ゴールデンカムイ

一生、ナコルルに支配されるはずだった僕のアイヌ知識を更新してくれた

ゴールデンカムイ 野田サトル
名無し

僕と同世代でゲームに夢中だった人間は、少しだけアイヌ語を知っているものです。「アムベヤトロ」とか「アンヌムツベ」とか、意味は全くわからなくてもなんとなく言えてしまうのは、格闘ゲーム『サムライスピリッツ』の美少女・ナコルルのおかげなのです。このままでは一生、ナコルルに支配されるはずだった僕のアイヌ知識を更新してくれたのが『ゴールデンカムイ』です。  『ゴールデンカムイ』の舞台は日露戦争直後の北海道。主人公である杉元は、一攫千金を狙って砂金掘りをしています。戦争中、鬼神のような戦いぶりから「不死身の杉元」と呼ばれた杉元が、なぜそのようなことをしているかというと、戦死した親友の妻の病気を直すため、どうしても大金が必要になったのです。  そんな杉元に、酔っ払った男が北の大地のどこかに隠された「金塊」の話をします。そして、大金の隠し場所を示した暗号が、網走監獄から脱走した死刑囚の身体に刺青として掘られていることも…。酔が覚めた男は「しゃべりすぎた」と杉元を殺そうとします。そこで杉元はこの話が与太話ではなく真実であると確信し、謎を追うことになります。  杉元の相棒となるのがアイヌの少女アシリパ。彼女の父は「金塊」のために殺されていて、その仇を探しています。アシリパのアイヌ猟師としての知恵と知識と、杉元の不屈の精神で、彼らは北の大地を巡っていくのです  それにしても『ゴールデンカムイ』の良い所は次から次に話が展開していくところですね。3巻の時点で杉元が戦った相手は熊→熊→囚人→屯田兵→集団屯田兵→熊→ベテラン猟師…大自然の脅威から新撰組まで次々と二人に襲いかかり、それを知恵と勇気で乗り越えていくのです。  『ゴールデンカムイ』にはサスペンスとド派手なアクション、異文化の知識と、面白い要素がたくさん詰まっています。中でも料理漫画としての要素を見逃してはいけません。戦い、追い、逃げる二人はとにかくよく食べます。鹿や熊はもちろん、兎やカワウソまで、捌き方から料理法まで詳しく書かれていて、なんだかとても美味しそうなのです。  脳みそから目玉までおいしく頂くアイヌの料理に戸惑う杉元や、味噌がうんこにしか見えないと拒否するアシリパさんの異文化交流ぶりも楽しく、料理が『ゴールデンカムイ』という作品の壮大さにもつながっているのです。  厳しい自然との戦いや、骨太のサスペンス、それていて生活感があるという『ゴールデンカムイ』不思議なエンターテイメント巨編なのです。

め~てるの気持ち

引きこもりの習性がよく分かる。

め~てるの気持ち 奥浩哉
干し芋
干し芋

母親が亡くなってから15年間引きこもり生活を続けている30歳、キスの経験もない童貞の慎太郎。 部屋から出てきて欲しいと毎日懇願する父親の安二郎に、ハゲで、年を取ったそんな親父に彼女が出来るはずない、もし、出来たら部屋から出ると約束する。しかし、父親には、密かに1年間付き合っている20代でかわいく、優しい、はるかがいて、結婚することに・・・。 そして、結婚して間もなく、がんを患っていた安二郎は他界してしまう。 引きこもりを続ける慎太郎をどうにか外の世界に連れ出そうと思っていた安二郎の意思を引き継いで、はるかが奮闘する。 そんな、はるかに好意を抱いた慎太郎は、少しずつ心を許していく。 引きこもりの慎太郎の心の変化が面白い!! 何をやるにも、ドキドキハラハラ。安二郎の事を好きなはるかに自分を好きになってもらうには、父親のように禿げさせてしまえばいいと思い、髪の毛を刈って、はるかに大笑いされて、落ち込んで部屋から3日出てこなかったり、はるかへの好きの気持ちが止まらずにドアの隙間から「はるかすきだ」と書いた紙を出してみたり、気持ちを受け入れてもらえなかったら、「出ていけ」と書いた紙を大量にドアの隙間に挟んだり。 繊細で、行動も極端。傷つきやすく、対話も上手くできないので扱いも大変。そんな、慎太郎を義母として懸命に引きこもりから立ち直らせていく物語。