少女ケニヤ

天才が生まれた一瞬の輝きを閉じ込めた一冊

少女ケニヤ かわかみじゅんこ
TKD@マンガの虫
TKD@マンガの虫

まず、度肝を抜かれるのが巻頭にフルカラーで収録されている「おなもみ」です。 遠くに引っ越してしまう幼なじみの少女に対する未練を少年の視点から極限にまで削ぎ落とされた台詞と洗練された演出、メタファーを使うことでわずか8ページで描写しきった傑作です。初めて読んだのは何年も前ですが今だにその時の衝撃が忘れられません。特に見開きの一枚絵の構図と吹き出しの位置はこれまでの自分漫画体験には全くないもので「こんな漫画の見せ方があったのか!?」とパニック状態になりました。 また、色彩センスも抜群で少女漫画らしい水彩メインのパステルカラーで実在感がありながらもどこか幻想的な空間を描き切っています。 かわかみ先生の作品、特にこの本に収録されている作品には、女性作家でありながら男性目線のモノローグで男性が女性に対して密かに抱いている感情を暴き出しています。一見すると男性に対して厳しい目線が向けられているように見えますが、逆にそこまで理解してくれた上でこのような作品を書いて世間の男性に対して接しているのだと考えると非常に慈愛に満ちた作品として捉えることができる作品が多いです。 なので、女性はもちろんですが、男性にも読んでいただきたい一冊です。

綿谷さんの友だち

綿谷さんの"真っ直ぐな言葉"が心に響く

綿谷さんの友だち 大島千春
sogor25
sogor25

相手の言ったことを文字通りに受け取ることしか出来ない女子高生・綿谷さん。「凪のお暇」の凪が"空気を読みすぎる"人なら、彼女は"空気を読むことができない"人かもしれない。そんな彼女と、彼女を取り巻くクラスメイトとの物語。 ともすると綿谷さんは"発達障害"や"アスペルガー症候群"などの"病名"をもって語られる存在なのかもしれない。もちろんそうすることで得られる物語的な効果もあるとは思うけど、今作では特段そういう説明のしかたをせず、あくまでよくある高校での一風景として綿谷さんと周囲の日常を描いている。それによって、極端に空気を読まない綿谷さんの存在がより親身なものとして感じられ、現実感のある物語になっている。 そして、空気を読めないことが"真っ直ぐな言葉"となって周囲の人に届くことにより、分かり合えない」のすれ違いから友だちになるまでの過程が高校生活の1ページとしてキレイに可視化されている。 主人公の振る舞いが周りに影響を与えていくというのは「町田くんの世界」や「スキップとローファー」とも近いかもしれないが、興味深いのは基本的に各話の語りの中心が綿谷さんではなくその"友だち"の側にあること。それは各話サブタイトルが友だちの名前になっていることからも分かるし、後から思い返すと作品のタイトル自体も「綿谷さんの"友だち"」だったと気付かされる。そういう意味ではもしかしたら「桐島、部活やめるってよ」に近い演出なのかもしれない。ただ、他者視点が多いなかで綿谷さんの視点でも要所で描かれており、実際に読んでみるとかなり極端な存在なはずの綿谷さんに対しても感情移入できるように作られている。 綿谷さん視点でも"友だち"視点で見ても、いずれにしても作品全体の"真っ直ぐさ"が純粋に心に響く作品。 1巻まで読了。

ザッドランナー

最高すぎる青春部活マンガ

ザッドランナー カサハラテツロー
nyae
nyae

アトム ザ・ビギニングでおなじみカサハラテツロー先生の超絶傑作青春ラブコメ部活マンガ。個人的にはカサハラ作品でダントツ面白いと思っています。 部活と言っても、架空のスポーツ“XAD”を題材にしてます。 メカニックデザインに定評があるカサハラ先生の、遊び心と高い説得力により表現されたXADのマシンのビジュアル。この素晴らしさは中身を読まなくてもわかる人にはわかる。 更に、XADが走る姿を見れば「この漫画はあれだ、最高だ」というのを瞬時に判断できるはず。 本当は会う人会う人全員におすすめしたいほどなんですが、残念ながらちょっと中途半端な終わり方をしてしまってるんです…終わってしまってこんなに悲しかった漫画は他にないかもしれない。 主人公は心優しきピュア少年、ポテチ(愛称)。ポテチが恋するのは並外れた身体能力を持つ少女、小梅(実家はヤクザ)。 ポテチの親友マッキーや、顧問の白鳥先生、小梅の双子の妹たちや、他校のライバルなど愛すべき魅力的なキャラクターの宝庫なのもこの漫画の魅力です。 ああ、できることなら人類すべてに読んでほしい。 アニメ化とか向いてると思いますよ。

放課後さいころ倶楽部

さいころ倶楽部に出てきたゲームでやったことあるやつ

放課後さいころ倶楽部 中道裕大
名無し

の話をして作品を振り返ったりゲームのよさを語りましょう。アニメも始まるし! ※一覧、Wikipediaから引っ張ってきましたんで参考にどうぞ。 1巻 ・マラケシュ ・ごきぶりポーカー ・ねことねずみの大レース ・ハゲタカのえじき ・ミラーズホロウの人狼 2巻 ・ガイスター ・インカの黄金 ・カタンの開拓者たち ・テレストレーション ・ファウナ 3巻 ・ニムト ・キング・オブ・トーキョー ・ごいた ・ドブル ・バトルライン 4巻 ・ラブレター ・もんじろう ・アイランド ・ケルト 5巻 ・ピット ・オニリム ・エルフェンランド ・だるまさんがころんだ ・パンデミック 6巻 ・アクワイア ・ブロックス ・レディース&ジェントルメン ・バルバロッサ ・カルカソンヌ 7巻 ・プエルトリコ ・ダンシングドラゴン ・ナンジャモンジャ 8巻 ・ヘックメック ・ファミリア ・クアルト ・チャオチャオ ・魔法のラビリンス 9巻 ・お邪魔者 ・アンドールの伝説 ・コードネーム ・ディクシット 10巻 ・禁断の砂漠 ・セレスティア ・パッチワーク ・カルバ ・アグリコラ 牧場の動物たち 11巻 ・クゥワークル ・それはオレの魚だ! ・スティッキー ・ドデリド 12巻 ・カヤナック ・ブラフ ・ナイアガラ ・バロニィ 13巻 ・ブラックストーリー ・カロム ・ベストフレンドS ・ウェンディゴのこわい話 ・くるりんパニック 14巻 ・バックギャモン ・ラビリンス ・リアル型脱出ゲーム ・ウボンゴ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BE%E8%AA%B2%E5%BE%8C%E3%81%95%E3%81%84%E3%81%93%E3%82%8D%E5%80%B6%E6%A5%BD%E9%83%A8#%E4%BD%9C%E4%B8%AD%E3%81%AB%E5%87%BA%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%82%8B%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0

綿谷さんの友だち

正直に生きにくい人間の清涼剤

綿谷さんの友だち 大島千春
六文銭
六文銭

同著者の「いぶり暮らし」が好きで、その作家さんの新作ということで読了。 いぶり暮らしでは、グルメ漫画の面よりも、燻製生活を通しての同居人二人の関係や周囲の人間とのやりとりーーいわゆる「人間模様」が好きだっただけに、この作品はよりその点にフォーカスした作品で、個人的にドンズバでした。 綿谷さんは、周囲とあわせられず、空気も読めず、冗談も通じない、不器用な人間です。 「シャーペンの芯ちょっともらえない?」 と聞かれ 「ちょっとって、具体的にどれくらい?」 と聞き返すような感じ。 言葉通りにしか受け止められず、本音でしか生きられない。 皮肉も通じない。 なんと生きにくいだろうなぁと思いながら、どこか彼女を羨ましく思えてしまう。 周囲にあわせるだけの、風見鶏になっている自分としては。 最初は一人だった綿谷さんも、徐々に理解され、また綿谷さんも理解し(学習とも?)、友だちが増えていって、その過程も読んでいてい気持ちいいです。こういう人が報われるのって、嬉しくなるのです。 また、人間関係うまくいってそうなクラスメイトも、内面では色々問題を抱えていて、今後それがどう展開されていくか楽しみです。