※ネタバレを含むクチコミです。
すごい独特な画風で、いい意味で雑誌の中で浮いています。 写実的な絵の上からペンで輪郭をなぞっているような…なんとも言えない感じ。 ただ雑誌とか安い印刷で読むのにはあまり向かないですね。しっかりとした紙にちゃんと印刷された状態で読みたい。 内容としてもかなり淡々としているんだけど、おじさんふたりの関係性や、無計画に正月に山へ温泉に行ったら全然店やってない感じにちょっとクスッと出来たり、謎の少女の存在が異物感もありパッと花のように明るくなったり、と不思議な漫画ですごく魅力的です。
普段は成年コミックを買わないのですが、2019年に大横山飴さんの『落ちない雨』が発売された時は迷わず購入しました。コアな漫画ファンの間で話題になっていて、絵を見た瞬間にこれは絶対買わなければ!と思ったことを覚えています。成年向けなのでもちろんエロいんですが、それ以上に絵に湿度がある感じがいいんですよね。当時は大横山飴さんもTwitterをされていたと思うんですけど、いつの間にかアカウントを削除されていて、今何をされているのか気になっていた作家さんでした。それがまさかのコミックビームに新作が載っているだと?!最高ですね。 「離々遊転」は2人の男が正月に山奥の神社を目的地にドライブする話です。ほとんどが車中の会話で淡々と物語が進むのですが、後部座席に白い梅の花が一枝だけ落ちていて、1人の男にはそれを白い帽子の少女が持っているように見えるんです。男が何も言わない少女に「よければ一緒に行きませんか」と声をかけると車の外にも付いて来るようになって…という、なんとも不思議な話なんですが、映像的な画面の流れとのアンバランスさがすごくよかった。『落ちない雨』とは少し違う作風でしたが、やはり大横山さんにしか描けない空気感があるなと再認識しました。ものすごく才能のある作家さんだと思う。描き続けて欲しい。
過去には万引きをし、高校では大学進学のための勉強を真剣にやってるわけでもないごくごく「普通」の高校生の少年・甲が主人公。ただ彼が施設育ちであるということが、万引きしたときに一緒に謝ってくれて、進学を決めたら応援してくれる大人がいる「普通」がどれだけ得難いことなのかがひしひしと伝わってくる。 雨やガラスみたいな透明なものが好きな甲。 彼のモノローグ、頭の中で考えていることがメチャクチャ独特だった。
隔週を「へきしゅう」だとずっと思って生きてきた男・たっちゃんが、悔しさのあまりへき週が正しい世界を作ればいいんだ!といって本当につくっちゃう話。いわゆる言い間違いあるあるを描いたギャグ漫画かと思ったけど、間違えて悔しい、からの展開に狂気を感じた。 汎用性とか五十路とか、まあ、間違えがち…かな?という絶妙な言葉のチョイスも良かったです。 というかこの方前作はスペリオールに載ったんですね。 今後、スペリオールとビームどっちで活躍されるのか。楽しみにしてます。
ビームの別冊付録の読切みんな面白かったけど、個人的にはこの「おじさんの塀」がダントツでした。 おじさんの家に入って玄関の床のタイルが綺麗だという描写から、お風呂を見せるところでもう「これは…ッ!!」となった。そこからおじさんの人となりが明らかになり、そしておじさんに字を教えてあげようとするゆう太のながれ、胸打たれます。絵もストーリーも完璧で言うことなし。
絵になる絵を描く人ですね…ファンになりました。 心をこわして透明人間になってしまった(と思われる)弟とその姉の、シリアスになりすぎないユーモアに富んだお話でした。 むりやりこちらへ引っ張り戻そうとするのではなく、いつでも戻っておいでというような、良い距離感の優しさを感じます。
コミックビームの付録小冊子に載ってる読み切り、もれなく全部面白いんだけど、なかでもこれがいちばんよかったかも…。 アレックスの王子様っぷりも去ることながら、主人公の顔が変わる瞬間のコマにはいい意味で鳥肌がたった。
とある夏の日の、とある家族の一日を描いた読み切り。 平和でなんか泣けてくる。 巻末のコメントに、昨年の夏のことを描いたとあったので作者自身のお家の光景が元になっているっぽいです。今年もこんな平和な夏休みを過ごせるといいですね。
コミックビームの付録小冊子に掲載されていた読切。ひと目見てこの人だとわかる、独特な絵柄のファンです。突飛で少しグロテスクな内容に反して、淡々と進むストーリー。百合っぽさもありつつ、死生観がぐらつきそうになる意欲作だと思いました。なんの根拠もない勝手な推測ですが、ビーム本誌で連載始まりそう。
コミックビームに掲載された企画、吉本芸人×漫画家! アメトークこち亀芸人にも出てたり、ものすごい濃くてパッションの強いネタをやる人気お笑いコンビ「インポッシブル」のコントを、『幼女社長』の「藤井おでこ」がコミカライズ! ある日、農家が仕事をしよう田んぼに行くと、そこにはミステリーサークルが! 周囲を見渡すとまだ稲を人力で倒す犯人がいて問いただそうとすると・・・本物の宇宙人!? 原作がコントとは思えないほど完成された読切! 漫画的な表現力の素晴らしさはもちろん、めくりで現れるボケなど読み味のテンポの良さが気持ちいい。 大ゴマの使い所も最高! 元ネタの動画を見ると、本人らの強さを上手く漫画に落とし込んでるという印象を受ける。 違う視点から見れて楽しかった。 漫画もコントも好き! コント動画→https://youtu.be/BLIqN9yUSQY ↓ヤングキング7号の同企画も面白かった! https://manba.co.jp/boards/116656 https://manba.co.jp/boards/116657 https://manba.co.jp/boards/116658 https://manba.co.jp/boards/116659
面白いんだけどこれ本当にコントなの…!? 元ネタの映像とかあれば見てみたい! この急速に後半が伸びるところめっちゃいい。
宇宙人の女の子・ソラと、そのいとこ・ななえ。 可愛くて明るくて性格もいいソラに親も友達もみんなが夢中。なぜかななえ以外の人間にはソラが宇宙人だとわからないらしい。 ななえはソラを「人間を騙し侵略しに来た宇宙人だ」という。 ここまでは読者もソラのことを宇宙人だと思っている。しかしそれは途中で覆る。ソラはななえがいう宇宙人ではなかった。 「宇宙人」って、文化や価値観が違う人にも使ったりする。ど田舎の人間から見れば、東京から来たキラキラしたソラはまさに宇宙人そのものだったかも知れない。 でも、ソラにもキラキラしていない部分があった。ななえはそんなソラになんて声をかけるのか。宇宙人と友達になれるのか。爽やかでキラキラ眩しいラストでした。 私からすれば田舎だろうが都会だろうが10代はみんなキラキラして見えるけどね…
よだかの星を読むのはおそらく小学生ぶりだと思いますが、やっぱ大人になってから読むほうが面白いですね、宮沢賢治は。ちょっと不思議で、暗くて悲しくて、繊細で感受性が強くて傷つきやすい…子供の頃は何が面白いのか全くわかり…ませんでしたが、今となってみればすごく素敵だなと思います。 このコミカライズの良いところは、よだかを始めとする鳥たちの目が往年の少女漫画のような人間的な目をしているところ。 目の中に星が輝くまつげバサバサの目は人間のように感情をよく伝えてくれるだけでなく、賢治作品らしい幻想的な感じを出すのに一役買っていると思う。 読んでみて久々に原作を読み返したくなった素敵な読切でした。
丸尾末広の今年二作目(おそらく)の読切「ディアボリク」。前回モーニングに掲載された「オランダさん」に引き続き、第二次世界大戦後とキリスト教がテーマ。 https://manba.co.jp/boards/104874 戦災孤児を収容するキリスト教養護施設に暮らす赤毛のミチオと神を巡るお話。「オランダさん」に登場した長崎の少年・マサルが素晴らしい宣教師と出会えたのに対し、こちらに登場する施設の園長・シュレック神父は神の教えを広める者として欠陥しかないまさに「diabolic(悪魔的)」な男。 シュレック曰く、日本は三等国で野蛮で神がいないらしい。 園で盗みを働きマリアを侮辱する浮浪者たちを描く中に、「最後の晩餐」を模したコマがあったのが印象的だった(その意図は自分には理解しかねるが)。 https://comicbeam.com/archives/008/201911/32d21816329fcc181a40ab534f7b33a3.jpg (『ディアボリク』丸尾末広) 救いのないシーンばかりが連続するが、最後の最後に、荒廃した町でサヨは12歳で殉教した隠れキリシタンの少年・ルドビコが死者を天国(パライゾ)に連れていく姿を見る。そしてミチオとサヨが優しそうな神父と出会ったところで話が終わる。 不幸ばかりだった2人だけど、「確かに日本にも神の国への道は開かれており、救いがあるらしい」。そんな読切だった。 【月刊コミックビーム2019年12月号】 https://comicbeam.com/magazine/magazine-10068.html
卓球セラピーで植田りょうたろう先生を知って、コミックビームのバックナンバーを買って読みました…! 一言でいうと「子どもたちの遊び場になっている原っぱが野焼きされる話「なのですが、卓球セラピーのような日常ものだと思いこんでいたので予想外の展開にメチャクチャ驚きました! 植田先生の柔らかそうなキャラとリアルな描き込みという、相反するものが自然に一つになっている画風が本当に素敵でたまりません。ずっと見ていたい…! 来週発売の単行本「はなちゃんと、世界のかたち」をよろしくおねがいします。 https://comicbeam.com/product/321906000583.html
老夫婦のほのぼの日常マンガ。旦那さんが子犬を拾ってきて、反対する奥さんと飼う飼わないの攻防戦。 切り絵のようにトーンを使っているのが印象的です。 このシリーズで単行本化されるとのことでおめでたい。 まとめて読むと、絵柄の変様が面白いと思います。だんだんオノ・ナツメぽさが強くなっている… https://twitter.com/COMIC_BEAM/status/1154801923096137729
うたちゃんとはなちゃんが秘密基地で遊んでいる場面まではほのぼのとした日常を描いてるんだけど、ダムが放水を始めて濁流がふたりを飲み込んでからは世界崩壊後のような雰囲気になって、しかも死のイメージを彷彿とさせる内容も出てくるのでとてもヒヤリとした。この死後の世界の描写がとてもすごいので、これはうたちゃんの書いた作文なんだ!と、ピンとくるまで時間がかかった。(赤ペンで先生のコメントがあるので自分はこう解釈したけど、ほんとに世界は崩壊しちゃったのかもしれない。どう読んでもいいんだと思う。)うたちゃんの文才がすごすぎることはさておき、単なる空想も形にしてみると残酷だったりするのかも。前回の卓球セラピーでも顔を隠しているお姉さんが出てきたけど、ふとしたダークな要素によって人間の心の奥深さを描き表されている。
この話は、桃太郎の自分勝手な欲望のせいで平和な暮らしを乱される人々(と動物と鬼)の悲しい物語です。 表紙の絵が、物語の途中で判明する非常に残酷な事実を表しているのだが…勘のいい人は気付くかもしれない。
※ネタバレを含むクチコミです。