星のラブドール

もしも子供に「オナホールって何?」と言われたら

星のラブドール ぴのきみまる
兎来栄寿
兎来栄寿

あなたは何と答えるでしょうか。 主人公の初等科の少年・はるひとが、クラスメイトのじゅんちゃんに「オナホールって何?」と訊ねるところからこの物語は始まります。 表紙からして、非常にファンシーな色彩と絵柄で、キャンディや星が舞い、犬が笑い、クマのぬいぐるみが置かれている中で、よくよく見ればローターやブラジャーとパンティが散在。中表紙にも、表紙と同じクマのぬいぐるみとローターとパンティが。目次にはタヌキやバイブも追加。 でも、考えてみればパンティだって可愛さを追求して作られているものですし、ローターもバイブもピンクなのはある種の可愛さを指向しているからかもしれません。つまり、可愛いが敷き詰められた表紙や中表紙や目次と言えるでしょう。 本作の見所は、そんな前面に押し出された可愛さが溢れる中で、ラブドールのダミィに無垢な少年が恋をしながら性的に教育されていくところです。 まだ年端もいかないはるひとにとっては、「ぬるぬるローション」は回復アイテムに(語感もポーションみたいですしね)、光るバイブは武器に見えてしまいます(動くのはカッコいいですしね)。 子供用に得られる情報が制限されたスマートフォンを握りしめながら放たれる 「″ラブ″は″愛″で″ドール″は″人形″… 愛の人形… 愛の人形 すてきじゃないか!」 や、 「″せいし″が作れるようになったら一番にダミィにプレゼントしよう…」 など、純粋無垢なはるひとの言葉には、ダミィと同じように笑いが溢れてしまいます。しかしながら、根源的な部分に立ち返ればなぜそういったことを「おかしい」と思ってしまうのか。新たなる生命を誕生させる営みは神秘的で尊いものではないのか。 「恥ずかしい」という人間だけが持つ感情は、二足歩行を始めるようになったのと共に発達しヒトの生殖行動にまつわることは隠すのが自然となったと言われています。ほとんどの人がその営みの下で誕生している筈なのに、社会道徳的にはそれを忌避させるのが自然という矛盾は、色々な歪みを生みながら今日まで至っています。 はるひとのピュアな眼差しには、笑いをもたらすと共に普段は封じ込めている問いや真理を剥き出しにする力があります。 「シュールな笑いを誘う作品」や「性癖を捻じ曲げられる作品」といった見方もあるかもしれませんが、丁寧に誠実に大切なテーマに取り組んでいる作品であると思います。

君の筆を折りたい

すごく現代的な絵描きの話

君の筆を折りたい 河原シノ
Nano
Nano

1巻読了。 SNSで絵を描いている高校生の話。 絵や文など創作物を書いてネットに投稿し、反応を得る。オタク界隈ならさほど珍しい事ではないはず。 私も学生時代から創作しては投稿してました。といっても私はフォロワーが多い訳でもバズった経験もないです。ですが少なからず評価は頂いてて、頻繁にやり取りするネットの友達もいたりして。佐竹と近しい環境にはいたかなと思います。 いつか佐竹のように突然バズってフォロワーが増えたらどうなるんだろう…と想像しました。絶対調子に乗るだろうなあと…高校生なら尚更。でもそれで離れて行ってしまう人たちもいるんだろうな、とすごく淋しくなりました。 絵の仕事が欲しい、バズりたい、フォロワーがたくさん欲しい、全部共感できます。一度膨大な数の評価をされたら以前までの評価じゃ満足できない、それもすごく分かる。前作はこんなに反応来てるのに、今回のはあんまりだな…って、めちゃくちゃあるあるなんですよね。 1巻は小春先輩はリス丸さんなのか?とまだ疑念で終わるんですが、小春先輩が佐竹をどうしたいのか、この物語はどう終着するのか、すごく気になります。 創作している人は絶対共感の嵐だと思う。