手くいくのかとドキドキしながら読みました。懐かしのだぁ! だぁ! だぁ! 川村美香starstarstarstar_borderstar_borderママ子懐かしくなって読み直しました。 こども達だけで留守番生活していたらUFOから赤ちゃんと猫型ロボと遭遇する。しかも超能力使える赤ちゃんww ヒロインのことをママと慕う姿にキュンキュンしましたがこっそり学校にまでついて来て超能力使いひと騒動に苦笑い。 普通の赤ちゃんでも育児は大変なのに…と自分も子供を持ってから読み直すと昔とは違った視点で読めました。 みゆちゃんとかなたくんが仲良くしないと機嫌悪くなるルゥくんが愛おしいです。 美しく描きこまれた西欧世界の魅力 #1巻応援騎士王の食卓 ゆづか正成兎来栄寿『騎士譚は城壁の中に花ひらく』に連なる、ゆづか正成さんの新作です。 『アンドロイドはごちそうの夢を見る』や『神食の値段』など食にまつわる過去作も複数ありましたので、中世と掛け合わさったことで筆者の趣味嗜好の集大成的な作品となっている印象です。 「美味を求めるなら紅花(カルタモ)に行け」と謳われる紅花の修道院で育った主人公・レノが、築城中の「樫の城(クエルクス)」で新たな生活を始めていく物語です。 『騎士譚は城壁の中に花ひらく』と同様に、華美な表紙から伝わる通りまず絵が素晴らしいです。中世ヨーロッパの雰囲気と非常に合っており、精緻に描かれる建造物や風景、服飾や料理や小物を眺めているだけでも世界観に浸れて楽しめます。 本作は、料理が上手なレノがその腕を振るうグルメマンガとしての一面が大きな見どころとなっています。裏表紙でも描かれているように、うさぎのパイやひよこ豆のスープなど実際に中世ヨーロッパの人々が作って食べていたであろうメニューが考証の末にシズル感たっぷりに描かれています。 何と、作中のレシピを公式が実際に作ってみたという動画も公開中です。 https://twitter.com/shonen_sirius/status/1700687664910045616?s=20 作品を描くにあたって実際に講談社のキッチンスタジオを使って試作し、現代のものと当時の材料でできるものを比較試食してみたそうですが、やはり現代人からすれば現代のものの方が美味しく感じるとか。でも、当時使える材料や器具だけで作ったものというのもロマンがあって良いですよね。マンガ飯を作るイベントやお店などをまたやる際には、作って食べてみたいと思わされます。 また、お城を建てるところから描いているというのがなかなか珍しいのですが、私は昔から古城に憧れがあり古城ホテルにいつか泊まるのを夢見ているので、丁寧に描かれた築城工程や完成予定図なども見ているだけで楽しいです。 幕間に差し挟まれるさまざまな注釈からも、綿密な下調べの上で愛を持って西欧世界を描いていることが伝わってくるのも心地よいです。そうしてひとつひとつの物を丁寧に描いていくことによって、そこで暮らす人々の温度や息遣い、生活感が感じられるような世界が生まれています。神は細部に宿る、のお手本のような作品です。 絵に惹かれた方は間違いないと思いますので、まず試し読みで数ページでも読んでみてください。宝石ごろごろ瑠璃の宝石 渋谷圭一郎starstarstarstarstar_borderゆゆゆ宝石が好きな瑠璃ちゃん。 水晶が高くて買えないのでお小遣いの前借りをねだっていたら、「水晶なら、おじいちゃんが昔、山菜採りのついでに取ってきていた」と、おかあさんから衝撃の発言を聞くことに。 えいやと出かけた先で、鉱物を研究するナギさんと出会い、瑠璃ちゃんの鉱物採集が始まります。 瑠璃ちゃんの行動力、半端ないです。体力もないと言いつつ、半端ないです。 そこからは、ナギさんが瑠璃ちゃんに説明するていで、鉱物の話を取れる場所や取り方とともに、わかりやすく説明されていきます。 天気が石に関係している話など、すごくわかりやすく専門的な話が多いなと思ったら、作者さんは鉱物学を修められているとあって、腑に落ちました。 宝石きれ〜という話だけじゃなく、石そのものというか、自然の雄大さにというか、万物の流れというか、鉱物を鉱物たらしめる環境や存在を説明されていて、さらにその説明に自然への敬意が感じられます。 その人の好きなものの話を、わかりやすく話してもらえると、おもしろくて聞き入ってしまいますよね。そんな感じの漫画です。 あと、そんな格好で山に登って大丈夫なの?!と心配した瑠璃ちゃんが、だんだん服装がしっかりしていく様子も、ハマってるねえと興味深いです。ノスタルジックなデビュー作、千年鉄騎(ダーリン)千年ダーリン 岩澤美翠さいろく絵柄や内容がいい具合に最近見ない方向で、鉄騎と書いてダーリンと読ませるあたりも癖が面白くていいゾ~これってなりました。 絵柄もそうだけど、構図なのか?なんでかわからないけど、町並みや空き地の子供達など、昭和な香りがしてくる作品。 サイボーグのような鉄の身体で蘇った一平と、バディとなる心臓を捧げる銀色。 なんというか、めちゃくちゃだけどそこもまた良い感じである。 めっちゃ少年マンガだし、コロコロとかでやっててもおかしくなさそうなんだけど、トーチなんだよなートーチ良いよなーって思います。 わかりにくいカスタム まるやす名無しアビリティってFF?ループする信長何度、時をくりかえしても本能寺が燃えるんじゃが!? 井出圭亮 藤本ケンシstarstarstarstarstar_borderゆゆゆ11巻発売に合わせ、ヤンマガWebで5巻まで無料!(要会員登録)。 ということで、読みました。 何巻か読んだことがあったのですが5巻までは初めてでした。 キリがよいといえば、良いところなんですね、5巻。 まだまだ続くんですけども、ちょっとスッキリしました。 登場するのは、信長を始めとする見た目も性格も濃いキャラクターたち。 室町時代の武士というのはかなりヤバイ人たちだったというので、その後にこういう武将たちがいてもおかしくないのかもしれません。 そして、ループしています。 うまくやれば、信長は本能寺の変から逃れられるらしいです。 失敗したら即炎上。 途中の経緯がわからないまま時は経って、炎上時にほおりこまれます。 このルールに適応できるこの信長は、柔軟な人だと思いました。口と性格は悪いですが。 そう、信長の口が悪いです。黙っていればイケメン枠に入りそうなのに、口と性格が悪いです。 表情と合わせて煽ってきます。 威圧やどこかの方言だからというレベルでないです。口が悪い。性格も悪い。 でも、ループする条件を悪用(とはいえ、どう使うかは決まりにない)するあたり、信長を発想力のある、柔軟な人として描いているなあと思いました。 5巻で一区切りついて、第二章というんでしょうか。 6巻以降も読んでいきたいと思います。<<3132333435>>
『日々ロック』の榎屋克優さんが、ブルースを描く。それだけで事件ですし、熱いものがこみ上げてきます。 忌野清志郎と甲本ヒロトを愛していて「ブルースはどちらかというと古臭い」「ビートルズやストーンズの方がかっこいい」と思っていたという榎屋さん。ですが、この作品を描くにあたってブルースを聴いてみたらどハマりしてしまったそう。 そもそも、作中でも語られる通りロックのルーツもブルースですからね。必然的な帰着なのかもしれません。私自身も元々はロックが大好きでしたが、ジャズやブルースをこよなく愛する親族の影響で有名どころは聴いてきています。ブルースにはブルースの、また違った良さがありますよね。 本作では第1話「Change My Way」からサブタイトルがブルースの有名楽曲名となっています。ブルースに馴染みのない方も、まずはこのサブタイトルになっている曲辺りから聴いてみると良いのではないでしょうか(第2話の「Everything's Gonna Be Alright」は検索するとSweetboxの方が先に出ると思いますが、Muddy Watersの方でしょう)。 本題の作品内容は、26歳の健康食品会社の営業である田中が十字路で悪魔に40年の寿命と引き換えに「ブルースマンになりたい」という願いを叶えてもらう契約することで、憧れの66歳のブルース奏者である仲村弦と入れ替わってしまうというものです。27歳で逝去した伝説のブルース歌手ロバート・ジョンソンのクロスロード伝説に擬えているのは言うまでもないですね。 ただ、ロバート・ジョンソンは恐るべきギターの腕前を手に入れましたが、田中はさしてギターも上手くないまま弦と入れ替わってしまったことで、むしろ苦労します。 通常、転生モノや入れ替わりモノだと、元の体での経験や知識を活かして無双したり、あるいは替わった先の体の超絶技能を駆使する展開だったりが多いですが、田中はその逆を行っているのが面白いところです。もし自分が推しに転生したらと想像すると、恐れ多すぎて慄きまともに動けないことでしょう。田中の苦労は察するに余りあります。 一方、元の田中の体には弦が入り、ミュージシャンとして自由を謳歌してきた人生から一転して毎日満員電車に乗って出勤するサラリーマンとしての生活をスタートします。弦が未経験ながら持ち前のコミュニケーション能力で見事に営業の仕事を行うシーンでは、アンドリュー・カーネギーを思い出しました。このふたりの入れ替わり生活の対照的な様、それでも根底にある音楽の楽しさや素晴らしさが読んでいて心に響きます。 3月に発売した『メゾン・ド・レインボー』などでも顕著でしたが、榎屋さんの描くキャラクターたちの何とも言えない人間臭さや温かみが心地良く、随所で利いています。人生のどこかで交差したことがあるようにも感じられるサブキャラクターたちもとても魅力的で、ふたりと彼らの関係性も見どころのひとつとなっています。会社のメンバーとのカラオケのシーンや、ボトルネック奏法のシーン、京都の一幕など好きな良いシーンがたくさんあります。音楽が絡むシーンの熱量は流石です。 物語の行く末は開幕1ページ目で暗示されており、まさに憂歌の様相を感じさせていますが、40年の寿命を捧げた田中と40歳差の弦は果たしてこれからどうなっていくのか。 ウイスキーと音楽と一緒に嗜めば、良い夜になること請け合いの作品です。