あうしぃ@カワイイマンガ2021/08/20複雑な〈片想い〉のヴァリエーション『少女支配』『この愛を終わらせてくれないか』の筒井いつき先生の、別名義の短編集。別名義でも、特有の暗い感情、理解の及ばない暗部の表現は変わらない。 この短編集をやや強引に纏めるなら、〈片想い百合〉ではないかと思う。それは明らかにそう描かれている物から、ある意味での両片想い、素直になれないというレベルの物まで幅広いが、一方通行な残酷さがある。 そしてそこにある暗さ、陰湿さ、負の感情の強さが凄い。つつい先生の作品を一つ読み終わると、生きて帰って来たという謎の安堵が沸き起こる。 ●『お前は私の死んだ妹に似ている』…自分に劣等感を与えて死んだ妹と、瓜二つの後輩が出来た。懐く後輩と、妹を重ねる姉。 (巻末『dear my sister』はこちらの過去話) ●『ジャックポットに微笑んで』…容姿端麗で性格の悪い子の唯一の友達は、彼女を男との恋愛にけしかける。それは伸るか反るかの大博打。 ●『仮定法過去完了』…親友の結婚式。ネックレスをつけてやる手が震える。 ●『見ている』『また、見ている』…綺麗な先輩を見つめる。その視線に先輩は気づいた。 ※異性愛の影のある作品が多いが、男はそっちのけなので私は気にならなかった。ジャックポットに微笑んでつつい1わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/08/18四人それぞれの愛欲=支配の果て父親に虐待を受ける女子高生が、幼馴染三人と共謀して父親を殺害し、死体を隠蔽する事から始まる物語。四人それぞれの愛欲と、強い執着による狂いが痛々しい。 幼馴染の四人が抱く暗い感情。それを癒すために、それぞれの愛欲に依存してゆく様は、見ていて辛い。 男性とのインモラルな関係に惑溺してゆく二人に対して、とりわけ強い想いで結びつく二人はある男子を障害として、かえって純愛の度を強めている様に見える。 しかし問題は、四人とも愛・性・強い感情に囚われすぎている点にある。 愛情とか快楽とか、強すぎる物で人を支配しようとして、支配されている……そんな観点で見ると、四人の陥る闇の深淵は、実は私の足を少し踏み込んだ先にもあるように感じる。 殺人事件の解決、そして四人の関係性の終点に、救いは無い。想い合う二人の逃避行は二人の純愛の様に美しいが、その先に約束されているのは苦しく溺れるしかない暗い海だ。それでも純愛という支配から、逃れられない。 過去に恋を拗らせてしまったことのある人には、分かるかもしれない。こういう人間の昏さの為に、筒井いつき先生の作品はある。少女支配筒井いつき1わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/08/17文化系熱中!甲子園 #推しを3行で推す①夏と言えば甲子園!写真の全国大会「写真甲子園」に島の分校の写真部が挑む! ②北海道の広大な風景の中でままならぬ写真部の必死さ、審査の手厳しさなど熱い! ③写真のセオリーなど勉強になる反面、セオリーに閉じ籠らない事の大切さも描かれる。 #マンバ読書会 #最高の夏 #推しを3行で推す ★お暇なら★ 原作者の桐木憲一先生は『東京シャッターガール』でも写真甲子園を取材されている。とにかく慌ただしく厳しい写真甲子園は読んでいてハラハラするし、高校生らしい写真の完成度や様々な拙さがリアル。写真甲子園 シャッターガール moment桐木憲一 MUGENUP1わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/08/16辛辣系沖縄シュノーケリング #推しを3行で推す①沖縄でシュノーケリングに興じる中二女子達の夏。 ②考え無し女子×毒舌女子の遣り取りはカワイイ絵の割に辛辣だけど、漫才を見ているような笑いが。 ③沖縄の美しい海や魚と共にシュノーケリングの楽しさも、危険も描いていて充実している。 #マンバ読書会 #推しを3行で推す海色マーチミナミト7わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/08/15寄って撮って仲良くなる! #1巻応援慣れないうちは人物撮影って恥ずかしくて、それを拗らせてしまう気持ち分かるなぁ、と懐かしい気持ちになりました。 スマホで写真を撮るのが好きなロモと、一眼レフを持つが人を撮るのが苦手な硝子(れんず)。ロモが硝子にぐいぐい迫り、関係を構築しながら、インスタントカメラ好きな名月、モデル志望でスタイリストの腕があるめぐの女子四人で同好会設立。 四人それぞれの興味は、早速硝子がロモを撮影するくだりで上手く噛み合い始めます。今後、四人がどんな撮影を見せてくれるのか楽しみです。 硝子の心の変化は、ロモを撮影するスタイルに表れます。人物撮影でよく言われるのは、モデルとの心の距離感。友人になりたての二人が見せる撮影の試行錯誤は、技術に留まらない関係性の試行錯誤。硝子の心の動きに、私の中の陰キャが喜んでしまいます。 カワイイ絵と美しい光景。実在の場所をもじった舞台、写真やカメラの話題(硝子のカメラのメーカーにワイ狂喜乱舞)、さらにロモと硝子のフルネームまでネタは豊富。何より撮りたい写真への拘りがすでに見えて、メンバーそれぞれの成長が楽しみな作品でもあります。 カメラマニアとしては、スマホが優秀なのは認める。ぱち☆もいろみ
あうしぃ@カワイイマンガ2021/08/14また一つ凄い百合アンソロが #1巻応援『2DK、Gペン、目覚まし時計。』の大沢やよい先生が描かれているカバーイラストで、既に作業中のだらしなさやむさ苦しさとそこに咲く百合のニュアンスにむせるのです。 続く伊月クロ先生の巻頭イラストはストーリー性が強く、そこに込められた複数の物語を読み解こうと懸命になるともう何分経ってんだよ。 ●『私を推してよ日菜子さん!』くもすずめ先生の絵いいなぁ。男装コスの女子とメガネ絵師女子の力関係が意外そうでしっくり来る。前日にコピー本作るのはそんなに良くあるのか?作り方のリアリティよ。 ●『ウェルダンは待てない』よく聞くアフター焼肉。一瞬本当に百合?って思うけどコロッと騙された。ヨルモ先生お話上手い。『神絵師JKとOL腐女子』的なファンと先生の関係好きな方に。 ●『逆カプ地雷』ゆあま先生の、コメディタッチな同人作家同士百合。解釈違いで喧嘩するオタカップルってありそうで無かった?(かずまこを先生の『楽園まで、あと…』とか)心の底で通じ合うソウルメイトな二人は尊い。 ●『フソクフリ』めざし先生、絵は可愛いのに人物造形がエグい。目立ちたがりでかまってちゃんでウザい同人作家像は作家でなくても心に痛い。本当にダメな人にこそ、救いは欲しいですよねぇ。 ●『隣サークル主が元カノだったのですが…』好き合っていたのに別れた二人は同人作家同士として再開。二人の微妙に愛着が残っている描写、明るく描いているのにキュッと心を掴まれて、雨水汐先生の絵のタッチと相まって優しく心に残る一品。 ●『お嬢様、同人デビューです!』同人界隈にお嬢様をぶつけてきて、最後まで違和感ありまくりでそれが面白い!お嬢様は金銭感覚以外はすごく真っ当で愛せる存在……散田島子先生の発想力強い。 ●『さよなら私の星』ここで百合界のエグさ担当つつい先生。同人界隈で人付き合いをソツなくこなす人が、才能と無邪気さを併せ持った人と出会って自分の本質を突きつけられる、その抉り方がやはりエグくて堪らない。 ●『すきだから』最後は桐山はるか先生の美麗で愛らしい絵で綴られる、オタカップルの日常。〇〇に出てくるご飯再現!とか素敵すぎる。積み重ねと、変わらないもの。二人でいることが羨ましくなる。 ……とまぁ各作品の感想も長くなる程、どれ一つとして同じものは無いし、様々な物を感じられる充実した一冊でした。同人女百合アンソロジー一迅社アンソロジー
あうしぃ@カワイイマンガ2021/08/12ややずぼら優勢な #1巻応援いい加減な人が羨ましい。あなたこれちゃんとしてるの誰だか分かってる?と言いつつ憎めなくて何かと手を貸してしまう……そんな関係性をこの作品では、コミカルに楽しく描いています。 同じ会社の新卒・まじめちゃんと三年目のずぼら先輩。ずぼら先輩はとにかくだらしなくて、隣の部屋に住むまじめちゃんは何とか先輩をきちんとさせるべく、奮闘する。 百合マンガで例えると『2DK、Gペン、目覚まし時計。』の、奈々美ちゃんがかえちゃんを甲斐甲斐しくお世話するシーンだけをギュッと詰め込んだ感じ。ずぼら先輩に洗脳されつつ惹かれてしまうまじめちゃんがやや劣勢な感じですが、まじめちゃんにすっかり寄りかかり安心しているずぼら先輩の感情も愛らしい。 読む人は、どちらに感情移入するのだろう……かく言う私はまじめちゃんの気持ちが分かりつつ、部屋の中ではパンイチで過ごしたいずぼら先輩の気持ちもよく分かる、複雑な百合男子心なのでした。 (百合マンガだと『社畜さんと家出少女』とかも近い感じです)ずぼら先輩とまじめちゃん東385
あうしぃ@カワイイマンガ2021/08/11ままならぬ二人の銀塩生活 #1巻応援カメラ趣味には大きく二つの指向がある。一つは最新の機材で厳密な撮影を行う指向、もう一つはゆるさや味わいを求める指向。この作品の指向は、後者。 この作品に登場するのはフィルムカメラ。主人公が別れの間際に姉から貰ったのは、トイカメラと呼ばれる物。トイ=おもちゃだが、撮るのが簡単という訳では無い。普通のカメラに慣れていると戸惑う代物で、失敗も多く……というのは作中の通り。 ままならないこのカメラを託された高校生の妹は、入学の桜の下で美少女と出会う。 性格の明暗はあるものの、二人ともどこか不器用。二人の会話の拙さ、思いが言葉にならない感じは、もどかしいが自分の普段の会話を見ている気がする。 二人は撮る/撮られるの関係性を通じて仲をじんわりと深めていく。この二人にそれぞれの、離れて暮らしている姉を加えた四者の関係は、「離れている」事で色々な事が少しずつ繋がったり、分かったりするのが面白い。 それぞれが心に抱える「ままならなさ」と、フィルムカメラの微妙な間・もどかしさ・味わい・待つ楽しみなどが絡み合い、そのもどかしさがクセになるような、不思議で楽しい読み味だった。ぎんしお少々若鶏にこみ
あうしぃ@カワイイマンガ2021/08/08鉄仮面の下のバブみを夢見る #1巻応援女子高生と堅物OLの、初々しいお付き合いの様子が描かれる本作。二人はまだ緊張も解けないのに、女子高生はある欲望を持つ。それが「甘やかしたい=バブらせたい」。 鉄仮面OLの鎧塚さんに少しずつアタックするものの、愛らしい容姿の女子高生は逆に甘やかされたりして、そんなままならなさが続く……と思いきや鎧塚さんも少しずつデレ始め……というシーソーゲームに、最後まで目が離せない。 基本的には「上手くいかない」ところが面白い本作だが、鎧塚さんが不意に鉄仮面を捨て、甘えるシーンは胸がぎゅーっとなるぞ!鎧塚さんをバブらせたいあおと響1わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/08/07スパダリJSに一目惚れ #1巻応援新卒二年目のOLと小学五年生の物語、いわゆる「おねロリ」物なのですが、独特なのは小学生。 やたらと発育の良い(身長170cmくらい)彼女、さらに言動がいちいちカッコイイ!市民プールで介抱された時に、150cmも無いOLの多恵さんは、小五のまいちゃんに一目惚れします。 描かれるのは多恵さんの、大人としての葛藤とまいちゃんへの恋に揺れる様。なんで一目惚れってこんなに抗えないのだろう、という感覚を、多恵さんを見て思い出します。 そしてまいちゃんのカッコ良さも凄いのですが、小学生らしいあっけらかんとした感じ、拙いけど色々考えている感じなど、それもまたスパダリぶりに拍車をかけていて、惚れた多恵さんの気持ちが分かる。 現実では困難な「おねロリ」関係性に妙なリアリティと、とてつもないトキメキを付与して胸高鳴らせる本作、忘れかけた一目惚れを思い出したい方に。気をつけなよ、お姉さん。サスケ
あうしぃ@カワイイマンガ2021/08/06上手くいかない大人の女へ #1巻応援社会人多めの百合短編集。一番年下で大学生なので、全体的に大人の雰囲気。 描かれる人はみんなお化粧をきちんとしていて、大抵は対人スキルもある。それでもこんがらがって、時に乱れてしまう様子は、多くの大人の共感を得られるのではないか。 女性達それぞれの、上手くいかなさ。それはことさら異様なものではないので、自分事のように共感できたり、「こういう人いそう」という気がしたり。そんな人達が同じ「女性」に救われる物語に、ホッとする。 ●『麺面むすび』…コスメ大好きな女性は男ばかりの職場で消耗して、蕎麦屋の店員の女性に癒される。 ●『おそろそろい』…付き合う二人の女性は一緒の時間を求めてオンラインゲームを始める…しかし何故か片方の「お揃い好き」が加熱。 ●『風船カズラは今日も飛ばない』…元モデルの彼女にウェディングドレスを着せたいデザイナー。甲斐甲斐しく世話を焼く彼女の心は? ●『区域外閑談料』…彼女に振られた女性は、母校の大学で出会った子に「公衆電話から電話して」と告げる。 ●『フライングコスモ』…中学時代憧れていた、上品なあの子に大学で再会。地味な私をイメチェンして接近! ●『初嵐のつむぎ歌』…都会でお姉様との出会いが無く田舎に戻った女性と、農業体験で実家にいる純朴ドジっ子の出会い。趣味じゃ無い……。 ●『クラムジーコール』…モンスターデザイナー志望の女性、背景から抜擢!しかしリーダーの女性から迫られる。こいつがとんだナンパ女で……。麺面むすびヨドカワ3わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/08/01亡き恋人に、再び触れる春突然喪われた恋人に5年も囚われてしまった人は、恋人が残した日記を見つけてしまう。日記の空白と目の前に現れた人によって、亡き恋人の想いに向き合う物語となりそう。 恋人との思い出である春の光景が美しく、喪失感との落差が物凄い。 『伊勢さんと志摩さん』では明るい同居生活を綴ったトクヲツム先生。今作はのっけからかなり重い感情と不思議な物語があり、これは読み続けたい百合作品だ。春綴る、桜咲くこの部屋でトクヲツム1わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/08/01匿名で非現実な偏愛はグロテスク登場人物の「名前」は、キャラクターのイメージ形成の重要要素かもしれないが、例えば関係性の思考実験の様な作品では、その様なイメージは必要ないのかもしれない。 この『倒錯少女症候群』は、まさにその様な作品集である。 登場人物に固有の名前は無い。大抵はA子とB子の物語。キャラのイメージは絵で充分伝わる。名前を思い出す手間が無いと、思い入れは薄まるがかなり読みやすい。 そうして描かれる短編達は、AとBの関係があって、強く求め、踏み込み、反転してゆく非現実的世界が描かれる。 ①『貴女にすべてをささげると私の眼球はそういった。』は、眼球を舐めるというフェチの強さも凄いが、その先の「視覚を分け合う」に至る強い愛着と世界観についての哲学にやられる ②『ショウケースガール』は、家猫と思しき猫と飼い主の関係性と「外の世界」の秘密の話。飼い主らしき人の感情は、動物好きなら分かる? ③『シスタス』は、声の小さな気弱妹がしっかりした姉に依存する関係性。姉は妹の「声」をコントローラーで操作するが……関係性の変化は身体的特徴から。堕ちていく姉が愛らしい……。 ④『ブンレツ・ガール』は、分裂する病気に冒された子と彼女の側にいる親友の話。オリジナルとフェイクの恋と実存を巡る物語はどこまで行っても救いが無く、それでも自己を保つのか……と悲しくなる。 いずれも歪な関係性とグロテスクな愛着に至る時が、至高の瞬間の作品達だ。倒錯少女症候群shimazaki
あうしぃ@カワイイマンガ2021/07/31フェチで男を乗り越える関係性百合作品に男が出てくると、どうしても息苦しい作品になってしまいますが、それでも「男」の存在が、女同士の感情交換を一段と昂める事が〈時には〉あるのも事実。 こちらは中編二編の作品集。二つ共に女が男性的なものを挟んで、女への感情を拗らせるという枠組みになっています。そしてそこにあるフェチは強烈。 一つ目の作品は女子二人と男子の幼馴染。男女が付き合い始める事で、女子への秘めた恋をしていた女子のタガが外れ始める。もう一つはバイト先の女子二人と男子。先輩に惚れている女子は似た雰囲気の男子に代償を求める。 声、匂い、汚れ、心の傷。 フェチを強化する先には、男を乗り越えた何らかの関係性がある。強い・痛い・そして美しく忘れられない作品集です。 (二編目は「女の為の」ラストに是非、驚いていただきたい。そしてあとがきの岩見樹代子先生の優しさよ……)透明な薄い水色に岩見樹代子
あうしぃ@カワイイマンガ2021/07/28汚辱プレイが「バレる」危うさ主人公は、女子高生の幼馴染SMカップル。優等生で交友関係も広いSは放課後、科学実験室で大人しいMと過ごす。相手を汚し辱める悦びが描かれるが、実際の汚さ・痛みは愛らしい絵で薄まり、二人の心に入り込みやすい。 特徴的なのは、二人の日常描写に多くのページが割かれる事。 クラスでは別のグループに属する二人の「普通さ」が詳細に描かれるにつれ、放課後のアブノーマルな秘密感は増大する。そしてその秘密が「バレる」危うさと、バレた時に何が起こるかを想像せざるを得なくなる。 反転する関係性。堕ちてゆく残酷さがしんどい中、新たな「きたない君」への愛の形は、どん底の汚辱の中で淫靡に花開く。きたない君がいちばんかわいいまにお2わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/07/25面倒な人に優しい作品 #1巻応援『お父さんは心配性』なんて作品もありましたが、心配性・考え過ぎ・嫉妬深い人はマンガにおいては極端なコメディにされるかライバルとして冷遇されるか……あまり自分事として受け入れられない。 なんで?みんなだって、メンドクサイ人でしょ?(暴論) ★★★★★ 大学生のひめちゃんは、思考が後ろ向きで、嫉妬深い。カッコいい彼女がいて幸せそうなのに、とにかく悪い事ばかり考えて落ち込んでいる。 ひめちゃんを不安にさせない様、気遣いの出来る彼女はパーフェクト。でもだからといって、ひめちゃんが不安にならないという事は無いんだよなぁ……不安の種を見つけては堕ちて行く思考回路は同じ「重い」人間として、とても分かる。 そんなひめちゃんを普段から支えるのは、ゲイの後輩。彼とひめちゃんの対話が、とにかく面白い。 どちらかが、普通は引かれるような不安や嫉妬を吐露すると、「わかるわー」と返ってくる。その遣り取りを見ていると、「それ重いって」と突っ込む自分がどれだけ一般論に迎合していたかに気付く。そして二人の「重さ」が自分事として、沁みるように理解出来る。 基本百合マンガでありながら、不安症の二人の相互理解にも心を持っていかれる。最高な彼女がいるひめちゃんには、酷い男に引っ掛かり続ける後輩に優しくしてあげてよ……と思いました。ひめちゃんは重い女花束葬式2わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/07/23ベルリン・暗い部屋から外へ #完結応援現実世界の冒険譚は、非現実的ファンタジーに比べて地味でカタルシスに欠ける反面、自分でも同じ事ができそうな、地に足のついた希望があって、私は現実世界を同じ様に歩いてみたくなる。『思えば遠くにオブスクラ』も、そんなちょっとだけ「うずっ」とする感覚が味わえる作品です。 本作は、異国の地での生活と仕事を通じて、一人の女性の「自信の無さ」がほぐされてゆく物語です。 主人公は勢いで越して来たベルリンで、同居人に背を押され、何の準備もなく行き当たりばったりの生活をし、存外いい加減なベルリンに染まっていく。 ドイツの食を堪能しながら時になんちゃって和食に挑戦したり、気候に戸惑ったりワークライフバランスを学んだりするうちに、主人公の顔が緩んでくるのが羨ましくなります。 仕事では一眼レフカメラの「レンジファインダー機」の扱いが面白い。視覚表現者として優秀な主人公ですが、とある理由で自己と周囲の視覚認識にズレがあるらしい事にわだかまる。それ故に正確さ・厳密さを求めてきた彼女が、この曖昧でままならない機材を託されての変化が、何とも興味深いのです。 頭の中の「暗い部屋」で立ち止まっている人が、外に出て(外国に行く事も含め)少しだけ離れて自分を見て、知り、楽になる。そんな地味でも大切な変化の物語は、どんな大袈裟な物語よりも私にとって切実かつ爽快なものでした。 ベルリンはじめヨーロッパの光景は美しく、食や人々の描写等、エッセイ的表現が楽しい。一コマも読み逃すのが勿体ない、何度でも読み返したい作品でもあります。思えば遠くにオブスクラ靴下ぬぎ子7わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/07/17普通に出来なかった私の為の #1巻応援思い返せば大学卒業前後、就職活動に全く意義を見出せずフラフラ過ごしていた、そんな私にとってこの二人の物語は、とても他人事とは思えなかった。 進路を全く考えずにただ可愛い物に触れていたいと思う高橋と、漫画家志望で普通の進路を選択しない山下。二人の女子高生は趣味が合うわけでは無いが、卒業後も一緒に居続ける。 空気を読めるがそれがしんどい高橋と、周囲の目を気にしないが空気を読めずにしんどい山下。あらゆる場面で顕在化する同調圧力と、そこへの二人の違和感や、しんどさの表明に、ひとつひとつ同意してしまう。 誰かが言う「フツー」に怯み、モヤモヤし、ヘコむお互いをフォローし合う関係性。自然に肯定感を与え合う様子が羨ましい。 誰かが言う「フツー」なんて自分を多数派に置いて安心を得たいだけの事なのに、言われた少数派はどうしても動揺する。では、どうしたら少数派は安心できるのか。高橋と山下の様に、連帯できる相手がいなかったら? この作品や沢山の百合作品で、少数派の存在を知り、肯定されること。まずはそこからではないか。今日はまだフツーになれないU-temo2わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/07/16割と真っ当な認識変容の #1巻応援主人公・鞠佳はクラスの人気者。彼女は同じクラスの絢に、1日一万円×100日で「落とす」という勝負を持ちかけられる。……何だかとんでもない下衆な話の様だが、実際過程に下衆な部分もありつつ、1巻はかなり良い話。 「女同士なんてありえない!」と公言する鞠佳を、百合マンガ等を駆使したり、ボディタッチで責めたり、さらには……と、頭と体に訴える絢。落とされまいと理論武装で固める鞠佳に対して、何処までも余裕の絢。 想像力を鍛えられ、現実を見る事で、鞠佳の同性愛への認識が変容し、視野が広がる様が興味深い。そこにあるのは、百合マンガ等の創作物が、人の価値観を揺るがし、広げる可能性だ。 そして、目の前の人に対する想像力も。 知らなかった絢を発見する鞠佳。二人が結ばれるかどうかも気になるところだが、最終的に鞠佳には、目の前の人に対する優しさ・想像力のある人になって欲しいと思わされた。 「ありえないでしょ」なんて大声で言わない優しさを。女同士とかありえないでしょと言い張る女の子を、百日間で徹底的に落とす百合のお話みかみてれん かやこ
あうしぃ@カワイイマンガ2021/07/15羨ましい程、運命の出会い #1巻応援ご飯を少し作る様になって思うのは、自分で作ると意外とそれで満足して、食欲が湧かないなぁ、という事。食べる人のリアクションが気になって……。「美味しい」の言葉も勿論嬉しいけれど、箸が止まらない様子とか、完食とかを見るとガッツポーズしたくなる。喜ぶ人の為に、ご飯を作りたい。 本作の主人公は、ご飯を作るのが大好きだけれど少食。それでいて実は「ガッツリ大量に作りたい!」という欲望を募らせている。そんな彼女が大食いの女性と出会い、たくさん作っては彼女に食べさせ、仲を深めてゆく。 似たところはないけれど、気の合う二人。大食い女性は豪快に気持ち良く食べる一方、かなり気の利く真摯な人で、私が女性だったらこんな彼女欲しい。 「食」について女性が押し付けられているイメージ……お弁当作るのは女性の役目とか、女性は少食とか、そういう物へのモヤモヤを、二人で共有する幾つかのシーンも印象深い。今日でもなかなか消えないジェンダー規範や役割を、優しく気づかせてくれる内容でもあった。作りたい女と食べたい女ゆざきさかおみ3わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/07/14社交ダンスで在りたい私に #1巻応援女子高の社交ダンス部で、背が高い為に女役=パートナーを諦めたい二年生と、背が低くても男役=リーダーをやりたい一年生が出会う物語。全体的に「在りたい自分」に向き合い、実現してゆく困難な道が描かれる。 本当はパートナーをやりたい二年生の苦しみ、可愛いものが大好きなのに高身長ゆえ諦める彼女の無気力さと、やりたい事がブレない一年生との衝突は歯痒い。 しかし、本質的にやりたい事は噛み合っている二人。そして、ダンスが大好きな二人。 生まれ持った特徴だけで役割が決められるのだとしたら、こんなに息の詰まる事はない。二人は、こう在りたいというセルフイメージを強く持っている。それを周囲の目や競技特性を克服して、強い意志で実現できるか? 絵が美麗で愛らしい本作だが、実はどんなスポーツ物よりも「熱い」作品になるのではないだろうか?踊り場にスカートが鳴るうたたね游3わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/07/11無限の可能性で、君を救えない人が皆ロボットに見える少女と、彼女を受け入れる親友。遠回りな相互理解と余りにも巨大な愛の物語に、徹底的に打ちのめされる。 少女を守りたい親友が、量子力学的にあらゆる可能性を同時展開しながら「最適解」を選択する光として、一つの意思を貫く存在となる。その狂気は恐ろしい反面、一途さに感情移入してしまう。 少女を敵視する人、少女の同類として現れる人を加えた関係性は、尊さも無も全ての可能性が虚しく提示される。親友の加速する狂気がモノローグ絵巻となり、眩暈。 なかなか覆らない現実の中、自然と私は少女を求める。ほんわかと柔らかで愛される彼女が、その特殊な眼で「狂える神」たる親友を見る時、そこに産まれた「愛」なんて言葉ではとても足りない大きな概念に、ただ脱力する。 (百合作品としては、人物たちがある男性と付き合う/好きになるという描写が「可能性として」描かれるので、人によってはお勧めできないが、おそらく男性の存在は、意図的に原作小説より薄められているのではないか。重要そうなのに、ほぼ忘れられる程度の存在感だ)紫色のクオリア綱島志朗 うえお久光
あうしぃ@カワイイマンガ2021/07/09超次元的・未完の片想い「銀河皇国」に加入し宇宙に進出した地球人類は、とある宙域を巡り二カ国間で戦争状態に突入。皇国の技術を導入した超生体兵器「翔姫」を纏い、少女達は戦場に駆り出される。 訓練中の襲撃で全滅した訓練部隊。ただ二人残された少女達の、存在と恋の物語はスケールの大きさと残酷さ、そして愛らしさに魅了される。 少女の姿を巨大化させただけの「翔姫」が武装して出撃する美しさ。気弱な主人公の成長譚とそれを遥かに超えて行く何者かの思惑。そして今の人類では遥か及ばない技術を辛うじて私達に繋ぎ止める量子力学用語。てんこ盛りの世界観は熱い。 そして、残された二人の訓練兵の「百合」関係性もまた、独特だ。 生き残ったのは、気弱な主人公を支えて来た親友。彼女は第1話で主人公に愛を告げるも、振られている。離れ離れになる二人。秘されたもう一人の自分、更に親友にそっくりな人の登場に混乱する主人公。 この関係性と物語の根幹を知る時、彼女達の思いもよらない過去と恋、そして途方もない存在理由の物語に、物凄い衝撃を感じるだろう。 これだけの大きな枠組みの物語を、3巻で収めるのは無理がある。第3巻はかなり駆け足で、正直物足りない。どこかの並行世界で30巻位の大作として出版されていて欲しい、そんな快作で、問題作だ。さよならジュリエッタ道明宏明10わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/07/07JK合体巨人〈規格外〉地球防衛大戦!女子高生二人が合体巨人となり、地球外生命体と闘う物語。余りにも巨大な世界観・時間感覚に体の芯が震える感覚は最近だと『UQ HOLDER!』等に近いかも。そこに特撮シリーズ(特にウルトラマン)やスーパーロボットへのオマージュ等を加えると……この雰囲気、『トップをねらえ!』に近いかも! 夢の中で不思議な腕輪を授かったるんなと、完璧超人のミカ。合体すると基本ミカの全裸で格好良い感じでは無いが、熱さと生々しさ、そこに次々と概念を覆して行く進化を加え、止まらない強さのインフレに、やはり震えが止まらない。 物語は悪い方へエスカレートして行く。億年単位の時と神の次元を知る外来者達。ミカとるんなと登場人物達の因縁の重さ、不思議な力と人類史、そして迫る地球最後の日。 困難を乗り越えて、ミカとるんなが手を取る瞬間の尊さに、高鳴る心を抑えられない私がいた。ミカるんX高遠るい2わかる