起きてください、草壁さん

睡魔にプレゼン。勝てる気がしない戦い。

起きてください、草壁さん 秋★枝
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

土曜日の朝寝を満喫する草壁さんを起こそうと、学臣は毎週、様々な趣向を凝らす。しかし草壁さんの睡魔には通用せず、逆に同じ布団に誘われて一緒に寝るはめになる。 学臣は毎週、ものすごく手の込んだ仕掛けを用意して、草壁さんの気を引き、覚醒させ、デートに連れ出そうとする。そのネタのバリエーションは幅広く、面白い。 時に知的興味に、また時に羞恥心に働きかけ、ロジカルかと思えば時に情緒に訴える彼のプレゼンは、草壁さんも、読者も飽きさせない。 なのに。 それでも草壁さんは、起きてはくれない。 草壁さんの最終兵器は、学臣を容易に屈服させる。 その最終兵器「一緒に寝る」は、学臣にとって敗北であるはずなのに、学臣に幸福感を与えてしまうという点において、誰も不幸にしない、究極兵器である。卑怯だ。だがそれがいい。 果たして彼は、一度でも草壁さんに勝てるのか、よしんば勝てずとも、2巻を通して、学臣のネタは枯渇しないのか……。女の子の寝室で尖ったネタと豆知識を繰り広げる、良質なバラエティ漫画を、お試しあれ。 【教えてください】 2巻真ん中あたりで終わった後、ちょこっとキャラが変わった、ダイジェスト版みたいなのが始まるんですが、これ何ですかね? だんだん違うネタになっていって、これはこれでいいのですが、説明がないんです……。

Wizard’s Soul

嫌われても、泣いても、私は勝つ。

Wizard’s Soul 秋★枝
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

父の借金返済の為、世界的カードゲームの大会に出る一ノ瀬まなか。母譲りの「不快な」戦い方で、恋も友情も捨てる覚悟で戦いに臨む、まだ中学生のまなかは、戦いの果てに何を見出すのか……。 母の命を繋ぐ為に必死でゲームに強くなった幼少期、そして今は家族を守る為……。中学生のまなかが背負う荷物は、重すぎる。 それに耐えるように、試合中のまなかはいつでも無表情。それが彼女の試合の、異様な緊張感の演出になっていて、息苦しい。 まなかの戦術は「パーミッション」と呼ばれる、相手の行動を阻害するもの。それだけでもいやらしいのに、彼女はプレイに神経戦を持ち込み、相手を陥れる。これがハマる瞬間の、相手が「何も出来ずに呆然と見送る」絶望感が気持ち良い。 楽しくプレイするプレイヤーには嫌われる覚悟のまなかだったが、意外とプレイヤー達は、猛者であればあるほど、まなかを放ってはおかない。そして戦いの合間に、思いがけず人に好かれ、ガードが緩み感涙するまなかに、こちらも涙を誘われる。 このゲーム自体が嫌いだ、と思っているまなかは、次々と出会う猛者達の、様々な「好き」の形を見ることで、抑圧していた自分の心と少しずつ向かい合う。 この作品、例えば何らかの競技者で「自分は才能はあるが、競技への愛情が不足している」と悩んでいる人に届いて欲しい。まなかの心の確かめ方から、新たな気付きを得られるかもしれない。

煩悩寺

オトナの秘密基地、煩悩寺。

煩悩寺 秋★枝
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

小山田君の部屋は、ヘンテコグッズでいっぱい!恋に仕事に疲れた小沢さんは、今日も彼の部屋でダンボール箱を開ける。中身に驚き、笑って飲んで元気になれるこの部屋、通称「煩悩寺」で、今日は何して遊ぼうか? 小山田、小沢と小山田の友人・島本の3人は、部屋にあるグッズで遊んだり、それをネタに笑い転げたりと、あまり社会人っぽくない遊びに興じる(酒は飲む)。その日の遊びは、開封する段ボール箱任せ!という博打感を楽しむ、彼らの力の抜け具合がいい。 煩悩寺にあるグッズはとにかく悪趣味、煩悩丸出しで、くだらないものが多い。しかしそれらは裏を返せば、欲望に忠実で、隠し事がないということ。小山田の基本ウェルカムな性格もあって、小沢にとって煩悩寺は、素の自分のままでいられる、寛げる場所のようだ。こんな秘密基地、私も欲しい。 失恋の痛手や仕事のストレスを癒してくれる煩悩寺は、小沢にとって、次第に大切な存在になってゆく。そしてそんな場を創り出す「変人な善人」小山田との関係も……。 煩悩寺のグッズ達をゲラゲラ笑いながら遊び、受け入れる小沢は、島本に言わせれば「素質あり」。部屋の主との相性はいいんじゃないの?ということで、いつも楽しそうな息のあった二人の関係を、島本と一緒にいじりながら眺めていたい、そんなお話。

年下の先輩ちゃんには負けたくない

「敬語」を巡る甘酸っぱい攻防戦!

年下の先輩ちゃんには負けたくない なめたけ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

先輩には敬語を使いたい大学生・坂上良太郎に、「年下なのでタメ口で」と迫る高校生の先輩・山下かをり。バイト先での「敬語」を巡る攻防が、今日も静かに繰り広げられる……。 先輩であるかをりは、高校生なのにやたらと仕事のできる、頼りになる存在。助けられてばかりの坂上は、気後れしてつい、色々遠慮してしまう。一方かをりは、そんな彼をからかうように、「敬語禁止!」などと言っては坂上に、打ち解けることを要求する。 クールに坂上を手玉に取るかをりと、年下の彼女にどうしても敵わない坂上。この構図、ちょっと『からかい上手の高木さん』っぽいと思いません? さらに二人と共に仕事をしつつ、二人の仲を(主に坂上の方を)いじってくる、女子高生の若菜と真中のおかげで、二人の仲がじわじわ進展していく……ようでいかない感じが、もどかしくも楽しい。 ホームセンターが舞台なので、コンビニやスーパーではなかなかお目にかかれない商品と、それにまつわる顧客対応の模様なども目新しい。結構特殊な商品知識が問われる場所なんですね……。 遅々として進まない二人の先を見たいと願うよりは、いつまでも二人でああでもない、こうでもないと駆け引きして、拗らせる様子を眺めていたい。その先に少しでも進展があるといいな……という感じで楽しみたい漫画。 クールなかをりの静かな笑顔、マジ天使!

ネコと鴎の王冠(クローネ)

『キツネと熊の王冠(クローネ)』のレビュー

ネコと鴎の王冠(クローネ) 中村哲也
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

「狐と熊亭」は店内の醸造タンクから直にビールを提供する珍しい酒場。経営するのは元気で気さくな親方のマヤと、穏やかな大男・代表取締役のニルス。マヤはニルスが好きだけど……。 『キツネと熊の王冠(クローネ)』は、中村哲也先生の「王冠シリーズ」の第2作目。 最初にお伝えしたいのは、前作『ネコと鴎の王冠』が好きだった方は、読み進めていけばちゃんと前作の世界と繋がっていくので、安心して読んでいただきたい、ということ。 この巻の前半は新キャラクターの二人のお話。新たに醸造所を構えるための準備や店の広報、看板作りなど、ビール造り以外の話にページを費やしながら、マヤがニルスへの恋心を募らせていく様子が描かれる。最初はキツい感じに見えたマヤが、だんだん可愛く見えてくる不思議。 途中、しっかりと休日の過ごし方も描かれ、さらに互いに相手を休ませようと気遣う場面が随所にあり、ドイツの人たちのワークライフバランスについては、ここでもきっちり描かれている。 後半、新醸造所での新作ビール造りの工程は、恐らくビール造りを知る人には楽しい場面だろう。そして夏祭り出店のために周囲が盛り上がり、協力する様は、すでにここから祭りの高揚感をもたらしてくれる。 さらに前作『ネコと鴎の王冠』の登場人物たちとの繋がりが現れ、彼らの再登場に一気に世界が広がり、楽しくなる。 さあ、夏祭り本番は……? マヤとニルスのコンビが創る、賑やかでいて寛げるビール空間をこちらも楽しみつつ、二人の恋愛が成立するのかどうか、目が離せない、そんな漫画。 そしてアンナ。 アンナですよ……。 アンナ祭りがあります。 アンナファンはお楽しみに!

ネコと鴎の王冠(クローネ)

『ネコと鴎の王冠(クローネ)』のレビュー

ネコと鴎の王冠(クローネ) 中村哲也
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

二年ぶりにドイツに帰国した、ビール職人を目指す玖郎と、彼を空港で待つ、自身もビール職人のアンナ。二人は手を取り歩き出す。新たな“自分達の一杯”を造るために……。 『ネコと鴎の王冠(クローネ)』は、中村哲也先生の「王冠シリーズ」の第1作目。 まず全編に渡って、ドイツビールを含めた歴史あるドイツ文化に目を奪われる。ビールはピルスナーしか知らない日本人としては、ドイツビールの多様さには驚かされる。季節感や料理との合わせ方についても、作中で言及がある。 それら多様なビールは、家族経営に近い小規模の醸造所によって生み出され、地域で消費されてきた長い歴史がある。そんな醸造所で遊び育った玖郎とアンナは、伝統を継ぎながらも親方の理解のもと、新たなビール造りにチャレンジしていく。このような「歴史のアップデート」が豊かなビール文化を生み出している、と思うと、彼らの頑張りにワクワクしてくる。 しかし、根を詰めがちな仕事人間の玖郎を、周囲は心配し諫める。ドイツの職人は、ワークライフバランスにうるさいようで、作中のドイツの人々の意外な力の抜け具合から、日本人の私たちが学ぶことは多い。 ドイツの文化、休日の過ごし方、誰かと支え合うこと、そして玖郎とアンナの恋の行方を追いかけながら、ビール造りの世界を知ることができる漫画。 あとアンナは可愛くてもう…もう……。 (参考作品としては『もやしもん』8巻のオクトーバーフェストは必見。最近の作品だと『琥珀の夢で酔いましょう』などどうでしょう)

ひとりぼっちの○○生活

コミュ障女子のトモダチ作戦!

ひとりぼっちの○○生活 カツヲ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

たった一人の友達に、絶交されちゃう! 仲直りの条件、それは 「クラス全員と友達になること」 親友と同じ学校に行けなかった新中学一年生の「一里ぼっち」。極度のコミュ障の彼女に、親友は友達作りミッションを与えた。最初に声をかけたのはちょっと怖そうな......。 「友達になってください」の一言がなかなか言えずに行動がおかしくなる「ぼっち」にヤキモキし、勇気を振り絞った「ぼっち」をホッとしながら見ていると、自分の中のコミュ障を呼び起こされつつ感情移入してしまう。 基本女の子達の笑えるやりとりで進行する、テンポのいいコメディだか、その中には友達一人作ろうとするたびに、様々な事情から来るドラマがあって、ひとつひとつが切なくて泣ける。 少しずつ増えていく友達たちが5巻あたりで集合すると、ものすごい感慨があるので、そこまで頑張って読むと幸せになること間違いなし! カバーや扉から可愛いトーンづかいまで、徹底して女子中学生っぽい空間を演出、こちらの脳内をカワイイ雰囲気に染めてくれる。 たくさんの笑いの中に、友達へと踏み込む大変さを思い出しながらほろっときてしまう、外見からは意外なほど心に響く作品。

三ツ星カラーズ

クソガキ共よ、上野を遊べ!

三ツ星カラーズ カツヲ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

わたし達、「カラーズ」。 小学生だけど、上野の街を悪から守る! ●泣き虫リーダー・結衣(レッド) ●明るい全力バカ・さっちゃん(イエロー) ●残酷な頭脳派・琴葉(ブルー) 今日も3人は上野恩賜公園にある秘密のアジトで作戦会議。今日のミッションは……? 上野を遊ぶカラーズ達は愛らしさ満点だけれど、遠慮ない言動で年長者達を翻弄し、面白いけれど危険球のネタを投げ続ける、警官の斎藤に言わせれば「クソガキ共」。 でも翻弄される年長者達も彼女らを温かく受け流し、遊びに乗ってやり、さらに進んで面白冒険ネタを提供するなど、子供達を見守る眼差しが平和で優しい。 『ひとりぼっちの〇〇生活』の四コマとは違う自由なコマ割りの中で、3人の配置にグラフィック的な趣向が凝らされており、スタイリッシュですらある。何ならアングラ路上パフォーマンス的な面白さもある。子供達にこの発想力を与えたカツヲ先生は神。 また、瞬間を切り取ったコマ送りのような表現がテンポよく、動きを感じさせる。 広大な上野恩賜公園とアメ横の迷路空間を、元気に駆け回る無邪気な小悪魔集団「カラーズ」に、こちらも翻弄されたくなる! 次巻第7巻は2019年10月26日発売!