プロテカマンガの感想・レビュー14件「5億年ボタン」の原作と快楽みんなのトニオちゃん 菅原そうたstarstarstarstarstar_border阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ)斎藤環もそう寄稿しているけれど、3DCGのオブジェクトを使った漫画なので、「絵の巧さ」が即ち構図に集約される。そして、それが端的に現れているのが有名なミームの5億年ボタンの元ネタ「アルバイト」。 この漫画は基本的に、最初に示される哲学的な話題(『ドラえもん』のひみつ道具みたいなネタの一つ程度の意味だけど)の提起や会話、構図まで大変「やかましい」(フルカラーなのもそれを助長する)漫画だけれど、「アルバイト」の謎の空間に於ける贅沢なコマの使い方はそれと対比的でかなり印象に残るし、それが人間的な喜悲劇(記憶が無いならどんな苦心も功績も無意味だし、100万円で分かりきってる苦痛を選ぶ愚かしさ、記憶の無いプロセスを知るとそれを勿体無く感じる、5億年の苦悩を奪われたような感覚など)を示唆している。 基本エログロナンセンスな作品だけれど「5億年ボタン」の元ネタが気になるような人は読んでみたらどうだろうか?『退屈な月』という傑作短編特火点 花沢健吾starstarstarstarstarかしこ単行本が発売された時は自分もうら若き乙女だったので「ふ〜ん」みたいな感じであまり刺さらずに手放しちゃったんですけど、今になってむちゃくちゃ後悔してます。それというのもこれに収録されてる『退屈な月』という短編を折に触れて思い出すからです。自殺しようと屋上を訪れた男の子が同じく自殺しようとしてる女の子に出会う話で、どういう話の流れかは忘れましたが「どうせ死ぬならセックスしよう」とやりまくるんですよね。そしてラストは「明日も会おう」ということになり、2人とも死ぬのをやめるという…。屋上から見える月も綺麗でなんとも形容しがたい甘い気持ちになる話なんだよな〜。それぞれの話の後に作者コメントもあってそれも読み返したいんですよね。電子で買い直しますか。VRで彼女を作ろうルサンチマン 花沢健吾starstarstarstar_borderstar_borderかしこ※ネタバレを含むクチコミです。身近にいそうなひととなりの男主人公ボーイズ・オン・ザ・ラン 花沢健吾starstarstarstarstar_borderゆゆゆ花沢健吾先生の作品だなと思える、情けないところやら、いやらしいところを、そのまま見せてくれる男主人公。 とてもリアルで等身大。 でも行動力はやっぱりマンガだからこうでないとね!と思えるほど、驚きの頑張りを見せてくれるて、かっこいい。 『アイアムアヒーロー』もそうだったけど、主人公がかっこ悪いけど、すごくかっこよく見えてくる見せ方をしてくれる。 とはいえ、第一話のような展開は、ルッキズム云々いわれそうだから、今はもう難しいのかもしれない。時代は変化する。 第一巻あらすじのハッピー感が逆に不穏に思えてしまうけど、遅咲きの青春、いいじゃないのさ。 がんばれ、タニシくん。 ちなみに、テレクラはまだあるのかなと調べたら、衰退して今はツーショットダイヤル(ダイヤルQ2)がメインになり、そこでのサービス名に「テレクラ」の文字が含まれるという、摩訶不思議なことになっていた。 ここでも時代の変化を感じてしまった。 月子ちゃんはかわいいルサンチマン 花沢健吾starstarstarstarstar_borderゆゆゆおもしろいから読んでみなよと言われたのが、2016年くらい。借りて読んだら、たしかにおもしろかった。設定に目新しさはないけれど。 そう、VRとかMRとか、身近にたくさん出始めた2016年頃だと、設定に目新しさはなかった。 しかし、他の方も書いているように、「ルサンチマン」は2004年にコミックス化した漫画。 2000年代半ばはまだ、VRゴーグルやヘッドギアなんて、普通に生活していたら出会わない。 発行年を知ったあと、「目新しさはない」だなんて大きな勘違いだったと知った。 それこそ映画「バーバレラ」をありきたりの設定詰め合わせのB級映画と思ってしまうくらい、わかっていなかった。 2004年当時に読んだ人たちは、もっと強い衝撃を受けたと思う。 いったいどうして、ヘッドギアをつけて部屋の中を動き回って遊べて、さらに専用グローブで仮想空間の女の子に触れるギャルゲーだなんて、あの頃描けたんだろう。 そして主人公は、団塊ジュニア世代の悲哀を感じるおじさん(でもまだ30歳になっていない)。 なんだか清潔感を感じない見た目。 人を馬鹿にしていても自分も同類。 生活が生活故に、漏れ出てしまう感情。 誰とでもないけど、既視感を覚えてしまうおじさん。 でも、このおじさん(今考えるとまだ若手)がかっこよく見えるときがあるのだから、花沢健吾先生の漫画は不思議だ。 「おもしろいよ」と勧めてもらったとおり、おもしろくて楽しめる漫画。 もし読まれる際は、これが2004年当時の漫画だと念頭に入れて読んでいただけたら、いろいろなシーンで、よりくすっとできると思う。ゾンビアイアムアヒーロー 完全版 花沢健吾ユーカリ最初の方、主人公の日常を描いている部分で気持ち悪いと感じで読めない人も多いかも。女性なら特に。主人公を理解しようとしないで読んだ方がいいです。 で、主人公がどういう人なのかわかってきた辺りからゾンビが登場。 ゾンビなしの日常と、ゾンビが襲撃してくる躍動感あるシーンが絶妙です。漫画なんだけど映画を観ているようでした。 つまんないと思う人もたくさんいるかも知れません。でも奥の深い作品だと思います。リアルを捨ててアンリアルにルサンチマン 花沢健吾ユーカリリアル世界の女性を諦めて、恋愛ゲームのキャラにのめりこんで仮想世界に引き込まれてしまう男の物語。全く共感できなくてある意味尊敬。 アンリアルとリアル、それぞれの住人の描き方がエロくて、エグくて…絶妙にイタい。 情けない主人公がどこまで落ちて行くのか、この先どうなってしまうんだろうかと、見守る気持ちで読みました。 近未来ルサンチマン 花沢健吾名無し現実世界では、どうしようもない中年が仮想世界にハマっていく話。 恐らく10年後の中年童貞はこの漫画と同じような事になります。 すごく引き込まれるし、内容も面白い、細かいプログラマーの描写とかも好きなんだけど、なんか怖い。 そうです。 この漫画のような世界が実際に迫ってきているから。。。。 酷いアイアムアヒーロー 完全版 花沢健吾名無し完全版の265話が酷い、何も伏線回収していない。批判されすぎた作者がやけになって書いただけって感じ。 何も成長していない……真の最終回を読んでアイアムアヒーロー 完全版 花沢健吾ヒイロ※ネタバレを含むクチコミです。 花沢健吾のルーツ特火点 花沢健吾starstarstarstarstarひさぴよ絶版になっていた花沢健吾の短編集。プロテカとかいう自身で作られた版元から電子版が発売されたのは喜ばしい限りだ。 改めて読み返すと、処女作からずっと下ネタばかり描いてるなこの人は…笑 個人的には女版ボーイズ・オン・ザ・ランのような 「ラウンドガール」という話が一番好きだった。 今読むと「チンパー」などはアイアムアヒーローの超常的な力や、ネット掲示板を使ったストーリー表現を思わせるし、「なで☆シコ」は、まるで「たかが黄昏」の前日譚のような設定である。 花沢健吾作品を読んできた人間であれば、各作品のルーツのようなものが見えてくる一冊だ。これが「報われなかった傑作」だと…?ルサンチマン 花沢健吾nyae仮想空間で現実とは違う自分になって可愛い女の子と恋をするという題材的に、さほど古くなさそうと思って読んでいたら、連載開始が2004年と知ってたまげました。明らかに現在のVRよりも性能が(たぶん)先を行っている、かつ現実の未来に実現しそうなリアリティ。こういう、漫画家の圧倒的な発想力とそれをかたちにするパワーを見せつけられる漫画って、読んでよかったなーと思えます。 仮想現実が現実に干渉して現実の方を滅ぼすといったような展開は自分の想像の範疇を超えたのでなかなか理解に苦しみましたが、あのオチのつけ方はもっと想像できなかった。心でスタンディングオベーション。 一般的には仮想現実はあくまでも「仮」で、そこがどんなにパラダイスでも、現実に勝るものはないと考えるでしょうが、これを読むとそうとも限らないというか、どっちのほうが正しいとか決めるのもなんか違うような気持ちになりますね。 新装版の帯に「報われなかった傑作」と描かれていたそうですが、あまり売れなかったということですかね?そんな… VRが珍しくなくなったいまこそ読んでほしい作品です。花沢健吾作品の中で一番好きルサンチマン 花沢健吾starstarstarstarstar吉川きっちょむ(芸人)『アイアムアヒーロー』『ボーイズ・オン・ザ・ラン』が有名な花沢健吾だが、個人的には『ルサンチマン』が一番読むべき名作だと思っている。 2015年、町の印刷工場で働く主人公・拓郎、30歳が目前に迫りくるブサイクで、デブで、ハゲで、金もなく、童貞で・・と挙げればキリが無い情けないダメ男。誕生日についに現実の女を捨てVRギャルゲーに走るが、偶然にも手に取ったソフトは存在することすら怪しかった知る人ぞ知る都市伝説級のものだった・・。 実際に第一巻の発売が2004年で、約10年後の未来の姿として2015年を描いている今作。 現実の僕たちからしたら三年も前だがこれがなかなかにちょうどいい近未来感でたまらない。 過去に描かれた未来像って大好きなんですよね。 映画だと「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「her 世界でひとつの彼女」だったり漫画だと「ドラえもん」や「ぼくらのよあけ」だったり身近な部分を描く近未来SFものはだいたい好き。 あの未来に追いついた、追いつきたい、みたいな。 2004年当時はVRなんて想像だにしていなかったものが描かれているし、ゲームに合わせて全身で体感せきるようなボディスーツや、それに連動した電動のTENGAのようなものも出てきてワクワクするガジェット感! 今読めば普通にあるよねって感じだけどそれでもそこを描いた漫画はまだあまりないはず。 打ち切りだったこともあるだろうけど、壮大な内容ながら全4巻にぎゅっと詰まってるし、現実と仮想現実の対比、ゲームの中に引きこもる社会問題、恋愛模様などなどいろんな側面を描いている。 最終話も読者が好きなところをくすぐってくるけど、何もない、というのが最高。 現実、何かありそうで無いのがたまらなく現実でいいのだ。 人生で読むべきマンガの一つボーイズ・オン・ザ・ラン 花沢健吾名無しへたれ男どもにはたまらなく沁みる男の背中を描く傑作。 何歳だって青春だ。 もうすぐ三十路のダメサラリーマンが、恋をして浮かれ、裏切られて奪われて絶望のどん底へ突き落とされ、ダサくても不格好ながら泥臭く何度だって立ち上がって、意志を貫く。 その姿を見て沸かない男はいるだろうか? 震えない男はいるだろうか? いや、いない!! 傷を負ってこそ男は輝くってもんだ! これを読まないといくつになっても大人になんてなれません!!
斎藤環もそう寄稿しているけれど、3DCGのオブジェクトを使った漫画なので、「絵の巧さ」が即ち構図に集約される。そして、それが端的に現れているのが有名なミームの5億年ボタンの元ネタ「アルバイト」。 この漫画は基本的に、最初に示される哲学的な話題(『ドラえもん』のひみつ道具みたいなネタの一つ程度の意味だけど)の提起や会話、構図まで大変「やかましい」(フルカラーなのもそれを助長する)漫画だけれど、「アルバイト」の謎の空間に於ける贅沢なコマの使い方はそれと対比的でかなり印象に残るし、それが人間的な喜悲劇(記憶が無いならどんな苦心も功績も無意味だし、100万円で分かりきってる苦痛を選ぶ愚かしさ、記憶の無いプロセスを知るとそれを勿体無く感じる、5億年の苦悩を奪われたような感覚など)を示唆している。 基本エログロナンセンスな作品だけれど「5億年ボタン」の元ネタが気になるような人は読んでみたらどうだろうか?