1300年の時を経て再び巡り逢った姫と、その恋人の騎士。ところが姫は男に生まれ変わっていて……!?やっと和宏をくどきおとし、恋人といってもらえるようになった藤木。しかしセラ姫の生まれ変わりである和宏を奪おうと、異世界の四人の王は周到な罠をしかけていた。ドラマティック・ファンタジー、サードステージ開幕!
B級パラダイス!
古き良き時代の面影を残した都市を舞台に侠気を重んじる男たちと、憂いを含んだ美女たちのロマンスとドラマチックなストーリーが読み手の心を震わせる。入手不可能となっていた波津彬子の初期作品集、幻の一冊を初文庫化。ファン必携!
きらきらDUST
宇宙をブラブラ漂う、ダスト・ラボ。地球付近の宇宙ゴミを回収した中にひとかけらの細胞発見!その細胞を再生し、生まれた生命体は地球人形の少女だった――!?かまたきみこの初のスペース・ファンタジー。他、短編2作品収録。
故郷は緑
世界中から緑が激減し砂漠や氷の世界となった地上。緑を操ることができるという精霊使いが欲され、その中でも特殊な能力を持つアスを狙って様々な組織が動き出す。「すっくと狐」の吉川うたたの新境地、待望の第1巻登場。
てんから
「眠れぬ夜の奇妙な話」「ネムキ」に掲載された短編、長編作品を、かまたきみこ自選により収録。小さな田舎町で突然起こった、冬のある日の不思議な現象とは――!?表題作「てんから」ほか計5編を収録した奇想天外ファンタジック読み切り傑作集!!
八点鐘
モーリス・ルブラン原作のアルセーヌ・ルパンシリーズの傑作を探偵コミックの第一人者JETが描く。アルセーヌ・ルパンとオルタンス・ダニエル嬢が繰り広げる八つの冒険譚。2人の関係もドキドキです。
水に棲む鬼
艶麗な筆致で描くサスペンスミステリー・ロマン作品集!!水面に映るのは死んだはずの女の顔…。夏が深まり、山の気は濃密な闇となって私にからみつく――。閉ざされた記憶の海に浮かぶ、赤い花弁は何を意味するのか……?
夜はきて愛を語り
どこへ行こうと、あたしの居る場所がないことは変わらない。今度の街も……心の奥深くに、夢の残骸を抱えた者たちの集まる街――。刑事のシドと、流れ者のダンサーであるリズ。出会うはずもなかった二人が殺人事件によって出会い、危険な愛に立ち向かう。表題作をはじめ、センチメンタル・サスペンス全4編を収録。
螺旋のアルルカン
彼女は、自分が<機械>だと知らなかった――。瀕死の息子の魂を人工の体に移行する女性科学者の実験が、人類の未来を歪めてしまった。突如現れた青年<R>に真実を突き付けられたマリアは…!?
コーラルや人魚達、人魚を守る少年ソルト、おしゃべりで憎めない縞鮫ストライプ――。海の世界と現実の世界がリンクする――入院中の少女・珊瑚が綴る不思議でキュートな海の物語。待望の第1巻。
燕雀庵夜咄
病弱な娘の枕頭に現れる母の幽霊は何を告げる?咲くはずのない芙蓉花のもとに佇む支那服の少女――。朽ち果てた西洋館に集う人々は、皆、どこやら謎めいて、闇より香る美酒の吐息が、甘く切なく胸を焦がす……。耽美と幻想の世界が織り成す、珠玉の大正風幻想浪漫集。
『コーラル ~手のひらの海~』は2007年から2014年にかけて『ネムキ』(朝日新聞社、朝日新聞出版)および『Nemuki+』(朝日新聞出版)にて連載された、TONO先生による長編作品です。全5巻の単行本に纏められています。 交通事故に遭い入院している少女・珊瑚。事故当時、珊瑚の母は珊瑚には本当の父親が別にいると言い残し、家を出ていってしまった。珊瑚はコーラルという人魚を主人公とした、人魚がいる世界の物語を空想している。人魚たちは人魚の兵隊を使役する。人魚の兵隊は人魚を守るために命を与えられた、男の水死体である。 人魚の兵隊・ソルトの姿形は、珊瑚が入院先で仲良しになり、そして亡くなってしまったサトシをモデルにしています。珊瑚が空想する物語にソルトが登場することは、珊瑚がサトシを(物語の中で)生かし続けることを意味します。 このように人魚の世界は珊瑚の空想でできているので、珊瑚の思うままです。ソルトを登場させるだけでなく、もっと願望を重ねた理想的な世界にすることだって出来るはず。物語が現実逃避の手段であるなら、なおのことそうするのが自然な気がします。しかし珊瑚はそうしません。人魚は、その血肉が万病に効くという理由で人間に襲われるし、身体を蝕んでくる回虫などから常に身を守らなくてはいけない。さらに人魚たちも一枚岩ではなく、それぞれに悪意もあるし意地悪さも持っている。そういう風に人魚の世界は作られています。それはちょうど、現実の珊瑚の身の回りに不安やノイズがつきまとっていることが反映されたかのようです。 珊瑚は、どうして人魚の世界をそのように空想するのでしょうか。 TONO先生のマンガには、ハードな状況に対峙する勇気や強い気持ちをもった子どもたちがたくさん描かれています。それはTONO先生が、子どもたちという存在に対しての信頼というか祈りというか、そういった希望を載せてマンガを描いているからだと思います。同時にそれは、現実世界や大人たちのイヤな部分を克明に描いているということでもあります。 この傾向は『チキタ★GUGU』や『ラビット・ハンティング』に顕著でしょうか。21年10月現在の最新作である『アデライトの花』も4巻で特にその傾向が強まったと考えます。 本作においても、珊瑚やコーラルはそういう勇気を持った子どもたちとして描かれていて、人魚の世界がハードにできているのはこれを描くためだと自分は考えています。勇気を持って頑張るコーラルの物語を想像することで、珊瑚は現実で勇気を持つことができる。大雑把な捉え方ではありますが、これは自分が物語全般を読む・見る理由のひとつでもあるので納得感もあります。 ただその上で、自分がもっと重要だと思うのは、勇気を持った子どもたちが描かれることは大人をも肯定することなんじゃないか、ということです。なぜなら、大人は子どもが育っただけだからです。(いい意味での、『少年は荒野をめざす』の日夏さんですね) 大人と子どもの違いって色々あるように思ってしまうけど、加齢していることと、大人には子どもに対して責任があること、本当のところはそれぐらいしかなんじゃないでしょうか。 そういうのもあって、自分はTONO先生の作品を読むと、現実社会を、時に勇気を持ってでも真摯にやっていかなきゃな…という気持ちになります。本作だと、ラスト付近の展開なんかに強くそう思わされます。 絵について書きます。『チキタ★GUGU』の連載後に開始された本作の段階で、TONO先生の絵柄はかなり確立されていると思います。キャラクターのみならず、背景の、例えば模様のような印象をもつ海藻などにも、TONO先生の絵!としか言いようのない独自の魅力があります。単行本表紙イラストなどの、淡く、それでいて少しくすんだような色合いの水彩で描かれたカラーは、きらびやかなだけでない人魚の世界を表しているかのようです。 先述の通り本作では現実と対峙するための方法として空想の物語を大きく扱っていますが、それ以外の方法も扱っています。そういうところも自分はとても好きです。 好きついでに、自分の本作の特に好きなところを挙げると、4巻途中(ボイルというキャラクターがね、めちゃくちゃいいんですよ…ポーラチュカ……)からガッとギアがシフトアップして物語の一番深いところまで達し、そこから少しずつ凪いだ水面に向かっていく、あの感じです。これは『チキタ★GUGU』にも同じようなところがあるので、TONO先生の作家性なのかもしれません。 最後に『薫さんの帰郷 (TONO初期作品集)』の表題作のモノローグを紹介させてください。以下引用です。 「勇気がいるな 幸せになるにはいつだってね 楽しい毎日を送るにはどうしてもね」(『薫さんの帰郷』、朝日ソノラマ、1998年、p174)