終末世界百合アンソロジー

「百合」は終末世界を自由にする

終末世界百合アンソロジー 一迅社アンソロジー
あうしぃ@カワイイマンガ
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終末世界は「二人」の関係を強化する。 多くの人が死に絶えたり、滅亡が身近にあったりすれば、どうしても隣の人が大切になる。人は一人でも生きていけるが、会話をする相手がいて初めて心が動く。二人という最小単位から「物語」が生まれる。 描かれるのは、死の影が濃い終末世界。何故人は生きて、ただ意味もなく死んでいくのか……そんな思考に陥りやすい状況だが、様々に生きる女性二人の物語達はとても自由だ。それは「百合」という枠組が「生殖」や「社会秩序」という枷から自由だからかもしれない。 「百合」は困難と絶望の終末世界を自由にする。 ●『introduction』(しろし先生)…地上採掘団に加わりながら本を求めて外に出たい女性と、彼女を見つめる女性。 ●『海は何色』(結川カズノ先生)…外の世界の海を夢見る管理官は無気力な女給の秘密に触れる。 ●『SPUTNIK』(吐兎モノロブ先生)…遺伝子操作で生み出された新人類の二人はロストテクノロジーを求めて荒野を駆ける。 ●『Touch me if you can』(田口囁一先生)…一人生き残った少女と都市管理AIと、発見してしまったセクサロイドのボディ。 ●『卵の殻を破らねば』(岡ぱや先生)…学園都市に暮らす優秀な二人は、優秀すぎた故にある真実を見てしまう。 ●『チュウ虎シャングリラ』(くわばらたもつ先生)…汚染が広がる世界で敵対する二つのグループ。代表二人の決闘に皆沸き立つが……。 ●『トワイライトにおやすみ』(tsuke先生)…永い時を生き、信仰を集める聖女は、自分に好意を寄せる少女にあるお願いをする。

旅とごはんと終末世界

メイド服ロボ×義手犬、出会いの旅

旅とごはんと終末世界 文ノ梛
あうしぃ@カワイイマンガ
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自己を形作っているのは、それまでに出会った人々なのかもしれない。それが失われる事を「輪郭が失われる」と表現するこの作品、かなり深くて優しい作品である事は保証します。 メイド服を着た少女型の機械生命体・蘇芳。AIより人に近い、自立した思考を持ち学習する彼女は、自分を作った設計士=ご主人様を探すべく、犬のミュートと共に旅をする。人語を話し、機械の義手を持つミュートは頼れる存在。蘇芳の成長を見守ります。 旅をするのは、多くの人が死んだばかりの終末世界。残された文明は高度だが、維持が間に合わず、かなり崩壊している。そんな中で印象的なのは、ごはん大好きな二人の食事。 食料調達から調理まで、食事は蘇芳の担当。ミュートも感心する腕前で作られる料理は、旅の途中で出会う人達にも振る舞われます。 出会う人達の様々な事情。ひと月ほどの間に出会ったほんの少しの人達は、ご主人様しか知らなかった蘇芳に人との繋がりと思い出を与えてくれる。一方、見守るミュートに去来する思いは……? 3巻の間にしっとりとした世界観と様々な思索の種が埋め込まれ、蘇芳とミュートの物語もこれ以上ないくらい切なく温かく、充実の一作でした。

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