アニメコミック・もしドラ~「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」

専門用語の意味がちゃんと頭に入ってくる

アニメコミック・もしドラ~「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」 岩崎夏海 プロダクションI.G
マウナケア
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アニメ放送を観たんですけどね。正直、う~ん…、って感じました。だからそのフィルムコミックであるこの作品にも、大きな期待はしてなかったんです。ところが読んでびっくり、同じ素材なのにこれほど受け取り方がかわるものなのか、と。評価は180度変わりました。アニメ版で特に気になったのは声の質や動きの硬さ。それがなくなっているのは当然として、確実に感じたのは専門用語の意味がちゃんと頭に入ってくるということです。やっぱりイノベーションやトップマネジメントなど専門用語の意味は、朗読されるより自分のペースで文字を追った方がはるかに理解しやすいのだな、と痛感しました。で、こっちが理解できると、高校野球というたとえがしっくりくることがよりわかるんですよね。アニメでは説教臭く感じましたが、集団活動であり劇的な展開もあるというところが経済活動にうまく重なりますし、またドラッカーの言葉が見事にはまっている。原作は未読なのですが、人気になった理由がこの一冊でわかった気がします。

玄米せんせいの弁当箱

食文化のありがたさを身をもって教えてくれる

玄米せんせいの弁当箱 魚戸おさむ 北原雅紀
マウナケア
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このタイトルにこの表紙だと、弁当を扱う食マンガと思われがち。確かに食マンガであり弁当ネタも多く出てはきます。ただ、私はむしろ教育的な部分が大きい作品だと思うんです。主役は國木田大学農学部のちょっとかわった講師・結城玄米。この人、授業にぬか床を持ちこむは、大学に勝手に畑は作るは、やることなすことマイペース。ですがその正体は食文化史のエキスパート。「食べることは生きること」という信念に基づいて、一家で囲む食卓の大切さや、食べ物に対する感謝の気持ち、食文化のありがたさを身をもって教えてくれる、言動一致の人。そして彼の想いは関わる人たちにしっかりと受け継がれていきます。それは母親への気持ちの変化であったり、郷土料理の本質を深く知ることであったり。それを通して教え子たちが成長していく過程が感動的で、うらやましくもあります。押しつけがましくないのに、すっと人の心の中に入ってくる玄米先生の授業だったら、何度でも受けてみたいですね。私も農学部出身なので、もしこんな先生がいたら今ここでこの原稿を書いてはいなかったかも。

妻をめとらば

バブル絶頂期の若者の恋愛観を描く

妻をめとらば 柳沢きみお
マウナケア
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この作品の連載が始まったのはバブル絶頂期。そして主人公・高根沢八一は証券会社の営業マン。そんな華やかなりし時代の花形職業という浮ついた設定なのに、話はどんどん陰鬱になっていく。あの時代のサラリーマン漫画にしては異色の作品。しかしながら当時の若者の恋愛観がしっかり描かれていて、そんなところがヤングサラリーマンには人気だったと記憶しています。テーマはタイトル通りの理想の結婚相手探し。八一はさまざまなタイプの女性と付き合うのですが、うまくいかずに破局、の繰り返し。なぜダメなのか、その答えは読者にはよくわかるように描かれていて、逆に劇中の八一はそれに気づかないという、なんとももどかしいストーリーが延々と続きます。八一の恋愛下手っぷり、そして八一に関わる女性たちの行動。恋愛に対する価値観が変わりつつあった時代の中、まわりはそれに乗っかって成長していくのに、八一は変わることができない。いつの時代もこういう人っていますよね。こういう側面だけ見ると人間ってあまり変わっていないのかもなあ。30歳前に結婚で焦る、ってことはさすがになくなってきたけれども。