え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?(コミック)

コスプレをして働く人がフロアにいたら

え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?(コミック) 伊於 下城米雪 icchi
ゆゆゆ
ゆゆゆ

めちゃくちゃな仕事環境と業務量のなか、主人公の心を守ったコスプレの完成度はさっぱりわからないのだけど、作中でそのコスプレ&振る舞いに対し「解釈違い」と言われているのを見て、神は三物も四物も与えないのねと思ってしまった。 プログラミングも裁縫も、人間関係を円滑に進めるコツもよく知っている主人公。 さらにガチのコスプレ衣装姿を会社の人に見られても、普通に仕事ができる心の強さをもっている。 美容室で髪をサラサラにして、エステでお肌ツヤツヤにして、ネイルをサロンでバチッと決めて…が彼女にとってのコスプレらしい。 ものすごく優秀な人とは言え、職場のコスプレはどうなの?TPOは?と思ったものの、それなら和装ならOKかとふと疑問が湧いてきて。 さらにおかしな環境のせいで、おかしなことをし始めた(服装以外はおかしくない)なら、そもそも、おかしな環境を提供したブラック企業がおかしいわけで…と考え始め、混乱してきてしまった。 プログラマ向け塾がメインの舞台となるが、プログラミング知識は不要。 大変な状況にある方への処方箋というか予防薬というか、スカッとするというか、誰かと生活するうえでの心構えというか、そういうかんじの漫画だった。

え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?(コミック)

現場の苦しみを理解されない悲劇が減りますように #1巻応援

え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?(コミック) 伊於 下城米雪 icchi
兎来栄寿
兎来栄寿

一部の人は、タイトルを聞いただけで胃が痛くなりそうな小説のコミカライズ作品です。 現場のことなど何も解っていない上の決定によって、現場が大混乱に陥るのは古今東西どこにでもある話ですね。 「何事もその基は人です 人を得る国はさかんになり 人を失う国は亡びましょう」 とは『三国志』の周瑜公瑾の言葉ですが、会社にも同じことは言えるでしょう。人を大事にする会社は栄え、そうでない会社は亡びます。 本作も、主人公・佐藤愛が新社長のリストラによってタイトル通り解雇されてしまったことで亡びへの一途を辿っていきます。愛が1人で管理していたシステム運用に、後任の社員が「最低8人は必要です」と訴えるも新社長は「前は1人でできていたものがそんなに掛かるわけない、エンジニア特有の大げさな方便だ」とバッサリ切り捨てるさまは現実ならそら恐ろしい話ですが、お話として見る分には『アリとキリギリス』のキリギリスの末路を見ている気分です。音速で有給消化に走り転職していく人事の姿や愛を信頼していた同僚がこぞって辞めていく姿も滑稽で、この後どのように社が転覆していくか、社員なんていくらでも代わりの利く歯車だとしか思っていない経営者がどのように慌てふためくかは見所のひとつとなっています。 一方、会社を辞めた愛は新たに幼馴染のスタートアップにジョインし、そこで新たに「真のプログラマ塾」を開いて、迷える社会人たちを救済していきます。超ブラックな環境下で死ぬ気で努力し続けても報われなかった愛ですが、そこで培った知識と経験で多くの人を救っていくことになります。普遍的な悩みを持つ受講生たちへの実践的なアドバイスや、それによって彼らが生活を立て直し人生のハリを取り戻していくさまは、読んでいて心が軽やかになります。個人的に本作で最も好きなポイントはここです。 「通常業務でも手一杯なのに同じ人が同じ質問を何度もしてくる  質問するのは良いけどせめて少し感謝の言葉が欲しかった  どんなことでも『やってもらって当たり前』はダメ」 という節なども、強く頷き共感する人が多いところではないでしょうか。そして、それが何もビジネスの場だけでなく家庭においても大事なことなど、解ってはいても実践できていないという人も少なからずいることでしょう。 本書を読むことで日々の行動をほんの少しでも改善して、仕事や家庭で昨日より良い日を迎えられる人が増えたらいいなと思います。また、そうでなくともマンガを担当する伊於さんの上手さによって非常に読みやすく、物語としても純粋に楽しめるものになっているのでお薦めです。

ララのうた

記憶と生と死が紡ぐ幻想譚 #1巻応援

ララのうた 河野スイ
兎来栄寿
兎来栄寿

手触りが良いファンタジーだなぁ、と一読して感じました。絵柄的には綺麗で今感もあるのですが、その一方で作品全体がまとう雰囲気はどこかノスタルジックなものも漂います。 顕著なのは、1ページ目。 ″だが塵に帰す子らよ―― かぐわしい花々 ビロードのような大地は かの木陰へと導くための 見知らぬ先導だったのだ″ というナレーションと象徴的な一枚絵から始まるこの物語が始まっていくところは、古き良きファンタジー少女マンガの香を感じます。「ビロードのよう」という比喩表現が個人的には何とも落ち着きます。 作品の設定については、敢えてここでは説明しません。とりあえず1話の試し読みを読んでいただければと思います。詳しくは語りませんが、設定の妙は本作の美点です。 また、キャラクターはもちろんですが背景や小物が密に描き込まれているところも大きな長所として挙げられます。微細に彩られた世界は目で見ているだけでも楽しめますし、読んでいるひととき違う場所へ誘われる感覚に気持ち良く酔い痴れることができます。こういった、描き込みが細やかなファンタジーが私は大好物です。 現実とは違う理が流れる世界が提示され、想像力が刺激される。視覚的にも物語的にもファンタジーの愉しみに溢れた作品です。 1巻最後のような強い引きもあって、続きもどうなっていくのか気になります。

映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ ストーリーブック

映画を見てから読みました

映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ ストーリーブック サンエックス 主婦と生活社
酒チャビン
酒チャビン

マンガというか、絵があって、キャプション的な文章がついてるというもので、どちらかというと、字の多さ的にはけっこうある方なので、小さいお子さん向けに購入を検討されている親御さんは注意です。(そもそもすみっコたちは話せませんので、マンガにするとスラムダンクの山王戦の後半みたくならざるを得ず、その方がお子さんには理解が難しいかもしれません) 私は大人なので、難なく読破できました。 基本は映画があって、それを再構成したものなので、映画を見た自分としては特に目新しさはなかったのですが、映画を見て感じたジンワリとした感動を手元に何かしらの形で残しておきたく購入しました。たまに今でも見返しています。 終盤の、帰り道にふぁいぶがとかげののほほんとした顔から何かを感じ取ってしまうシーンと、その夜にふぁいぶがとかげの宝箱をぶちまけてしまうシーンはいつ見てもほのぼの泣けてきます。 再構成のレベルも総じて高く「映画を見逃してしまったけれどもDVDを買うほどでもないんだよな、レンタルも返すのめんどくさいし・・・」という方は、こちらの本だけ読んでも十分余すところなく魅力を堪能することができると思います。 イノッチと本上まなみさんの音声が聞きたい方はごめんなさいDVDでお願いします。 ちなみにこの映画はすみっコぐらしの映画の第2弾なのですが、第1弾と比べると、人気のとかげをメインにしたり等、少し「すみっコスピリッツ」を忘れてるところがあるんじゃないかと感じてしまいました。ほんの少しですが。 第3弾があるようなので、ぜひとんかつメインでお願いしたいです。