日本時代と現代、二つの時代を描く 台湾発 至上の百合漫画 昭和11年。「高等女学校」「日本への進学」「職業婦人」といった「新しい未来」が少女たちの前に輝かしく提示され、それでもその未来への扉を開くか否かの選択は決して少女たちの自由意思にはゆだねられていなかった時代。
過酷な有機農法によるワイン醸造家と バンド・デシネ作家たちの出会い 本作品はワイン造りの約一年を追ったドキュメンタリーで、小さなエピソードを積み重ねるように描かれている。本書のタイトルの直訳は「無知なる者たち」。これはワインに無知な漫画家の作者と、漫画には縁遠いワイン醸造家という二人の主人公が念頭に置かれている。副題には「相互教育の物語」とあるが、漫画家はワイン造りの現場を、ワイン醸造家は出版の現場を知ることにより感化を受け、世界を広げることを示唆している。 フランス北西部のロワール地方。ワイン造りに興味を持った漫画家のエティエンヌ・ダヴォドーは、ワイン生産者のリシャール・ルロワに、一年間の密着取材を依頼する。エティエンヌがワイン造りを学ぶ代わりに、リシャールには出版界を案内するという代替案を提示。それが「相互教育」の道を拓くことになる。 言うまでもなく、フランス・ワインの品質は世界最高峰を誇り、伝統の製法が今も息づいているが、一方で中小の生産者は、安価な新世界のワイン(チリ、アメリカ、オーストラリアなど)の台頭に苦戦を強いられている。大量生産するためには除草剤と農薬を大量に必要とするが、すると土地は荒れ、ワインの質は年々劣化する。それを補うためにワインに細工をする、という悪循環を生んでいる。 そんな中、リシャールが実践するのは「ビオ・ディナミ農法」という有機農法の中でも過酷なもの、言わば自然との共存を図る農法だ。化学肥料も除草剤も一切使わず、瓶詰めの際に必要な保存料もゼロにする徹底ぶり。だがその現場は、まさに自然との格闘の場だ。エティエンヌは冬の剪定に始まり、春の棚づくり、夏の除草作業、夜中の肥料まきなど、葡萄栽培の熾烈な現場に身を置きながら、次第に自然、そしてワインを敬う気持ちが芽生えてくる。 一方のリシャールは、エティエンヌから大量のBDを読むことを要請される。BDとは「バンド・デシネ(Bande dessinée)」の略称で、いわゆるフランス・ベルギーを中心とした地域の漫画のことである。日本語のニュアンスで理解される「漫画」とは異なり、フランスでは「9番目の芸術」と認識されるほど、社会性、芸術性に富んだ作品も多い。様々なBD作家たちとの出会いの機会を得ることで、リシャールもまた、抽象的な概念を具体的な絵で描く作業と、土地の様々なファクターをワインという生産物に仕上げることの共通性に気づくなどして、ワインが芸術であることの認識を深めていく。 自然派ワインの巨匠と社会派バンド・デシネ作家、異質な二人の交流と発見を描く実録マンガ。フランスでは累計27万部を売り上げ、およそ14言語で翻訳出版された話題作が待望の邦訳化。
50代の建築学科教授アステリオス・ポリプは、妻と別れてからというもの、マンハッタンのアパートで一人無気力な生活を送っていた。ある日アパートに雷が落ちて燃え上がり、彼はわずかな所持金といくつかの思い出の品だけを手にアパートを飛び出す。そして、彼はそのままバスに乗り、「最果ての地」を意味する町アポジーに辿り着き、住み込みの自動車整備工として働くことになる。大学勤めのエリートだった彼は、これまで出会うことがなかった種類の人々と交友関係を築き、これまで見過ごしたり軽視してきたものに触れるうちに、自身の半生を見つめ直して生まれ変わっていく。過去と向き合って別人のようになったアステリオスはやがて、ある大きな決意をする…。
感染症と向き合った人々の歴史を今に生かす。 人は誰しもかわりばんこ(テイキング・ターンズ)。 1990年代前半のアメリカ。HIV/エイズに特化した緩和ケア病棟として創設された371病棟では、死と隣あわせの患者と接する日常が繰り広げられ、ときには、エイズに対する恐怖がパニックを引き起こしていた。 1994年から2000年まで、HIV/エイズ緩和ケア病棟で看護師として勤務した著者の回想録でもあり、当時の貴重な証言の記録でもある、グラフィック・ノベルの意欲作。