リビドーズ

ヤンジャンの新連載でいま一番楽しみ

リビドーズ 笠原真樹
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

絵に見覚えあると思ったら「群青戦記」の人か! この新連載は、ちょっと面白そうな設定。 「その病気」に感染した状態で男の性器が興奮状態になってしまったら発症・変異してしまい、全身が勃起時のように血管が浮き出て膨張し近くにいる異性に襲い掛かるというおそろしい症状だ。 その病気は少しずつ社会に蔓延しつつある。 バイト先のコンビニに店長、常連客の風俗嬢、クラスメイト・・。 そして、主人公。 主人公は奇跡的に感染をコントロールできるのか、どうか。 今後の展開としてはゾンビ的なパンデミックパニックものの方向へ進むとは思うんだけど、主人公はある事情から性的なことに嫌悪感も抱いている。 もしかしたら、そこが鍵になってくるのかもしれない。 主人公は病気の力を利用し好きなあの子の救世主になることができるのか・・! この病気を抱えたまま、ヒロインとイイ感じになってもセックスはもちろん、キスすらできないジレンマと戦うことになるだろう。 感染が拡大し社会が崩壊したあと、グループに分かれ生活し始めた時に主人公は感染しながらも自我を保つ異質な存在として迫害されるのか、英雄視されるのか。 感染したと誰にも言えないときに、きっとあの親友が助けになるんだろう。 陸上をやっていた経験も生きるかもしれない。 どういう方向に展開していくのか楽しみでならない! 誰しもが内に抱えている性という怪物を本当に怪物として描くこの作品。 序盤で、日常の理不尽さ、どうしようもなさを丁寧に、リアルに描写することで巻き起こる異常事態がより際立って見えてくる。 ここ最近のヤングジャンプの新連載攻勢の中では一番期待している。

蜘蛛ですが、なにか?

ガンバレ蜘蛛ちゃん!

蜘蛛ですが、なにか? かかし朝浩 輝竜司 馬場翁
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

女子高生が、気づいたらダンジョン内の最弱モンスターである蜘蛛に転生していて弱肉強食の世界で何度も死にかけながら強くなってサバイブしていく話。 生まれた時から家族が共食いしてるハードモードでスタート。 一難去ってまた一難すぎる。 異世界転生ジャンルはすべての障害を難なく順調にクリアしてストレス無く読めるものが多いが、この作品は一安心したらやばい死ぬ・・!の繰り返しなので、それがいい。 ある能力特化型のスーパー雑魚キャラが、工夫で毎回キワキワで生き延びるの見てるの楽しくない? 糸と毒(あと素早さ)だけで、絶体絶命切り抜けるのいいよね! ていうか、ちゃんと絶体絶命になるのいいよね!と思うのはこのジャンルがみんなチートすぎてそうならないからだろう。 そういう展開は少年漫画にあてはめればわりとベタなのだけれども。 そして着実に実力をつけていく蜘蛛ちゃん。 そういえばジョジョのストーンオーシャン編も主人公徐倫の能力が糸で、まじかよって絶望した記憶ある。 一見弱そうな能力ほど応用が効いて使い勝手があったりする。 5部ブチャラティのスティッキーフィンガーズというジッパーの能力然り。 ゲーム的世界観なので、ピロンッとレベルも上がるしスキルもあって、強くなれば技や能力を獲得するので、目に見えて強力になっていくのが楽しい。 同時に周囲のレベルが高いところにどんどん突き進んでしまうので依然常に危機には変わりない。 常に危機には変わりないが、獲得していくスキルの中に妙なものが混じっていて何か不穏なことが裏でゆっくり進行しているのがとてもナイス。 生きていくうえでの食事が描かれているのもよくて、これがあるのと無いのとじゃキャラクターの説得力が全く変わってくるし、目の前に死ぬほどの危機がゴロゴロ転がっているのに「地上に出て美味しいご飯が食べたい」っていう欲求があって頑張れてるのが女子高生的でかわいい。 ついつい応援してしまう。 ガンバレ蜘蛛ちゃん!!

転生したらスライムだった件

確かに異世界転生モノの名作

転生したらスライムだった件 伏瀬 川上泰樹 みっつばー
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

異世界転生ジャンルとか関係なく、普通に面白かった。 前世で通り魔に襲われ、亡くなりゆく意識の中で獲得していったスキルが、異世界へ転生後発揮され、体はスライムに、そしてスライムには持て余すほどの強いスキルを手に入れ、目覚めた直後にいた最強のドラゴンを捕食し、吸収。 序盤から敵なしの最強スライムが誕生する。 だが、スライムだ。 スライムゆえに不自由な部分を、もがきながら快適にしていく痛快サクセスストーリー。 システムの勝利かと思ったら話も面白い。 世界観やシステムをスキルに説明させることができるので、試行錯誤の部分がもう本当にいろいろ省力できるし、捕食することでその者が持つスキルを手に入れられるのでぐんぐん強くなっていく。 ということは、ほぼノンストレスでストーリーパートをぐいぐい進められるということで、詳しいあらすじ読んでる並みのスピードで話が展開していくから気持ちいいのなんの。 スライムなのに~、と、スライムだからこそ~、が散りばめられているのもいい。 個が力を持った先に何があるかというと、強すぎる個だけでは対応できないこと、つまり大規模な政治。 早々に軍団を作り上げて近隣とも政治をしていって政治的にもどんどん力を持っていく。 強さは戦いだけじゃないよというのも良いし、転生ものの醍醐味である前世の知識もそれなりに活用している。 そして、やはり絵が上手いし、漫画も上手い。 女の子もかわいいし、男もかっこいい。 ギャグもいける。 これは売れるわーと思うが、やはり苦労と絶望をしてほしい部分はあるな~。その振れ幅を楽しみたい。 危機的状況にあってもわりと簡単に解決できちゃうのはノンストレスでいいのだけど、それはこの作品に求めることではないのかしら。 気軽に読めるのが何よりの魅力だとしたらいらないんだろうな。

無職転生 ~異世界行ったら本気だす~

初めて読む異世界転生ものにはとてもいい気がする

無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ フジカワユカ 理不尽な孫の手 シロタカ
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

引きこもりでオタクのデブクソニートだった男が家を追い出されて路頭に迷っているところトラックに引かれそうな学生を助けて死に、そして異世界へ転生、というベタな始まりから、再スタートした人生を本気で頑張る異世界ファンタジー。 異世界転生ものってだいたいずば抜けた才能だったり、チートな何かをもっていたりするみたいだけど、この作品は前世を後悔しまくった主人公が常に本気で生きて、赤ちゃんの頃から前世の知識と精神年齢を持っているという点ですでにハイスペックだよね、という感じで描かれている。 そりゃ赤ちゃんのころからしっかり目的意識持って努力を続けていたら神童並みには強くはなるよねー、と納得できる。 つまり、努力で手に入れられる範囲の才能なので、頑張ったね、偉いねという目線で見てられるし、実際、前世の知識はそこまで使っていないので妙なチート感もなく、子どものころから精神年齢高めの自我を持った子が超頑張ってるファンタジー漫画という感じ。 物語の世界観や導入の説明がめんどうな部分や、動機付けを異世界転生パートで補っているだけで、わりとガッツリファンタジーなので読み応えがある。 何度もちゃんと死にそうにはなるし、主人公より強い存在もざらに出てくる。 途中から、もともとクソニートだったやつが中に入ってることも忘れるくらいのとっても良い子になったのは前世の自分への反面教師が強すぎるがゆえだろう。 ストーリーも安易な方向にはいかないし、これからどうなるんだろうと楽しみに読める良作。 全然ペラくなくてよかった。 絵もクオリティ高くて読みやすい。 出てくる女の子もかわいいが、ラブコメの範囲内で主人公のこと好き好きすぎるのでそこだけ引っ掛かりはあるが、異世界転生もののジャンル全体がそれのオンパレードなのでそういうものだろうと思って読むしかない。

異世界迷宮でハーレムを

設定を掘り出していく過程が楽しい

異世界迷宮でハーレムを 氷樹一世 蘇我捨恥 四季童子
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

異世界転生とかそういうジャンルをあんまり読んでこなかったので、意を決して売れてそうなあたりからいくつか読んでみて、その中で良かったなと思ったのがこの作品。 同ジャンルでわりと雑な漫画描写が多いなか、すごく丁寧に描かれているのでそれだけで評価が高い。 原作はどうか知らないが読んだのが3巻までなのでまだハーレム展開になっていないのと、主人公がバカみたいに強すぎてイケイケで無双するパターンはあまり好みではないので、そうではないのがいい。 ゲーム的世界観に転移し、主人公だけがゲーム画面のコマンドのようなものが見えて、各パラメータにステータス振りをいくらでもし直せるということで試行錯誤していじくってダンジョンに挑んでいくのが面白い。 持てる能力で何ができるか、のような設定を細かく試行錯誤していくのが好きなので僕は楽しかった。 丁寧に描いているのでテンポ感はいまいち良くなくて、どういう話になっていくのかはピンとこない部分はある。 ストーリーが進んでいく気持ちよさが好きな人には向いていないと思う。 あと、絵のクオリティが素晴らしくて、ヒロインの女の子がめちゃくちゃかわいい。 エロい展開にもなるが、女の子があほみたいに主人公にメロメロでべたべたしてくるわけではないので、他人を受け入れるという行程を経て行う情事で互いの緊張感が伝わってきてとてもよかった。 ゲームの世界観に来てしまったということで非現実的なことや倫理的にどうなの、ということも、その世界での常識なら受け入れるという柔軟な姿勢は、郷に入っては郷に従えスタイルで致し方ないのかなと思う。 許可された殺人や奴隷制がそうなのだけど、積極的に受け入れ楽しんでいる。 そういう状況になった場合、自分はどうなんだろう、と悩んでしまう。 現実でのスタイルを貫くか、移動先の風習に従うか。 そこの葛藤を描かないための手段として上手く言い訳が効いているなと思ったのが、転移後すぐに盗賊出現、VRのゲームかと思って退治(殺害)、のちにゲームではないと知る。 要は殺人を犯したと知るのは事後なのだ。 殺人は最初のハードルこそおそろしく高いが、一度やってしまったのだから、一人殺すのも十人殺すのも大差はない、という描き方、もしくは、ゲームっぽいのでどこか現実として捉え切れていない部分があるのか。 そうなると、勝手な話だが一度瀕死のダメージを負って命の危険を目の当たりにしてほしくなってしまう。 遊びじゃないんだと。 ただ、読んでる感じ、ゲームのごとく順を追ってぬるぬる強くなっているのでそんなことにはならなそうだ。 ハーレムになっていく過程でまだ読みたいと思えるかどうかはきっとコミカライズ担当の漫画家の手腕なんだろうなと思うとそこが楽しみ。

キングダム

無数の事実としての、無数の奇跡としての・・・

キングダム 原泰久
影絵が趣味
影絵が趣味

いよいよ『キングダム』が化けの皮を脱ぎ捨てて、その本質を剥き出しにしてきたと思うわけです。これまで毎週のようにキングダムに夢中になっていながら、どうも周囲の熱狂ぶりから一歩身を引いてしまう自分がいました、自分の夢中になるポイントがどうも周囲とはズレているように思われて仕方なかったのです。 あるいは戦術的な細かな考察であったり、あるいは将軍たちの個性をマネジメント能力や経営論の名のもとにビジネス書にまでしてしまう素っ頓狂な連中、そろそろこういったものたちに厳しくノーを突き付けなければならないような気がするのです。やれキングダムから世間を語ろうがビジネスを語ろうが何を語ろうがそれはまったくの自由だが、そうすることでキングダムというこの漫画の一頁一頁に迸っている本来の魅力をうっかり見逃してしまいはしないか、そんな危惧があるのです。キングダムの魅力は、そんなふうに何かに援用されて語られるような二義的なものではないと切に思うのです。二義的であるというのは、すなわち根本的ではないということ。上記のような援用の仕草は、無数の事象の積み重ねによる幾重もの絡まり合いから途方もない事実として現前にあらわれる「いま、ここ」にあるものを単なる何かの理由からくる結果として弄んでしまう。 世間的には支離滅裂だと不評だった犬戎戦で、「元と正せば我こそが貴様らの祖、貴様らの王である」と因果論を振りかざすロゾに対して、フィゴ王は言わなかったか。 「何が王か、何が祖か、一体何百年前の話をしているのだ貴様は  貴様ら犬戎と我ら山の民は大きく違う  貴様らはこの平地の孤島遼陽に滞まり続けたが  我らは西の大山界で覇を争い戦い続けてきた  滞まるお前たちと違い、我らはそれぞれ夢に立ち向かう者」 まずフィゴ王は犬戎と山の民の違いを指摘してみせた、それはまさしく、ひとつの因果としての捏造された物語に組み入れられることへの拒否にほかならない、つまり、お前はお前だが、俺は俺だ、勝手に一緒にしてくれるなということ。その上で「我らは"それぞれ"の夢に立ち向かう者」、つまり、我らはお前が勝手にのたまう因果の物語には生きていない、我はそれぞれの目の前に瞬間ごとに立ちはだかるこの現実をしかと見据えている、ということだと思うのです。 そして最新話、散々騒がれた隊の覚醒とは、ひとはそこに因果を探りたくもなるものだが、じっさいには単なる因果とはまるで無縁の、いや無数の一瞬一瞬からくる因果のはてに荒唐無稽と呼びうるまでになった途方もない現実の積み重ね、ほとんどそのひとつひとつが奇跡ともいえる圧倒的に現前する事実また事実の一回かぎりの繰り返し、そのたったひとつとしての士気の爆発でした。 だいたい私たちはどんな因果の物語に括られようが、じぶんにこの先いったい何が待っているのか、そんなことは誰に言われるでもなくわかっているのです。同じようにキングダムの結果だってわかっているのです、秦は中華を統一して、やがて滅び去るのです。そして、ほかでもない私たちは秦が中華を統一した後の世界に生きている、そこにどんな因果があるだろうかはひとそれぞれにしても、とにかくこの事実だけはどうしてもひっくり返りようのない途方もない奇跡のような事実なのです。

死神坊ちゃんと黒メイド

2018年最も幸せになってほしいカップル

死神坊ちゃんと黒メイド 井上小春 イノウエ
天沢聖司
天沢聖司

 ヒロイン以上に主人公がかわいくて、主人公以上にヒロインが攻め攻めでたまらない。主人公の坊ちゃんは、生き物に触れると命を奪ってしまうという魔女の呪いをかけられ、家族と離れ1人で暮らしている。  坊ちゃんは気が弱いくせに、大好きなアリスに対してサラッと自分の気持ちを伝えることのできるジェントルなのが最高に素敵。  一方でアリスはおっぱいが大きくてかわいいメイドさんで、決して自分に触れることの出来ない坊ちゃんに対してかなり大胆なセクハラをしかける小悪魔系女子で、そのセクシーな振る舞いの陰に坊ちゃんへの純粋な恋心と敬意があるのがいじらしい…!  2人の心の距離が近づけば近づくほど、2人は手を繋ぐことすらできない事実が読んでいてひたすら辛い。まるでシザーハンズのよう…。けどその切なさを2人の周りにいる愉快な同僚と妹が吹き飛ばしてくれるので安心して読んでください!    画風については、頻繁に出てくる坊ちゃんのデフォルメされた顔がバチクソかわいくて、アリスはお色気たっぷりなのに決して下品ではなく、アリスの着ているゴシックなドレスも毎回かわいくて、太めのアウトラインと少年漫画らしいコマ割りが大変読みやすい。  いずれ本誌に移籍しても全く不思議じゃないし、むしろなんで移籍しないんだというレベルのウェブ連載作品。ぜひコミックを買ってキュンキュンしてください…! (画像は1巻2話より。絶対に触ってはいけない美人メイド24時。心臓ちぎれそうなぼっちゃんかわいい)

空手小公子 小日向海流

一人の男の成長〜あらゆる格闘技を添えて〜

空手小公子 小日向海流 馬場康誌
たか
たか

 読んだ途端に「戦いてぇ...! 巻藁(まきわら)突きてぇ...!」と、男性ホルモンとアドレナリンの分泌が止まらなくなる漫画。残念ながら巻藁は用意できないので、iTunesでEye of the Tigerをポチって外を走りました、押忍!  物語は体操でオリンピックを目指していたカワイイ顔の主人公・小日向(とヒロイン) が先輩たちに襲われていたところを、楽しそうに人を殴るヤベー男に助けられるところから始まります。助けてもらったあとに、小日向もなぜかそいつに顔面を殴られます(すでに1話から展開がヤバくて最高)。 見た目も中身も爽やかな小日向が、さまざまな格闘技とその個性的な使い手に出会い、血と汗と涙を流しながら本物の空手家となっていく熱い漫画です。  この漫画の何がすごいって、敵も味方もみんな強烈な個性を持っているのに、読んでいて現実の人間のように自然と受け入れられるところがすごい。アメリカ人(青森弁)、男好きブラジリアン柔術使い(♂)、そして忍者。現代が舞台で忍者を扱いきれるというだけで、この漫画のすごさがわかるってものです。  また空手がメインでありながら、薙刀、剣道、柔道、テコンドー、ムエタイ、ボクシングと、あらゆる格闘技が出てくるところもたまりません。小日向の通う大学には100以上の武道・格闘技の部活で作る「百部会」なる超かっこいい組織が存在し、物語の序盤を盛り上げてくれます。  格闘技に全く興味がなくても、登場人物たちの血と汗と涙(文字通り)の努力を目の当たりにし、気づくと夢中で50巻読み切ってしまうメチャクチャ熱い作品です。何かに燃える気持ちを取り戻したいとき、ダイエットのモチベーションを高めたいとき、男性ホルモンが急に必要になとき、ぜひ読んでください! 押忍、失礼します! 〜以下、この漫画の好きなところ〜 ・出てくる女の子がみんな違ったタイプでみんなかわいい ・2000年代前半の懐かしい社会描写(ex.携帯電話) ・主人公に立ちはだかる最強の先輩たちと過去の因縁 ・雑魚ポジションから一人前に成長する同級生 ・巻藁(まきわら)を素手で1000回突く超熱い修行 ・ハチャメチャな大学生活 ・きれいな顔の爽やか主人公が容赦なくボコボコにされる ・最初から絵が上手いのに、後半でもっと洗練される

奴隷姫

読んで字のごとしの背徳的バトルファンタジー

奴隷姫 やつき
mampuku
mampuku

 エロかわな表紙ですが存外読み応えがあって好きな作品です。  ヒロインの姫さまがとにかく途方もなく高潔で慈愛と正義に満ちていて、そんな彼女と主人公の絆の物語を、あろうことか暴力的エロスの皮で包み込んでしまったという非常に挑戦的な作品です。読んだ瞬間ノーガードの頭を殴られ胸を撃たれましたね。半端な覚悟じゃ描けないストーリーなんじゃないかなと思いました。  私がこれを読んで好きだなぁ凄いなあと思った点は、本当の意味での「プライド」の高さというの描いているところですね。民を守り、友を救う。それが彼女のプライドであり、そのために鞭打たれ踏みつけられ傷つくことを受け入れるのに微塵の躊躇もありません。そんな人間離れした精神を、100%理解し寄り添うことのできる主人公もまた常軌を逸した存在でしょう。彼は読者一般人が持つモラルや常識、正義感と呼ばれる嫌悪感など、そういった概念に一切囚われることなく、姫さまだけを信じ抜くことができるのです。信頼関係や以心伝心、パートナーシップといった類のものの究極系とも言えそうです。  漫画やラノベに限らず映画なんかでも、「舞台は中世欧州風なのに社会通念やモラルなどは現代のそれなのが違和感」ってツッコミはよく目にしますが、この「奴隷姫」は狙ってか意図せずか結果的に読者の現代っぽい感覚を上手にくすぐってくるなって印象ですね