ねこじまぐらし 猫と私と田代島の愉快な日常

猫の方が多い島での暮らし #1巻応援

ねこじまぐらし 猫と私と田代島の愉快な日常 木月けいこ
兎来栄寿
兎来栄寿

「猫島」というと一番有名なのは愛媛県大洲市の青島かもしれませんが、本作は宮城県の猫島である田代島での暮らしぶりを描いた実録4コママンガです。 数百年前より豊漁を呼ぶ神様の化身として大切にされてきたこと、また実務的にも害虫やトカゲやヘビなどを追い払ってくれる存在としてありがたがられ、人口60人弱の島に200匹ほどの猫が半野良状態で自由に過ごして棲んでいるという田代島。猫好きには堪らない楽園ですね。 規格外の体の大きさで大量の餌を貪るデカ男、 キャンプ場の女帝・ナナミちゃん、 突然変異で生まれた茶トラのそらくん、 人懐こくてかわいく島の内外の人間から優先しておやつやご飯をもらえるアイドル猫のほくろちゃん、 彼女にずっと付き従う女官のようにしておこぼれを貰うグレーさんetc... キャラの立った猫たちの日常がたまりません。 モフりたいのになかなかモフらせてくれない猫と少しずつ絆を結んで立派な膝上大好きちゃんになる様子や、生魚はそれほどでもなくとも焼き魚への圧倒的な執着心を見せる子たちに思わず破顔します。 作者の方は既に島からは離れてしまったそうで、恐らく描かれていない苦労も色々とあったこととは思うのですが、島で保護して家猫にしていた子たちと元気に暮らしておられるようで何よりです。 猫島への移住や暮らしぶりの方をもっと読んでみたい方は、前作『猫島に移住しました。』の方からお読みください。 猫島や兎島、いつか一度行ってみたいです。

メイクアップSENDAI 合冊版

仙台弁が正確すぎてもはや教科書だでば!

メイクアップSENDAI 合冊版 ゆうみ・えこ
たか
たか

今まで人生で読んだ漫画の中で一番仙台弁が正確で笑いながら感動してしまいました。すごすぎる…!実家には1年8カ月間帰って居ないので読んでてめちゃくちゃ元気出ました。 先日新刊ページを眺めてたらパンチしかない表紙とタイトルを見つけ即購入し読んでみたら大当たり。 私の中の「漫画に出てくる仙台弁のネイティブ度ランキング」では今までいがらしみきお先生の作品がいつも断トツ1位だったのですがそれを上回って来ました(2位は相澤いくえ先生のモディリアーニにお願い)。もはや宮城県のその辺で撮影した動画を観てるレベル! 一番笑ったのが「いずい」の伏線回収のとこ。ラブコメの真っ最中に回収されて予想外すぎて普通に吹き出してしまいました。 正直「目の中にまつ毛」はいずいのレベル超えてる気がするけどそんなことどうでもよくなる面白さ。 Windows95のペイントで塗ったのか?って感じの表紙に反して、本編の絵は王道女性漫画という感じでとても素敵。 2巻まで読み終わったときに「えっ…ここで終わりなの」と残念に思うほど面白かったです。 (宮城県民以外が読んで面白いかどうかはちょっと自信ない) ▼感動したポイント 「1話の1コマ目の風景」 開始0秒で仙台じゃん!!www新幹線が減速し始める頃に左側の窓から見えるやつじゃん!! 「佐々木さえらさんだスペ!?」 なんの疑問も感じたことなかったけど「だスペ」って面白過ぎるな。 「まあズまズ」 よく言うよねばあちゃんが。意味は知らない。 「ほいなぐ」 「ハイカラだっちゃなイや!?」 笑いしか出ない!好き! 「なあーに語ってんの」 ファーーー!!言うわ!これ。 「とーちょーから来てけられんだォ」 ライティングが100点満点過ぎる。完璧にばあちゃんの声で脳内再生できた。 「ヤロッ子」 やろっこwwwリアルガチで15年ぶりくらいに聞いたし、漫画の中で見たのは初めてかも。 「んだがら」 「あらーやんだごどォ」 言うよね…!(ニッコリ) 「騙されったのか?」 うんうん、受動態は促音になるなる! 「んだすぺ?」 この1ワードだけで仙台力53万ある。 「んだ!こいなオマケのほーがいんだ!」 んだがらやァ。 【追記】 1話の「仙北担当希望」のところ。ルビが潰れて読めないけど読みは「せんぽく」のはず。キー局のアナが「けんぽく」という言い方に驚くというシーンを昔見て、「え…けんぽくって呼ばないの!?」とカルチャーショックを受けました。

連ちゃんパパ

これはもう一種のホラー漫画だ

連ちゃんパパ ありま猛
ピサ朗
ピサ朗

ギャンブルの恐怖、不快感、やるせなさ、人間の弱さ、クズさをこれでもかと描いていて、ネガティブな感情しか持てない最低の漫画なのだが、怖いほど、不快なほどむしろ優れたジャンルとなるホラー漫画と同じくギャンブル依存症の啓発漫画として見るならばこの酷さはむしろ絶賛すべき部分であろう…。 少々向こう見ずというか考えが浅いようには見えても、まともな人間だった主人公が些細な切っ掛けからパチンコに目覚め、完全な人間の屑に堕ちていく様は絶句するしかない。 恐るべきは「誰もがこう成り得る」というのを感じさせる生々しさで、登場するキャラクター全員パチンコを覚える前は、多かれ少なかれ善も悪も抱えた平凡な人間だという描かれ方なのだが、パチンコを覚えた途端善性を投げ捨て人間の悪性を恐るべき勢いで増大させていくのである。 そしてその被害にあうのは依存症者の財布だけでなく家庭そのもの、要は犠牲者は子供であるというやるせなさと生々しさが実に強烈、しかもそこまで身を崩しておきながら、ストーリー上の制裁的な部分が全く描かれず、ココもまた生々しい…。 普通の漫画なら破滅するか死の制裁か立ち直るか、そういう部分が入るがそんな救いも終わりも一切なく、最後のオチも恐怖しかないというか、もう勘弁してくれと言いたくなるその後が想像できる物で、ただただ一度ダメになった人間はダメなまま平気で生きていくという、そりゃそうだろうけど、そんな描かれ方を読まされるこっちの身にもなってくれと言いたくなる。 絵柄はファミリー4コマさながらの読みやすい物で、ストーリーも分かりやすく理解しやすいのだが、描かれている人間の醜さと屑さは理解を拒みたくなる強烈な物で、とにかく読んでいると精神を抉られる。 自分はここまでギャンブルにハマってないと思う人も多いだろうけど、些細な切っ掛けが有ればあっち側にいたというのを否定するには、でてくる人間が普通過ぎて、正直断言できないのがまた怖い。 ギャンブルの怖さを描くという点ではこれ以上ない作品で、恐怖と不快感はある種ホラー漫画やグロ漫画と同じく、マイナスだからこそ評価すべき部分でもあるが、それでも圧倒的な不快感は人に勧めるのを躊躇う物で、実際にパチンコ公営競技やガチャ、一番くじにハマってる人に見せても「自分はマシ」だと思わせかねないキャラクターの深刻な依存症っぷりはもう誰に見せるべき作品なのか分からない。 おススメはしないし、見て不快になってもしらないが、その強烈な内容と読みやすさの両立という点では、漫画としては相当に上手さを感じさせる作品ではある。

パーラー栄通り【合冊版】

連ちゃんパパ、先に読むか?後に読むか?

パーラー栄通り【合冊版】 ありま猛
野愛
野愛

兄の死をきっかけに実家のパチンコ屋を継いだ大吉が周囲の人達のためにあれやこれやと奮闘するほのぼのパチンコ漫画です。 怠惰なバイトや厄介なお客さん、訳ありな男女など…ちょっと危なげな人やハプニングは尽きないけれど、大吉のお節介によってめでたしめでたし。というストーリーがほとんどです。 お客さん目線でのサービスを常に考え、トラブルを起こす客には毅然とした対応をし、従業員の幸せも大切にする。 大吉は強引だったりお節介すぎるところはあるけれど、経営者としても人間としても素敵な人だなあと感じました。 しかし脳裏によぎる連ちゃんパパ。 ほのぼの絵柄なのに連ちゃんパパがよぎって笑顔を疑ってしまうし、嫁も子どもも幸せそうなのに裏切られるのではと思ってしまうし、何か事件が起こるたび今度こそダメだと思ってしまうのです。 パーラーさかえみたいな良心的なお店で打ってたら連ちゃんパパもあんなことにはならなかったのでしょうか。いやたぶん関係ないですね。 物事にはいろんな側面があるのだなあ、と改めて実感しました。 連ちゃんパパを履修してるかしてないかによって印象がだいぶ変わる漫画だと思います。 できればパーラー栄通りを読んでから連ちゃんパパを読んだ人の感想を知りたいです。

連ちゃんパパ【合冊版】

予想以上に登場人物全員クズでたまげた

連ちゃんパパ【合冊版】 ありま猛
六文銭
六文銭

話題になっていたので、読んでみたが色んな意味でたまげました。 まがりなりにも主人公は高校教師であったにも関わらず、 嫁さんがパチンコで借金をし、挙げ句失踪してからの堕ちっぷりがすんごい。 本人もパチンコにハマって~くらいの情報だったのだが、読んでいくうちに、もう人間としてどうなの?というくらいの堕ちかたは、空中きりもみ降下してドブの中という感じ。 ただ思いつくまま、欲のまま生きている。 嫁さんの行動もよくわからない。 ある時は、すべてを捨てて逃げ出すのに、そのまま舌の根も乾かぬうちに子供が大事みたいな素振りもする。 主人公も嫁も、まともそうに見えるから、そのギャップが逆にすごい。 真顔でクズな感じは、一周回ってホラーに近かったす。 ふりまわされる息子がホントに可愛そうだなぁと思いました。 そんな息子以外の登場人物全員がクズなのですが、1人だけ、そう1人だけまともな人がいます。 借金取りの金融屋です。 仕事はまともなじゃないし、風体もまるっきりヤクザのそれなのですが、クズ親以上に主人公の息子を気にかけたり(昔、この金融屋も同じ境遇だったから共感しての行動。これもまた泣ける。)人情深い行動をして、ひたすらこの漫画の癒やしでした。 口や粗暴は悪いですが、ここぞという時に、ちゃんと助けてくれる感じ、好きですね。 最後の最後まで、良い人なのも良かったです。 しかし、この良い人には…名前が…ないのです! (この漫画の本当に恐ろしいのは、人間がパチンコにハマって堕ちることよりも、こういうところなんじゃないか?) 思わず何回も読んだり、ネットでも調べましたが、名前が「金融屋」以外ないっ…。 クズにしか名前がつかない世界線なのか?とさえ思いました。 全般的に胸糞悪い展開が続きますが、こんな人生もあるのかと社会見学のつもりで読むと非常に面白い作品だと思います。 俗称パチンカスの末路は、存外こういう感じなのかもですね。