離々遊転

大横山飴の新作がコミックビームに載っているだと?!

離々遊転 大横山飴
かしこ
かしこ

普段は成年コミックを買わないのですが、2019年に大横山飴さんの『落ちない雨』が発売された時は迷わず購入しました。コアな漫画ファンの間で話題になっていて、絵を見た瞬間にこれは絶対買わなければ!と思ったことを覚えています。成年向けなのでもちろんエロいんですが、それ以上に絵に湿度がある感じがいいんですよね。当時は大横山飴さんもTwitterをされていたと思うんですけど、いつの間にかアカウントを削除されていて、今何をされているのか気になっていた作家さんでした。それがまさかのコミックビームに新作が載っているだと?!最高ですね。 「離々遊転」は2人の男が正月に山奥の神社を目的地にドライブする話です。ほとんどが車中の会話で淡々と物語が進むのですが、後部座席に白い梅の花が一枝だけ落ちていて、1人の男にはそれを白い帽子の少女が持っているように見えるんです。男が何も言わない少女に「よければ一緒に行きませんか」と声をかけると車の外にも付いて来るようになって…という、なんとも不思議な話なんですが、映像的な画面の流れとのアンバランスさがすごくよかった。『落ちない雨』とは少し違う作風でしたが、やはり大横山さんにしか描けない空気感があるなと再認識しました。ものすごく才能のある作家さんだと思う。描き続けて欲しい。

ディアボリク

神はどこにいるのか?

ディアボリク 丸尾末広
名無し

丸尾末広の今年二作目(おそらく)の読切「ディアボリク」。前回モーニングに掲載された「オランダさん」に引き続き、第二次世界大戦後とキリスト教がテーマ。 https://manba.co.jp/boards/104874 戦災孤児を収容するキリスト教養護施設に暮らす赤毛のミチオと神を巡るお話。「オランダさん」に登場した長崎の少年・マサルが素晴らしい宣教師と出会えたのに対し、こちらに登場する施設の園長・シュレック神父は神の教えを広める者として欠陥しかないまさに「diabolic(悪魔的)」な男。 シュレック曰く、日本は三等国で野蛮で神がいないらしい。 園で盗みを働きマリアを侮辱する浮浪者たちを描く中に、「最後の晩餐」を模したコマがあったのが印象的だった(その意図は自分には理解しかねるが)。 https://comicbeam.com/archives/008/201911/32d21816329fcc181a40ab534f7b33a3.jpg (『ディアボリク』丸尾末広) 救いのないシーンばかりが連続するが、最後の最後に、荒廃した町でサヨは12歳で殉教した隠れキリシタンの少年・ルドビコが死者を天国(パライゾ)に連れていく姿を見る。そしてミチオとサヨが優しそうな神父と出会ったところで話が終わる。 不幸ばかりだった2人だけど、「確かに日本にも神の国への道は開かれており、救いがあるらしい」。そんな読切だった。 【月刊コミックビーム2019年12月号】 https://comicbeam.com/magazine/magazine-10068.html