たか
たか
1年以上前
誰しも一度はThe Beatlesにハマったことがあると思うけれど、この主人公は中二でビートルズに出会って以来、人生全てをビートルズに捧げた『ビーマニ』の山田くん。 「捧げた」というだけあって妻も子もおらず本まで出版し、なんなら「山田会」というビートルズを語る会まで開き、ビートルズファンの間ではちょっとした権威になっている。 そんな山田くんが山田さんと呼ばれるようになる頃に、通称「レベル3※」と呼ばれるビートルズのコピーバンドに勝負を挑まれる。(※お金が取れるレベルのことらしい) 山田は「私は『ビートルズ』で負けたくないんです。絶対に!」と、人生40年間を捧げてきたプライドに懸け勝負を受けるのだが……というあらすじ。 好きなもので真正面から勝負を受ける山田くんと仲間の石田くんの情熱、1カ月間週3で練習する気概…その積み重ねがあったうえでの、当日のライブ会場での山田のセリフは胸に迫るものがあった。 「大切に思えば思うほど、畏れ多くて生半可な気持ちでそれに接することができない」というのは、誰しも共感することができるテーマだと思う。 そして最後の最後に、山田は『愛の深さゆえの畏怖』を乗り越え、新たな決意をすることができた。それは誰にでもできるような簡単なことではなくて、愛を貫き通す勇気「覚悟」を持つ人にだけできる決断だと思う。 これはもう山田でも山田くんでもなく、敬意を込めて山田さんと呼びたい。 お話の全体の雰囲気としては「綺麗な響※」のような印象を受けた(※響のようにその道しか見えない人間だが、響のようにブレーキがぶっ壊れてないの意)。 これはぜひ連載化して、山田とビートルズの出会いからコピーバンドでのし上がるまでを全部描いてほしいです。 【本編WEB掲載】 https://www.futabasha.co.jp/tachiyomi/vtreader.html?pc=1&fd=ac_be-maniyamadaLR (画像は本編より。揺るぎない山田の決意が熱い…!)
誰しも一度はThe Beatlesにハマったことがあると思うけれど、この主人公は中二でビートル...
兎来栄寿
兎来栄寿
1年以上前
原作は、ガガガ文庫でガガガ賞と審査員特別賞を受賞した小説で本作はそのコミカライズ版。 原作未読ですが、作画担当の小うどんさんの綺麗な絵柄にまず惹かれました。人物はカッコよく、またかわいく、そして田舎の夏の熱気や草いきれが伝わってくるような背景もまた魅力的です。 ストーリーは序盤から都市伝説のように流布されていた「すこしふしぎ」に近いSF的要素がミステリ感も持って描かれ、その謎を解き明かすべく動いていく展開に続きが気になります。 主人公・塔野カオルのキャラクターは複雑な家庭環境で育ったが故に典型的な主人公像と少しずれた部分があり、ライトノベルらしさも感じられる少し捻ったその設定が面白味に繋がっています。 また、ヒロインの黒髪ロング美人、東京からの転校生で何でもできる花城あんずの男の不良にも殴りかかっていく毅然とした強い性格も非常に良いです。青春SFでは魅力的なヒロインの存在は大事ですね。 裏表紙を見ると、今後は更にサブキャラクターの2人の男女にもスポットライトが当たって行きそうで楽しみです。 夏になると読みたい一作になるかもしれません。
たか
たか
1年以上前
日野雄飛先生は、老若男女に好まれるであろうマンガらしい絵柄であらゆるシチュエーションの百合とBLを生み出す天才です。 その日野先生による初の百合短編集が本作「理想と恋」…! https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_MF00000078010000_68/ 収録作品は、元アイドル×配達員を描く「チャイムとアイドル」、アパレル店員×パン屋を描く「ピクニック」(はWEBでも読めますのでまずはぜひこちらをご覧ください)、そして劇団員×新入団員「れんげがさいたら」の3編。 大人百合がテーマで、自分の心に蹴りをつけた自立した女性たちがお仕事を通じて出会う、その地に足ついた恋のリアリティにギュンギュンします…。 3組ともカップルの片方が背が高くてどストライクで最高です…ありがとうございます。 そしていつも思うことですが、日野先生のコマ割りのセンスが最高すぎます…美しい。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 「チャイムとアイドル」…元アイドル×配達員 推しが武道館いってくれたら死ぬを彷彿とさせるカップル。配達員っていう設定が良すぎる。2人とも再会をキッカケにそれぞれオシャレしたり、自分磨きに励むシーンがたまらなく可愛かったです。 https://i.imgur.com/Vop33ym.png 「つん」無理…好き…  (『理想と恋』日野雄飛「チャイムとアイドル」より) 「ピクニック」…アパレル店員×パン屋 ダメ人間との恋愛はNL・BL・GL問わずよく描かれ大抵は「掃除ができない/料理下手」程度に留められることが多いのですが、このお話はさらに掘り下げてリアリティを出していて、しかもそれが絵だけできちんと伝わるように描かれているところが最高でした。 「れんげがさいたら」…劇団員×新入団員 あとがきによると、「もともと舞台マンガを描きたいと思っていた」そうで、連載は怖いのでオムニバスの1つにしたとのこと。そのため劇中劇も演劇の世界の文化の描写もメチャクチャ読み応えがありました。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 絵が可愛い、女の子が可愛い、ストーリー・設定が上手い…!間違いなく面白い短編集なのでぜひお手にとってください。 https://twitter.com/youhe_o/status/1114371575967444992?s=20