最強の詩

ジャンプスポーツマンガ史に名を刻む最高最強の王道 #1巻応援

最強の詩 宮田大介
兎来栄寿
兎来栄寿

「『週刊少年ジャンプ』史上最高のスポーツマンガ」 と言ったら、あなたは何を想像するでしょうか? 『侍ジャイアンツ』、『アストロ球団』、『プレイボール』、『キャプテン翼』、『スラムダンク』、『超機動暴発蹴球野郎 リベロの武田』、『ペナントレース やまだたいちの奇蹟』、『テニスの王子様』、『ホイッスル!』、『ライジングインパクト』、『アイシールド21』、『Mr.FULLSWING』、『黒子のバスケ』、『ハイキュー!!』、『火ノ丸相撲』、『背すじをピン!と〜鹿高競技ダンス部へようこそ〜』etc... 上記以外にもいろいろな作品が思い浮かぶことでしょう。 この『最強の詩』は、それら超名作ジャンプスポーツマンガに確実に連なっていく物語です。 『テニスの王子様』、『アイシールド21』、『黒子のバスケ』、『ハイキュー!』など近年で2500万部を超えるような特大ヒットを果たしたジャンプスポーツマンガの主人公は、共通して背が低いという特徴が挙げられます。スポーツにおいてはフィジカル面で劣るというのは明確な弱点ですが、しかしそんな弱さを抱えた主人公が誰にも負けないパフォーマンスを発揮するからこそカタルシスが生まれます。 しかし、この『最強の詩』の主人公・金山は近年のそういった流れにおいては異端な、恵まれた体格から生まれる(タイトル通り「最強」の)フィジカルを持った主人公です。ただし、本作で描かれるラグビーというスポーツに関してはまったくのど素人という、いわば桜木花道のようなタイプです。 ただ、この金山の無双っぷりが非常に爽快極まりありません。それは従来の『ジャンプ』スポーツマンガではあまりなかった快感です。飛び抜けた才能はあっても、それだけでその競技に精通する猛者には通じない。故に努力して強くなる。それが正道です。しかし、金山はアマゾンの奥地から突然出てきたナトゥレーザのように、田舎から出てきて持ち前のフィジカルだけで最初から日本代表クラスの選手と互角以上に渡り合っていきます。 「完璧な一団(パーフェクト・スカッド)」という、U-15ラグビーW杯優勝チームのメンバーが本作において非常に重要かつ魅力的なキャラクターとなっているのですが、彼ら相手に金山がどこまでやれるのか。何ならその先まで行けてしまうのか。ひたすらにワクワクします。 努力せずに強くなるのは近年の主人公のトレンドとも言えますが、この無双状態は『ジャンプ』で言えばあたかも藤原佐為を宿したヒカルが、名人の子を倒して名だたるプロ棋士相手にどこまで戦えるのかドキドキするような感覚です。 一方で、弱い者が歯を食いしばって立ち上がり強者に対峙して成長するストーリーはサブキャラクターの方に用意されており、そちらはしっかりと濃厚な王道を堪能させてくれます。 選手はもちろん監督にも非常に味があり、ラグビーを全然知らなくてもまったく問題なく楽しめる作品です。 1話を読んで「最高の王道が来た」と感じさせてくれて、毎週読むたびに盤石に良さを積み重ねて行っています。 『ジャンプ+』はおよそ旧来の『ジャンプ』らしくない作品も読切を含めて多数載っているのが特色ですが、逆にこれ以上なく本誌に連載されていてもおかしくない王道スポーツマンガが来てしまいました。 1巻分読めば、この作品の1000万部を余裕で超えていくであろう面白さを感じていただけるでしょう。 そして、未来には「『最強の詩』を読んでラグビーを始めました」という子が日本代表として活躍してくれることでしょう。それくらいのパワー漲る作品です。

とりま民宿やどり的な!

ギャルがついに女将に

とりま民宿やどり的な! 安藤優
六文銭
六文銭

ギャル漫画を追い続けている私ですが、ついに女将になったと聞いてすっとんできました。 読んだ率直な感想、うーむ良いギャルという感じ。 主人公は1人暮らしのマンションが火事になり、友人の叔母が経営する民宿に泊まることになる。その女将が上述のギャル。 圧倒的なコミュ力の高さで主人公の懐に入ってきて・・・と、ここまではよくあるギャル漫画の展開なのですが、このギャル、実は元ギャルなだけで、妙齢(30代)の女性。 ここがポイント。 どちらかというと姉や母親に近い存在で、ギャル特有の謎の包容力で主人公を癒やしていきます。 もちろん恋愛っぽい流れもあるのですが、年の差もあってか簡単にはいかず、時に友人、時に良き相談相手(主人公は家庭環境や大学生活がうまくいってない)っぽい存在で、それがハートフルな展開。 ただのラブコメにはない家族愛的な側面がみえてきて、これが何とも良いギャルという感想につながりました。 また、ギャルもに過去に何かあったような含みがあり、今後明らかになるかと思うと、それも楽しみです。 職業的に、医者だったり(「ギャル医者 あやっぺ」)カフェ店員だったり(「喫茶店にギャルがいる」)、そして今回は女将と、あらゆるところに、進出してくるギャル。 留まることをしらないギャルの新たな地平を感じました。