あうしぃ@カワイイマンガ2019/12/22シスコン兄達に、振り回される妹。唯一の肉親の祖母を亡くしたばかりの中学生の桜は、突如現れた四人の「兄」と暮らすことに。実は血縁は無いけれど、幼い頃に離散させられた「家族」を取り戻す為、桜の元に集まった四人。しかし彼らの愛情は、はっきり言ってメンドクサイ! 桜の身に何かあると、学校だろうと何だろうと、桜の元に四人揃って現れるイケメン兄達。却って騒ぎを起こす彼らに、桜が冷たく「帰って!」と言い放つまでが様式美。 しかし、天涯孤独になったと思っていた桜は、兄達の愛情の深さを知り、寂しさを忘れて、いつしか兄達を大切に思うようになる。 ……と、ここで終われば平和だったのだが……。 幼少時の微かな温かい記憶のせいか、女装趣味の長男が、桜は何故か気になって仕方がない。 一方、長男の方も、桜の亡き母への片恋と、人一倍強い桜への思い入れが、次第に別の感情に変わっていく。 兄妹としての愛情を守るか、それとも禁断の感情を肯定してしまうか、そしてそんな気持ちを、他の兄弟達は許すのか……。 女装とオカマ言葉で「男」としての本心をはぐらかす長男と、「女」としての気持ちを誤魔化せない桜が、すれ違いながら前進したり後退したりする様は、切なさ全開100%! 泣いても笑っても涙が溢れる桜を、兄弟達と一緒におろおろと見守りたい! 少女漫画の細やかさと、北欧・東欧イラストレーションのテイストが混在する、時計野はり先生の作画は愛らしさに満ちている。そしてキャラの美顔が常に崩れない!お兄ちゃんと一緒時計野はり3わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2019/12/20ひとり暮らしも、二人でみんなで!高校前の「ひだまり荘」でひとり暮らしする、新入生のゆの。同じ屋根の下の同級生、先輩達、翌年には後輩達と、女子だけの賑やかな日々に笑いっぱなし!ちょっと独特な「美術科」で、技を磨いて未来探し……は、もうちょっと先かも。 ……という感じで、基本はまったり進行の四コマコメディ。見所は何と言っても、六室あるひだまり荘の、同学年同士の「バディ」な関係。 例えば、ゆのの一つ上のヒロと沙英は、ほぼ「夫婦」。阿吽の呼吸で互いを補う関係は、「恋愛」を既に終わらせたような安心感を周囲に与える。 そんな先輩達に憧れるゆのと、同級生の宮子の関係は「持ちつ持たれつ」。宮子は生活面ではゆのに頼りっきりな反面、精神的には楽天的な性格で、自信がないゆのを支える。 一つ下のなずなと乃莉は「振り回し/され型」。乃莉は気弱ななずなのサポートに奮闘しながら、なずなの愛らしさに癒されて安心する。 様々な形の「バディ」が表現され、更には学年も飛び越えて、彼女達が支え合う日々のエピソードが少しずつ、積み上げられる。その先には、ひだまり荘でしか育めない、大きな友情が待っていて、節目節目に訪れる感慨に、思わず泣けてしまうのだ。 この先、ゆのと宮子に訪れる進学という試練が、どのようなエピソードとして彼女達の人生に積み重なるのか、乃莉・なずなと新入生の茉里と共に、見守りたい。 四コマ漫画として整理された背景は、連載当初から読みやすく、更に3、4巻辺りで現在の蒼樹うめ先生の、『魔法少女まどか☆マギカ』のキャラクターデザインや『微熱空間』で見られる、究極に可愛いキャラの完成形が発現する。 8巻から登場のぶっちゃけ系新入生・茉里ちゃんが可愛くて、今までにない展開が新鮮なので、沙英・ヒロ卒業後も安心の面白さ!ひだまりスケッチ蒼樹うめ4わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2019/12/18初心者姉弟の、微妙な距離感。親の再婚で姉弟になる、亜麻音と直耶。きょうだいに過度な期待を抱く二人だったが……「思ってたのと違う!」初対面の異性と同じ屋根の下で過ごすドキドキと、家族としての距離感の双方を往き来する、悩める高校二年生の物語。 ----- 思春期の二人にとって、同い年の異性と「姉弟になる」は一大事。相手の呼び方ひとつとっても、なかなか前進せず、二話も話が作れてしまう。 二人は基本いい子なので、家族になろうと努力しつつも、相手を異性として意識する心に悩み、ジタバタする。 姉弟として時を共有し、互いの優しさを知り、家族としての信頼を深めるにつれて、却って相手への「別の」感情も募らせてしまう様が切ない。 この二人のままならなさに、亜麻音の親友・郁乃も加わり、事態は複雑になる。 亜麻音の隣は自分のものと思っていた郁乃。どんなに「親友」を積み重ねても、ポッと現れた男に一瞬で攫われてしまうことに、思い至った時……。 それぞれの苦悩が、二巻までで一通り提示され、振り回す亜麻音に、大人しく振り回される直耶という構図も定着して、安定の面白さ。 ここまで純粋に、恋愛未満のドキドキだけで構成されている作品も、最近では珍しいのでは? 初々しいラブが足りない、とお悩みのあなたに、今イチオシの作品だ。 三巻は2019年12月26日発売。ハマるのは今からでも、遅くない!微熱空間蒼樹うめ1わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2019/12/15漫画で楽しむ坂道アップダウンこの漫画の見所は●熊本県漫画●運転好きのかわいい上司を愛でる●難しい道を楽しむ、などが挙げられます。私は熊本も、車も詳しくないのですが、「難しい道」の描き方に面白さを感じました。 例えば、坂道やカーブを「写真」で表現するのは、意外と難しいです。自分で撮った写真を人に見せても「それで?」と言われて終わってしまいます。面白い部分を、端的に表現できないのです。 私はこれは、写真という、縦横比が固定のメディアの限界なのかも、と思っています。強調したい部分以外が入り込み過ぎるので、主題のぼやけた写真になるのです。 そこでこの「漫画」作品の表現を見てみると、特徴的なのは、コマの縦横比が極端なことです。 例えばヘアピンカーブは、見開き四分の三を横長に三分割して、うねりの面白さをコマいっぱいに見せ、それ以外の部分をカットしています。 また、勾配や極細の路地は、極端に縦長のコマにクルマと道のみを強調し、苦しさや切迫感を演出します。 更に上り坂を表現するのに、画面を90度回転させ、重力に逆らうように車を上向きにするなど、様々な工夫で、地形の醍醐味だけを、コマの中に凝縮しています。 こうして、アップダウンのある光景を、実感をもって描き出しているこの作品は、地形マニア(特に坂道マニア)や酷道ファン(酷道も険道も出て来ませんが)などに、受け入れられるかもしれません。 言葉ではなく絵で「高低差マニア」をワクワクさせる作品として、今後も期待したいと思います! (熊本県漫画としてのレビューは、他の方に託します!)今日どこさん行くと?鹿子木灯5わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2019/12/13フルカラーで見るタナゴ&埼玉田園風景「ポンポン山美人姉妹」の姉・高校生のさとみは、タナゴオタクだった!胴長姿で水路に入っていくさとみに、妹のともえも、近所の純とはなこも、呆れ顔。オシャレもしたいけれど、まだまだ外遊びも楽しい!そんな女の子達の自然観察&アウトドア系夏休みを、フルカラーでどうぞ。 ----- 作者のせきはん(大森しんや)先生は、例えば古いバイクに跨る女の子の『グッバイエバーグリーン』、旧車のレストアを学ぶ女の子達の『ぜっしゃか!』など、ノスタルジーに消えてしまいそうな物を若い感性が再評価する、という物語を描かれる。 『のーどうでいず』の場合は、都市化を免れている田園風景を、若者が慈しみ楽しむ様子が瑞々しく描かれている。取り敢えず自然は豊かで、子供達も先のことを考えず、今を目一杯楽しんでいて、ゆるく楽しめる。 この作品が全編カラーで描かれているのは、恐らく、タナゴを描くためであろう。幾度か出てくるタナゴの、虹色の体色は本当に美しい(現実のタナゴも全く同じように美しい)。これを求めるさとみの感覚は、宝石探しのようなもの、なのかもしれない。 青空と緑の自然美に、女の子達の色とりどりの服がアクセントになっていて、単調にならない。色調を明るく、淡めに統一しているので、目に優しく、楽しげながらも、ちょっと色褪せたノスタルジーも感じられる。 優しい色彩の中を溌剌と遊ぶ女の子達に、こちらも元気を貰えるこの作品。1巻で止まっているのが勿体ない。 タナゴ釣りの仕掛けの、精緻な細工の話など出来ないだろうか。さいたま水族館やムサシトミヨの話なんかも見たい。 今後に期待しては、いけないだろうか……。のーどうでいずせきはん(大森しんや)4わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2019/12/11空想楽しむ東京史跡案内東京の城址を求めて街を彷徨う、女子高生のあゆりと美音。微かな歴史の痕跡から、古を空想して楽しむ東京散歩。あゆりと一緒に「え、城どこ?」って言いながら、画面を睨んで楽しもう! ----- 江戸城を始め、東京には沢山の城があったと伝えられているが、それらは建造物どころか、基礎の遺構すら殆ど残っていない。必然的に東京の城址巡りは、画面的にはただの公園や社寺、街歩きになってしまう。 漫画としては危機的なこの状況を、面白く救ってくれるのは、城址マニアの美音や教師の田辺に「何じゃそりゃ!」と突っ込む、素人のあゆりの存在。 私達はあゆりと一緒に、分からないなりに目を凝らして、微かな遺構を見出し、歴史上の人物に想いを馳せる。そして城址の知識を得、歴史の醍醐味に魅せられて、街を見る目が変わった時、私達はもう一度、二度と、この作品を見返したくなるのだ。 「あそこの城址って、どんなだっけ?」と。 街の風景に「歴史」という四次元軸を与えて、古くて新しい感性を吹き込むこの作品。考え方としては、『ちづかマップ』が「古地図」によって土地の時間軸を遡行していくのと相似している。 都市の地層を、城址のかつての姿が見えるまで、めくっていく。この作品は、そんな考古学的妄想の産物なのだ。 ハルタ印の美しい画面は、緻密に描き込まれつつ整理され、眺めていて気持ちいい。ちょっと荒んでいたあゆりの心が、優しそうでいて結構毒舌な美音との会話と新たな興味で、次第に落ち着いてゆく様子も、併せて見つめていたい。東京城址女子高生山田果苗4わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2019/12/09贖罪の歌、優しく響く。幸せになりたいけれども、それを得ることは許されない……そんな苦しみや罪の意識を抱えながらも、寄り添わずにはいられない人達を描いた、三つの物語。 羅川先生が過去の連載で駆使してきた、お気楽コメディに苦しみを隠す技を封印。剥き出しにして突き付けてくる状況と感情は、生々しく、痛々しい。 三つの季語に詩情を託し、様々な「救い」の形を謳い上げる、これらはそんな「贖罪の歌達」。目を背けなければ、最後には必ず、優しさに出会える。 ●葦の穂綿 ふと出会った男性に、心惹かれる。どこか壁のある彼の、向き合っている「罪」を知った時……。 とてつもなく重い物を背負った、赦しを得られない人に、それでも支えたいと思う人が、ほんのひと時、寄り添う話。 ●半夏生 カメラマンになりたい女と、女装したい男子高校生。秘密を共有するうち、惹かれ合い、一線を超えるも……。 やましさと、どうしようもなく惹かれる気持ちを、互いの閉塞感の中で育んでしまった二人の、精一杯のけじめのつけ方の話。 ●冬霞 ネグレクトされた幼い双子を、若い男が誘拐する。何かから逃げる男は、一方で双子には、真っ当な愛情を注ぐ。彼は一体何をしたいのか……。 大きな負の連鎖に連なる、男と双子。双子を真っ当にしようとする男の動機を知ると、そのクソッタレな状況と、それに抗して足掻く男、そして彼に愛情を貰って始めて、自らの感情を出すことを覚える双子に、本質的に幸せを求める人の性を見て、切なくなる。 この作品については名作『赤ちゃんと僕』を描いたことで得た物が、反映されているのかもしれない。虐待の実態など、極端な事例のようでいて、実際に報道で触れる痛ましい事件のリアリティがある。朝がまたくるから羅川真里茂3わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2019/12/09人の脆さとテニス愛の四重奏曲愛情を見失う者、支配しようとする者、失いたくなくて縋る者、恋と競技愛が混乱する者……。悩み足掻き、それでもテニスを「愛する」高校生達の、頂点を目指す三年間の物語。 ----- 常に世代のトップを争ってきた、滝田留宇衣と佐世古駿。精神面で佐世古駿に水をあけられ、ジュニア界から脱落した滝田留宇衣は、高校で出会った運動神経の鬼・伊出延久と共に、学生テニスの頂点を目指す。 物語は、この三人に、足の障害でテニスを断念した尚田ひなこを加えた四人が、様々に関わり、響き合う、切迫し熱気を帯びた四重奏の様相を呈する。 物語は、伊出延久の能天気さに覆われた、前向きコメディタッチで進行して行くが、話が進むにつれ四人は様々に、苦しみ崩れてゆく。 闘う動機を試合中に見失い、プロを目指したい気持ちが試合に反映されない滝田留宇衣。 しがらみから逃れる為に、自分のテニスにライバルの滝田と、好意を持つひなこのみを入れて孤立する佐世古駿。 プレイできない代償を、伊出と佐世古の両方を支えることに求め、自分の本心を見失う尚田ひなこ。 そして、常に明るい伊出延久も、テニスをする動機をひなこへの恋に置いてしまい、恋に躓くと立ち止まってしまう。 彼等が等しく見失うのは「テニスへの初期衝動」。この物語は、四人がそれぞれ苦しみながら、最終的に本当の愛と実力を手に入れる「歓喜の歌」なのである。 苦しみが深い分だけ、解放された時の晴れやかさと、きらめきに包まれた彼等の姿に、共に涙するほど心動かされる。 彼らの周りのチームメイト、指導者、ライバル達も、全員が苦しみを抱えており、その物語の解決を、ひとつひとつ丹念に描く。大小様々な物語にじっくり寄り添って、最後に皆で笑いたい、そんな作品だ。 ----- 加えて、作中で「車椅子テニス」をがっちりと取り上げて、困難の中でも、自分の心に真っ直ぐ向き合うことが描かれていて、心温まる。パラリンピック東京大会前に、『ブレードガール 片脚のランナー 』などと併せて読んでおきたい。新装版 しゃにむにGO羅川真里茂3わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2019/12/08西東京の四季を遊ぶ家族!ここは東京都あきる野市。タワマンもお台場もないけれど、ちょっと歩けば自然がいっぱい!何でも作れるけど仕事が暇な父たんと、今日は何して遊ぶのかな......(ちょっと面倒) ----- あきる野市は、都心から西にちょっと(?)離れた、そこそこの(?)ベッドタウン。新宿から拝島駅経由、JR五日市線でおよそ1時間。八王子や青梅に隣接する。秋川渓谷や丘陵地帯を擁し、武蔵五日市駅から三頭山(檜原都民の森)へのバスがあるなど、自然にとても近い街。 自然大好きな漫画家の「とうたん(父)」は、連載を打ち切られた時に、「家賃が安い」という「かあたん(母)」の後押しもあり、この地への移住を決める。その時お腹にいた子が13歳になり、10歳、4歳の三姉妹と、かしましくも楽しい「ちょい田舎暮らし」を楽しむ、そんなお話である。 とうたんのアウトドアスキルと好奇心に振り回されつつ、三者三様にとうたんとの遊びを楽しむ姉妹。特に中学生の長女は、簡単には父についてはいかないが、その歳なりの付き合い方で楽しませる父の懐の深さが優しい。 そしてとにかく食に関しては、都会では絶対に手に入らない食材が盛り沢山。調理に成功すればめっちゃ美味いし、多少失敗しても、それすらも楽しめる。「東京」でこんな食生活を送れるなんて、羨ましい。 とうたんは、アウトドア以外でも(暇なのか?)子供達の相手をよくする。そして子供達の写真などの記録をとりたがる。それはまるで、過ぎていく今を何とか繋ぎ止めようとするようで、一緒にセンチな気分になる。 大ゴマで、見開きで、展開される自然と子供達の光景に、息を飲む。そんな美しい自然と、程良く触れ合いながら生き生きと暮らしたいと願う人に贈られた「あきる野暮らし漫画」。憧れるし、あきる野に住みたくなる、そんな作品だ。東京のらぼう!関口太郎3わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2019/12/06神話の永遠、貴女と生きる。『麻衣の虫暮らし』に登場する二人の女性、来夏と美津羽の物語。本編でも出てくる、不思議な力(虫を集めたり等、自然に介入できる)を持つ美津羽と、自然を愛する来夏の出会いと未来について、不思議な神話が語られる。 三つの掌編が語られる。 初編では、やはり虫好きとして本編にも登場した、スナック店員の香織から、来夏とその周囲に起こったある事件が証言される。 それから、ナミウズムシの生態から来夏の体質が暗示される中編。続いて美津羽の誕生についての歴史と、来夏との出会い、そして互いの存在を支え合うようになる出来事が、終編で物語られる。 神話の時を生きてきた美津羽と、共に神話の時を生きようとする来夏。これは究極に尊い「神話百合」の物語である。麻衣の虫ぐらし 来夏と美津羽の特別編【電子書籍限定版】雨がっぱ少女群1わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2019/12/05虫が誘なう、夢現『麻衣の虫ぐらし』本編に未収録の、4話の短編集だか、テーマがなんとなく一貫している。本当に小さな、すこしふしぎ(SF)である。虫がたかる気味の悪さ、夢の世界、プチ時間跳躍など、虚実ないまぜな物語が語られる。 人間の他人の考えも、ましてや虫の考えなんて、分かるはずがない。そういうものに、対話無しで(たとえ嘘でも)触れるには、夢で出会ったり、空想に遊んだりしなければならない。 この作品集は、『麻衣の虫ぐらし』の大筋とは関わらないが、空想や夢から、ヒトや虫の内面に、たまたま触れてしまう物語を集めている。本編よりもちょっと不思議な面白さと切なさに、ぼんやりと浸っていたい掌編集だ。麻衣の虫ぐらし 未収録作品集【電子書籍限定版】雨がっぱ少女群1わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2019/12/04虫愛づる姫君に寄り添う日々死にゆく祖父を世話しながら祖父の有機農園を守る菜々子と、彼女を手伝いながら寄り添う無職の麻衣。昆虫の挿話に託して語られる、自然と人為、そして不思議な「虫愛づる姫君」達との縁の物語。 —— 菜々子は両親に裏切られ、祖父との絆を唯一の拠り所にして生きている。農業についても、自分の意思で始めたことではない。それ故か、いつも自信がなく、失うことに怯えている。 菜々子の麻衣に対する感情は、友情を飛び越えた強力なもの。依存や崇拝といった、ちょっと危なっかしい感情にも近い。 祖父が亡くなれば、身寄りがなくなる菜々子。祖父に菜々子を託された麻衣だが、距離感に悩み、挙句、菜々子を孤独にしてしまう。そして麻衣の選ぶ、菜々子との関係は……。 —— この作品は、二人の女性の関係性の物語と並行して、二つの「自然と人為」が描かれる。 一つは「有機農業」、もう一つは「自然保護」。 有機農業は、農薬等をなるべく使わない「自然への優しさ」を謳うが、その分労力は大きい。益虫を操り、害虫を殺す日々の営み故に、菜々子は益虫にものすごく優しい一方、害虫に対してはまさに「虫を殺す目」を向ける。菜々子は「益虫を愛づる姫君」である。 一方、麻衣が偶然知り合った来夏は、ヒメギフチョウや湿原を、ボランティアで保護する女性。彼女は自然を愛し、虫という虫に満遍なく愛を注ぐ「全ての虫を愛づる姫君」。また、来夏といつも共にいる美津羽は、簡単に昆虫を呼び寄せる特技を持つ「虫を愛で、共にある姫君」。 さらに、麻衣が出会う、スナックで働く香織は、虫と「食」(人間が食べる、虫が虫を食べる等)を嗜好する「虫食を愛づる姫君」。 様々な「虫愛」の形が提示され、彼女たちから語られる虫の性質と、人間の営みがリンクし、生きることについて考えさせられる。スローライフを描きながらも、「生の実感」の生々しさが常に残る作品である。 日々の営みの繰り返しから、ゆっくりと育てた大きな感情に、いつの間にか心動かされている。麻衣と菜々子が育む、じんわりとした優しさに浸っていたい。麻衣の虫ぐらし雨がっぱ少女群4わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2019/12/02百合の飴玉235粒、甘く切なく。実力派百合作家達が、お題に沿った1ページの百合漫画を描いていく「百合ドリル」シリーズ。同じお題に対して、各人様々な成分を配合してギュッと凝縮した、十人十色の百合表現。甘酸っぱかったり、ちょっと辛かったり、ひたすら甘ったるかったり……それぞれ魅惑的な味の飴玉のような掌編が、無印・応用編・難問編合計で235編。 あまりに濃厚なので、ページ数の割に読み進めるのに時間がかかる。ゆっくり読むもよし、時々引っ張り出してちょっと読むもよし。百合成分が不足してるな……という時に、すぐに補充できる、やっぱり飴玉アソートパックのような、おいしい作品集。 【無印】 基本的な百合のジャンルに沿ったお題。基本と言いつつ、すでに超濃厚。これだけでもしばらくは楽しめるが、そのうちもっと欲しくなる(何かやばいものを勧めているような気がしてきた……)計117編。 (内容)学生百合/同棲百合/姉妹百合/年の差百合/社会人百合/ファンタジー百合/幼なじみ百合/先輩×後輩百/最高に興奮する百合 【応用編】 1ページの漫画を元に、発想を広げた数ページ〜20ページ程度の漫画が描かれる。発想の広げ方が様々で面白いし、百合成分が広がっていく様は、濃厚なアロマオイルを部屋にミストで充満させているようで、豊かな気分になれる。計16編。 (内容)学生百合/同棲百合/姉妹百合/年の差百合/社会人百合/ファンタジー百合/幼なじみ百合/先輩×後輩百合/最高に興奮する百合 【難問編】 お題が難解になるも、テンションは全く変わらず、1ページに繰り出される百合は尊い。ただ、感情がより複雑になって、中毒性は強いかも(だからやばいものとかではなくて……)計102編。 (内容)学生百合/大人の百合/キスのある百合/吸血鬼百合/いけないとわかっているけど…な百合/本当にあった百合/バトル百合/となりのお姉さんとなにかする百合/ベッドにおける(※敷き布団も可)百合/未来の百合/後世に残したい尊き百合百合ドリル奥たまむし2わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2019/11/30一眼レフと「光」の世界(デジカメの話)11月30日は(オートフォーカス、以下AF)カメラの日。AF機構のカメラが登場した日です。 写真やカメラの漫画は多くありますが、こと最新のAFデジタルカメラとなると、扱う作品は意外と少なくなります。 ここからは『ルミナス=ブルー』に登場するカメラについて、推測してみたいと思います。 (物語の内容に関しては、sogor25さんのレビューをご覧下さい) 主人公の光(コウ)のカメラは、クラシカルな外見から、SONYのEマウントかと思われます(ミラーレスで軽いので、女性におすすめ)。レンズが短いので、恐らく単焦点の標準50mmf1.8。初心者は50mmの画角を覚えるべし、と言われる入門レンズ。機動性がいいので、光のようなスナップ派は、これをつけっぱなしで街に出るのが楽しいと思います。 また、単焦点レンズはズームレンズよりレンズの構成が単純で、画質が良いと言われます。シャープネス、ボケの表現は単焦点に分があり、光の写真のきらめき感は説得力があります。 一方、葉山先輩は、1巻の終わりで長くて白いレンズを使って、光と寧々を隠し撮りしています。あのレンズはキヤノンの望遠レンズ、通称白レンズと思われます。高価です。光が見て「すごいレンズ…」って言ってますね。 街撮りでは意外と望遠レンズが重宝します。かっこいい建造物、向こうに見える植栽の花など、広角や標準だと対象に寄りきれないのですが、望遠だと好きなように遠景を切り取ることができます。 被写体と近しい距離感で撮影する光。一方、被写体に無断で、ありのままの感情を撮ろうとする葉山先輩(寧々も勝手に撮られて怒ってましたね)。二人のスタンスの違いは、機材にしっかり現れていると思います。 ここまで、分かる範囲で『ルミナス=ブルー』に出てくるカメラのお話をしました。もし間違っているとか、こっちじゃないの?とか、その他カメラの話をしてくださる方いらっしゃれば、どうぞコメントください! ちなみに私はニコン派です。ルミナス=ブルー岩見樹代子5わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2019/11/29漫画で繋がる、拗らせた二人。秘めた同性愛を同人誌にぶつける清水真琴。父を見返すために漫画を描き、見失って描けなくなった前川茜。創作の動機も愛情の形も歪んだ二人の、繋がるような繋がらないような、絆の物語。 —— 拗らせながらも前向きに生きてきた清水の前に現れた前川は、拗らせ方が尋常ではない。清水は翻弄されるが、それでも前川を気にかける。 一方、清水を試すように距離を縮めたり、突き放したりする前川。 小悪魔女子の前川が抱く「病み」と、どうしようもない寂しさが、捻じ曲がって清水に向かうのが息苦しい。 彼女達を繋ぎ止めるのは「漫画創作」。過去に間違ったモチベーションで失敗した前川には、真っ直ぐに創作の楽しさを語る清水は苦しい存在。それでいて、自分の中にもあった創作の喜びを、思い出させてくれる存在でもある。 前川が自分の創作意欲を見出そうとするのを、清水は応援する。そして寄り添いながら、二人は思う。 「色恋で壊れるような関係など、いらない」 この想いは、例えば過去に、友情に恋愛を持ち込んで失敗したことのある人なら、分かるかもしれない。 大切な事との距離の取り方を致命的に間違えてきた、「未だ病み」の中にいる二人。それでも少しずつ時間を共有し、気持ちをぶつけ合ってきた彼女達は、今後、どのような絆を繋ぐのか。切ない気持ちを共有しながら、見守りたい。 (2巻までの感想) (創作の動機が歪んでいることを否定する意図はありません。本質的に創作の動機は属人的で歪んだものであり、だからこそ愛おしいものだと考えます)Still Sick灯4わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2019/11/27JSvsJK、魂のどつき愛!公園で出会った小学四年生の柚子森さんに、心奪われた女子高生のみみか。友達になるも、これは恋?変態?と揺れ動き、挙動不審のみみかに対して、常に無表情の柚子森さん。この二人、どうにかなるの、この先? —— 当初は、友達になれて舞い上がるみみかが、柚子森さんに過剰反応して赤面し、震え、発汗する変態的な画面が続く。柚子森さんと友情を結びたい一方で、恋情や欲情じみた感情が溢れ出すのを、何とか止めようとするみみかが、切なくて泣ける。 柚子森さんは大人びていて、家庭でも学校でも、つまらなそうにしている。しかし、みみかに対しては、次第に色々な感情を見せ始める。 絆が深まり、柚子森さんがとうとう気持ちをぶつける、その時の目力と、大粒の涙に、こちらも涙が溢れてしまいそうになる。 想いが生まれ、堪え、溢れ出し、どうしようもなく、相手にぶつける。そこから逃げ出せば、相手とすれ違うし、臆せず立ち向かえば、強い絆が生まれる。そういう場面を何度も描き、突きつけてくるこの作品。 大人も子供も関係ない。強い感情を持ってしまった者同士、拳(と書いてハート)を交えなければ、何も始まらない。 そう、恋をするなら、きちんと戦わなくてはいけないのだ。 ……そんな意外と熱い、年の差百合のお話。柚子森さん江島絵理4わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2019/11/23想い込め、花生ける日々。中途半端に終わった恋を引き摺る、OLの菊池。ふといざなわれた華道教室で、様々な想いを込めて花を生けることを学ぶ。折々に自分と向き合うように、季節を愛で、花に向かう一年の物語。 ----- 菊池は元気な女性だが、長く秘めた恋には、勇気を出せず身を引いてしまう。そんな彼女は華道に、自分を表現することや、誰かを思っての行為が相手に伝わる喜びを教わる。 大人になっても、傷ついていたり、精一杯な時にはつい、おろそかにしてしまう「自己表現」や「思いやり」の心は、お花の季節感や彩りに乗せて先生に教えられる。 そこから自分の気持ちに気付かされたり、懸念事項がスルリと解決するのが、とても心地よい。 派手な事件はないけれど、季節の風に日々の澱が洗われるような、清しい短編。 現在(2019年)『夜明けの図書館』という図書館司書の漫画を連載中の埜納タオ先生。美しいペンタッチと白場を活かしたレイアウトで生み出される、見開き単位の画面の美しさは、心に沁みる。華物語埜納タオ 槙佑子5わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2019/11/22「いい夫婦」になるために。11月22日はいい夫婦の日。夫婦と言われて私が思い出すのは、この連作集です。谷川史子先生の、夫婦にまつわる6つの連作+それとは別に短編一編の構成。 前の方のレビューの通り、この連作は「相手の気持ちに不安を持つ」話が多いです。最終的には、二人の関係はハッピーになるので、優しい読後感を得られるのですが、そこに至るには、皆ある工程を経なければなりませんでした。 それは、「気持ちを伝える」工程です。 簡単な事のようですが、ついうっかり忘れているな、と思う方、結構多いのでは?そんな方は、この連作集の各話で行われる、多種多様な「気持ちを伝える」やり方を見てから、ちゃんとパートナーに向き合ってみませんか?いい夫婦の日ですから……(2019年の11月22日に書きました) 追記:最後の短編ですが、谷川先生には数少ない女性の同性愛が描かれています。男性と結婚する人への悲恋なので百合好きに紹介するのは憚られるところではありますが、報われなくて、切ないけれどとても感動的なお話です。くらしのいずみ谷川史子2わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2019/11/21華道に生きる「道」を見つける専門学校いけばな芸術コースの学生達は、2年間でそれぞれ、花に関する職を見つけて羽ばたいていく。そんな中、頑張り屋の南侑生だけは、何かに迷っていた。彼女の進む道とは……? ----- 全3巻のうち2巻を使って、クラスの面々が躓き、悩み、それでも前を向いて、花を生けることと進路に取り組んでいく、群像劇が繰り広げられる。 専門学校や大学に通ったことのある人なら、クラスメイトの描写は、こんな適当な奴もいたなぁ、などとリアルに感じられるだろう。 花の仕事のリアルも描かれて面白く、立ち向かう生徒達の、元気でわちゃわちゃした雰囲気で進行していく1、2巻。 3巻になり、南が皆とは違う進路を選ぶと、次第に雰囲気が変わる。 人に道を示し、体現してみせる立場を目指す南。いつもドタバタしていた彼女が、次第に迷いを捨て、凛とした雰囲気を醸し出すようになると、途端に画面が引き締まる。 更に高め合う存在に出会うと、交わす言葉の志の高さと共に、見開きがぐんぐん詩的になっていく。 感性はあれど不器用な人が、人より少し遠回りでも、確かな「道」を歩き出すまでを紡いでいくこの作品。 特に3巻は、見開きが平安絵巻のように流麗!その美しさは連載中(2019年現在)の『夜明けの図書館』でも健在!百花日和埜納タオ 槙佑子1わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2019/11/20「調べ物」で市民の人生お手伝い!図書館のレファレンス・サービス、それは利用者の「知りたい事」を探すお手伝い。新米司書の葵ひなこは、日々様々な要求に応えるべく奮闘する。見つけた先に、利用者の喜びが待っているから! ----- 図書館にある書籍・資料は、文学から実用、科学から法律、児童書から専門書と多岐に渡る。そのため、図書館には様々な知識を求める人々が集まり、そこでは日々、思いがけず沢山の人生の物語が紡がれる。 苦しみ、切なさ、懐かしさ……多種多様な物語がレファレンス・サービスによって解決する時の、優しい着地と利用者の喜びには、とても感動させられる。 その一方で、利用者から得られる少ない情報、あやふやな記憶を頼りに、膨大な分類をしらみつぶしに当たっていく「レファレンスの苦労」を共に見てきた私達は、そこを乗り越えた司書達の達成感を、一緒に味わえる。 物語の爽やかな終局に似つかわしくない、ギリギリのジタバタっぷりを見せる司書達のあがき。その落差によって最上の「舞台裏漫画」となっている。 巻が進むと、図書館の社会問題への参画も描かれ、図書館の存在意義について、前向きな提言となっている。 図書館と図書館司書を知り、応援する作品として、最高に面白い! 2000年代に華道の作品を描かれた埜納タオ先生。白場が美しい、独特の凜とした画面は、当時から一貫している。最近流行りのギッチリ描き込まれた漫画に慣れた身としては、一周回って新しい!夜明けの図書館埜納タオ11わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2019/11/16きのこの世界、踏み込んでみる?📷農業大学で、「きのこ」等の菌類を研究する三枝教授の研究室に、何故か連れて来られた新入生の天谷。さあ、楽しいきのこ講座の始まりだ!……って、頼んでねぇよ! ----- 小学二年生の舞ちゃんにいざなわれて、素敵な紳士風の三枝教授から、半ば強引にきのこの知識をレクチャーされていく天谷。 教授と舞ちゃんのきのこ愛は熱烈で、天谷はとてもついていけない。でもそんな素人の彼が、細かく強烈なツッコミを入れることで、オタクのしょうもない拘りを笑いにしてくれるので、読んでいて飽きない。 同級生とのやりとりから、または生活の中から生まれた「きのこ」に対するよくある疑問が、三枝教授によって解説され、きのこの知識が増えるのも楽しい。 農大の描写は、例えば『もやしもん』(石川雅之先生)と同様に、普通の大学とは違う独自の文化が見られて、大学生活漫画としても今後、期待できるかも。 とかく分かりにくく、興味はあっても取っ掛かりのない「きのこ」の世界の入門書として、楽しく分かりやすく、何より「情報が正しい」、貴重な一冊となっている、と思う。 (1巻の感想。今後、野外で観察する回があることを望む!) ----- 最後に、一介のきのこ好きとして、参考文献の頻出人名を少しだけ紹介させて下さい。 ●伊沢正名…きのこ写真のパイオニア。古い図鑑は基本、この方の写真で構成されている。 ●大作晃一…白バックの、図鑑用きのこ写真撮影の技法を確立。近年の美しい図鑑はこの方の労力の賜物。 ●新井文彦…阿寒湖を中心に、きのこと、きのこのいる風景を撮影する写真家。ひたすらに美しい写真。 ●小宮山勝司…きのこ好きが集まるペンションを経営し、自身の名前で図鑑も出される程のきのこ通。 ●保坂健太郎…きのこが専門の、国立科学博物館の研究者。面白そうなきのこの本や企画には、この方がよく絡んでいる。 ●飯沢耕太郎…写真評論家として著名だが、きのこに関しては、きのこの文学や切手の蒐集家として有名。 ●堀博美…きのこライター。図鑑では得られないきのこ知識を網羅した『きのこる』は名著。三枝教授のすばらしき菌類学教室香日ゆら6わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2019/11/14退行世界の絶景&美食満喫家族!文明の断絶、野生の侵攻……変わり果てた世界に取り残された、父と小・中・高の三姉妹。どうやったら元に戻れる……いやそれより、どうやってここで生きていこう? ……と言いつつ、家族の他に誰もいないこの世界。どこに入っても、何をお借りしても自由!残された文明を遊ぶ家族は、基本楽しそうで、明るい。この自由感、例えば『地球の放課後』(吉富昭仁先生)と同等か、さらにゆるい。 父は「まずは食が大事!」と方針を定め、残された加工食品を費やしつつ、少しずつ野生からの食材調達を試みるが、次第に家族は、ある事に気付く。 「自然旨っ!」 娘達は、素材の味と父の調理技術で大地の恵みを満喫しながら、少しずつ新たな食材を求めて努力を始める。 それはすぐに上手くはいかないが、苦心と労力にはリアルが感じられ、少しずつ新たな挑戦が実る喜びも、共に感じられる。 そして家族が乗り出す世界は、文明の残骸に自然が侵食してきた退行世界。時が止まった寂しさと、巨大な文明を飲み込む自然の雄大さ。この魅力を理解するとしたら…… 恐らく、廃墟マニア。 荒廃した世界に圧倒される子供たちの小ささと、咎める者のない自由の中で躍動する、若い身体を交互に描写し、世界を生き生きと輝かせるこの作品。 絶望なんか追いやって、今を生きることを「ゆるく」満喫する家族と共に、退行世界を楽しみたい。 3巻までの感想。ゆるさば。関口太郎5わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2019/11/09子育て小学生が日本の家族観を揺さぶる母を亡くしたばかりの小学生・榎木拓也。彼の前には、泣いてばかりの弟、稔。母はなくても子育ては待ってくれない。家事に育児に忙殺され、苛立ち苦しむ拓也。それでも……やっぱり弟、可愛いかも。 —- ハートフルコメディというには、ちょっと息苦しく、それでも愛おしい作品である。 ほんの1、2歳の幼児にべったりで面倒を見る、思春期間近の小学生である拓也。子育てがうまくいかず、悩み、苛立つ彼の様子が、綺麗事を抜きに表現されるので、この作品で子育ての辛さに向き合うことになった読者の少女(そして私を含めた少年)は、ショックを受けたものである(昔話)。 家庭から目を外に向けると、拓也の前には、家庭や対人関係に苦しみ、傷ついた人達が現れ、捻じ曲がった言動を彼にぶつけてくる。 しかし拓也は、まっすぐさと優しさで彼らに接し、その捻じ曲がった心に気づかせて、本来の優しさを取り戻してやる。その優しい着地に私達は安堵しながらも、何か心を抉られたような痛みも同時に感じる。 家庭とは、性差とは、愛情とは……コメディに隠されて提示される問題意識は根深い。この作品を読んだ少女(私を含めた少年も)は、自分を支えている価値観や、甘く楽しい将来像を、激しく揺さぶられた。 2019年の今、この作品を読んでも、日本の家族観・性差の問題というのは、なかなか変わらない部分があるなぁ、と気付かされる。そういう意味で、1990年代のこの作品は今だに読まれる意味を持つし、この作品の問題意識を、新しいやり方で表現する漫画が、現れて欲しいと思う。 拓也の笑顔の向こうには幾千万の、年上・女(今作ではむしろ男)・母といった役割を押し付けられ、苦しんでいる人がいる。そういう人達のためにジェンダー論で戦う前に、まずはこの作品を読むことで、むやみに人を傷つけない、優しい解決を目指したい。赤ちゃんと僕羅川真里茂7わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2019/11/07本作の続きについて(2020.6.22追記あり)どうやら昨年(2018年)、続きが、著者のなめたけ先生による自費出版で出版された、ということのようです。 『歳下の先輩ちゃん2』というタイトルです。 pixivの先生のページで詳細を見ていただきたいのですが、 内容は……いいですよ〜! 彼ららしい着地で、いい終わり。 https://www.pixiv.net/member.php?id=22154672 (2020.6.22追記) Amazon kindleにて発売が始まったと、なめたけ先生からアナウンスがありました!やったぜ! https://twitter.com/nametakesantaro/status/1271098355771301888年下の先輩ちゃんには負けたくないなめたけ2わかる