mampuku
mampuku
1年以上前
 アフタヌーンで「金のひつじ」を連載中の尾崎かおり先生による過去の傑作。大人には相談できない秘密を抱えて、誰にも内緒の初恋をした11歳の夏。強烈なノスタルジーに加え、逃避行のドキドキと背徳感、爽やかさと切なさが心地よい1冊です。 こんな象徴的な台詞がありました。 「どんな理由があっても…悪いことだとわかってても それしかできないときって」 「他にどうしたら──どうしたらよかったんだよ!?」  周りより大人びて見えていても少女はどうしようもなくまだ子供で、その「重荷」は小さな肩に背負うにはあまりにも大きくて、そんな彼女の力になりたいと願う少年もまた何もできない子供でしかなくて…  幼い彼らは大人の力を借りなければ生きていけないけれど、彼らの中にはたしかに守りたい世界があって、でもそれって紛れもない「愛」そのものなんですよね。愛という確かな意思によって突き動かされた物語であるからこそ、彼らの努力も涙も旅の結末も、儚くも美しく感動的なのではないでしょうか。それがたとえ子供故に浅はかで、拙い足取りだったとしても。  小学校高学年のこの時期ってなかなか自分の素直な気持ちが自覚できなかったり、思ってても言えなかったりしたものでした。けれど勇気をもって一歩踏み越えて行動した先にはまったく違う世界が広がっていて、そこから得られる高揚と不安それこそがまさしく冒険のワクワクに他ならないわけです。異世界ファンタジーでも得られないほどのドキドキで感情を揺さぶられる、少年少女たちが精いっぱいの冒険をする話がたまらなく大好きなのです。  「四月は君の嘘」とか好きな人にも薦めたいですね。
名無し
1年以上前
主人公山井善治郎は昔異世界に駆け落ちした異世界の王族の子孫だが、そんなこと知らずに大卒後ブラック企業の残業でつかれた日々を送る毎日。 そして大戦で女性王族一人だけとなった大国の女王アウラは、その血に時空魔法の魔力を宿していて、血統魔法の為にも出産は絶対の義務とはいえ、男尊女卑傾向の強い文化から下手な婿候補を迎えると、戦争を終えて間もない国が更に荒廃することを憂い、最低限「国内貴族と関係の無い婿」理想を言えば「毎日後宮で女遊びに耽り政治に興味を持たない婿」、要はヒモ男を求めて駆け落ちした王族の子孫を異世界から召喚するのだが、 主人公は「ブラック企業で疲れて積極的に働く気無し」「女性の好みは巨乳の美人」「でも無駄飯ぐらいと言われない程度には仕事したい」そして「現代人レベルの男女同権思想」という 「時空魔法の血統」「現代人知識」が、おまけでしかないレベルの超優良物件で、電化製品をお供に婿入りして最高の夫婦となり国家運営の様々な困難を乗り越え、時には異世界の発想や知識から国の文化や発展に影響を及ぼしていくという物。 web版も書籍版も基本はこの流れで、途中からは大きく流れが異なるが漫画版は書籍版を基にしたストーリーを展開、取捨選択はされているが概ね忠実なストーリーであり、作画上の漫画版最大の特徴は「キャラデザにおける目の重要性」である。 書籍版の挿絵は「戦乱の最中における大国の舵取りを行い、勝者の席に付き、時には戦士たちに舐められない程度に鍛えている」女性としてはデザインは正解なのだが「現代人の若者が一目惚れして異世界で結婚しようとする」とするには目つきが厳しく、説得力が薄いというか、「女戦士」「女王」という部分が前面に出ていた物で、巻が進む毎に目から険が取れていったのだが、 この漫画版のデザインは、「国の為、時に厳しく処断を下すこともあるが、優秀で多くの部下や国民から敬愛される女王」という感じで、書籍版の挿絵と違い、最初から目が優しくなっていて「一目ぼれするほどの巨乳美人」という部分が前面に出ている。 このため小説と漫画という違い以上に物語にとっつきやすくなっている。 しかし当たり前だが小説で挿絵は限定的に使われるが、漫画ではそういうわけにもいかず、異文化の風景を描くのが大変なのが見て取れる。 南大陸と北大陸では南大陸は魔法中心国家という設定で、主人公が召喚されたのは南大陸だが、いわゆる我々の想像するヨーロッパ世界の風景に近いのは北大陸で、南大陸は科学が遅れている(ガラスが存在せず灯火も油皿中心等)ので背景や小物一つとってもそういう文化を意識した物を描かねばならず、苦労が察せられる。 描かれる内政で主人公の知識チート的な場面は有るには有るが、実際の所主人公もそこまで専門的知識は無いし、異なる世界からの視点や発想、社会人経験がブレイクスルーとなる場面の方が多く、長い目での確かな発展が感じられたり内政物としても中々見応えがある。