しあわせ鳥見んぐ

バードウォッチングと距離感 #1巻応援

しあわせ鳥見んぐ わらびもちきなこ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

『秋山さんのとりライフ』というマンガを読んでから、鳥撮影が私の趣味に加わりました。↓ここで書いたレンズが大活躍です。 https://manba.co.jp/topics/25011 昨年の秋から今年の春までの間、デカいカメラ片手に近所の公園などををふらついていたのですが、気をつけて見てみると意外と沢山の種類の鳥に出会えます。 『しあわせ鳥見んぐ』は東北地方で見られる様々な鳥が紹介されていますが、関東の私が最近見て覚えた種類も複数登場して、「そうそう、そこカワイイよね〜」と同意しながら楽しめました。 個性に悩む美大生女子は、鳥に詳しい女子大生とその親友、鳥撮影する写真科の女子と共に、鳥見=バードウォッチングに出かける。身近にこんなに鳥がいるんだ!という驚き、愛らしさに心奪われる様子、世界が広がる様子にワクワクする。 そして一番心に残るのは、鳥との距離感の話。私もフィールドで、鳥を脅かさずに様子を見せてもらうのに苦心して結局全然上手くいかなかったのを思い出しました。 鳥を見る時、実は鳥に見られている。 鳥にも隣の人にも、共に在るために配慮する優しい鳥見マンガに、これからも教えを乞いたいと思います。

女の体をゆるすまで

女の体を生きる苦しみを思う #完結応援

女の体をゆるすまで ペス山ポピー
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

怒りに打ち震える。女性の体を生きる事の理不尽に、冷静さを失いそうになる。私は男性だが、ここに描かれる作者が受けた理不尽は、私の「男性性」に憎しみを向けさせるのに充分だ。酷すぎる。 アシスタント先の漫画家男性から性的ハラスメントを受けた恐怖に立ち向かうところから始まる本作。読み進める程に様々なハラスメント・暴力が、幼少時代から一つ一つ描かれる。 そこに作者の、曖昧さもありつつはっきりと女性らしさを好まない「Xジェンダー」についてが描かれ、それは女性の体を抱える絶望をより深める。生き辛かっただろうその人生の中で、心を病み、大切な人に辛く当たり大切にできなかったという後悔も、メンタル疾患を抱える私には共感できる部分が大きい。 描かれる男性は様々だ。ネジが飛んでしまっている危険な人物を、社会はどうすれば良いのだろうか。また親友だった少年によるハラスメントは、「男が主導して性的行為をしなければ」という、男性によくあるジェンダー規範が根底にあったのかもしれない。 一方で作者は、加害する男は実はちっぽけな存在、と看破する。その事は作者が繰り返し、出会った加害男性の姿(電車の隣に座ったおっさんまで)を描写してゆく事で明らかになってしまう。 男性の自尊心を満たす事でバランスを取る社会のために、作者が抱えた心の傷。それに女性編集者との対話で少しずつ気付き、言語化・作品化する困難に挑んだ作者の、人生を賭けた挑戦に感謝したい。

雨夜の月

聴覚障害者と心通わす百合 #1巻応援

雨夜の月 くずしろ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

女子高生が聴覚障害者のクラスメイトと心を通わせる過程を描くこの作品。ライトなノリの台詞の遣り取りの中に心の揺れを幾重にも描いて、ハッとさせられる事の多い内容となっています。 聴覚障害の描き方がステレオタイプで無く(参考文献の多さからも窺えるのですが)一人の「その人固有の障害という特性を持つ」女性のリアルが見えてくる様です。そしてその特性故に周囲と壁を作り、入学早々孤立する彼女に、懸命に、悩みながらもきちんと意思を確かめながら接する主人公。 彼女固有の障害についてストーリーの流れで分かりやすく描写されていて、孤独を深める理由が心に響く。それ故に真摯に関わってくる主人公に、彼女が少しずつ心を許す描写にも説得力が生まれるのです。 しかしここで、一つの謎が生まれます。 なぜ主人公は、彼女に関わろうとするのか。 正義感や同情ではない。ただ相手を知りたいと強く願う主人公の動機は……私は誰かと仲良くなりたいと思う時、実はその人に理由無く、目を惹かれてはいなかったかと思い返す。 彼女との出会い、習いに行っていたピアノの女性教師の結婚……そう、これは間違いなく、百合の物語なのです。

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