んじゃま、ここらでお茶にしましょうか。
雲のように自由な旅路 #1巻応援
んじゃま、ここらでお茶にしましょうか。 胡桃ちの
兎来栄寿
兎来栄寿
多くの人が一度は夢見るかもしれない、何にも縛られず目的もない自由な旅。 筆者の過去作に登場した20歳の女性・キサが、各地を奔放に転々とながらその土地の人たちとお茶を楽しみながら交流をしたり、名所や名物を楽しんだりしていく4コママンガです。 「中学の時は3年間進学塾に通っていたけど時間の無駄だった」 「そのせいで綺麗な夕焼けや数十年に1度の流星群を見逃してもったいなかった」 「だから今は高校時代からバイトして貯めたお金が尽きるまで自由気ままに旅をする」 というキサのスタンスが好きです。 第一話から私の地元の世界遺産・吉野山がガッツリと出てきて驚かされました。春の桜だけでなく、新緑の夏や紅葉の秋、雪景色の冬とすべての季節に魅力があること、またその名の通りに数多くの桜を観ることができる「一目千本」を決めシーンで迫力たっぷりに描いてくださっていて嬉しかったです。柿の葉寿司や見目美しい桜羊羹なども地元民として親しんでいる品で、残念ながら桜の時期を逃して訪れたキサでしたがまた満開の桜も見にきて欲しいです。 試される大地で日本国内ではなかなか見られない景色を観たり、時には奇妙な労働もしたり、秘境の温泉に浸かったり、寂れた宿の再建に携わったり……。 筆者自身がコロナで旅に出掛けられなくなってしまった鬱憤を晴らすために描いたということですので、旅気分を味わいたい方は読んでみてはいかがでしょうか。
おだまき君の道草ごはん
野草グルメ×学園ラブコメ #1巻応援
おだまき君の道草ごはん 佐倉色
兎来栄寿
兎来栄寿
「特典色紙を無償で1000枚以上描かされた」という『とある新人漫画家に、本当に起こったコワイ話』が話題になった、佐倉色さんが2021年より連載している新作4コママンガです。現在は無事に普通に創作をできていらっしゃるようで、何よりです。 万年学年2位止まりの主人公・穂高小麦(ほだかこむぎ)が、1位の苧環有利(おだまきゆうり)に対して対抗心を燃やすところから始まるラブコメです。苧環くんは動物を助けたり、「病気で苦しむ人の助けになりたい」と薬学の知識を深めたいと思っていたりと、性格もとてもイイ奴であるところも含めて『彼氏彼女の事情』の雪乃と有馬の関係性に近しさを感じます。 ただ、苧環くんは野草に非常に詳しく、それを日常的に食べているという特徴があります。『おだまき君の道草ごはん』というタイトルは、ある種(寄り道的な意味での)道草ではありつつ本当に「道に生えている草」を美味しく食べる、あるいは小麦に食べさせていくマンガとなっています。 小麦は、苧環くんに敵愾心を燃やしながらも彼が作ってくれる野草グルメや野草ティーの美味しさに徐々に絆されていってしまいます。その懐柔されていく様子が絵柄も相まって何ともかわいく、面白おかしいです。そして、徐々に徐々にラブがコメっていきます。笑いはもちろんのこと、しみじみと「ああ、良いなぁ」と思えるシーンも。 イケメン過ぎて魚の被り物を常にしている女性恐怖症の志津宮や、学年3位のかなで、苧環くんの家族など、サブキャラたちも物語を賑やかに盛り上げていきます。小麦のお父さんも、娘を持つ父親の悲哀を醸し出しており良い味を出しています。 ラブもコメればグルメシーンもあり、野草の知識も身に付く。1粒で3度美味しい作品です。