過酷な有機農法によるワイン醸造家と バンド・デシネ作家たちの出会い  本作品はワイン造りの約一年を追ったドキュメンタリーで、小さなエピソードを積み重ねるように描かれている。本書のタイトルの直訳は「無知なる者たち」。これはワインに無知な漫画家の作者と、漫画には縁遠いワイン醸造家という二人の主人公が念頭に置かれている。副題には「相互教育の物語」とあるが、漫画家はワイン造りの現場を、ワイン醸造家は出版の現場を知ることにより感化を受け、世界を広げることを示唆している。  フランス北西部のロワール地方。ワイン造りに興味を持った漫画家のエティエンヌ・ダヴォドーは、ワイン生産者のリシャール・ルロワに、一年間の密着取材を依頼する。エティエンヌがワイン造りを学ぶ代わりに、リシャールには出版界を案内するという代替案を提示。それが「相互教育」の道を拓くことになる。  言うまでもなく、フランス・ワインの品質は世界最高峰を誇り、伝統の製法が今も息づいているが、一方で中小の生産者は、安価な新世界のワイン(チリ、アメリカ、オーストラリアなど)の台頭に苦戦を強いられている。大量生産するためには除草剤と農薬を大量に必要とするが、すると土地は荒れ、ワインの質は年々劣化する。それを補うためにワインに細工をする、という悪循環を生んでいる。  そんな中、リシャールが実践するのは「ビオ・ディナミ農法」という有機農法の中でも過酷なもの、言わば自然との共存を図る農法だ。化学肥料も除草剤も一切使わず、瓶詰めの際に必要な保存料もゼロにする徹底ぶり。だがその現場は、まさに自然との格闘の場だ。エティエンヌは冬の剪定に始まり、春の棚づくり、夏の除草作業、夜中の肥料まきなど、葡萄栽培の熾烈な現場に身を置きながら、次第に自然、そしてワインを敬う気持ちが芽生えてくる。  一方のリシャールは、エティエンヌから大量のBDを読むことを要請される。BDとは「バンド・デシネ(Bande dessinée)」の略称で、いわゆるフランス・ベルギーを中心とした地域の漫画のことである。日本語のニュアンスで理解される「漫画」とは異なり、フランスでは「9番目の芸術」と認識されるほど、社会性、芸術性に富んだ作品も多い。様々なBD作家たちとの出会いの機会を得ることで、リシャールもまた、抽象的な概念を具体的な絵で描く作業と、土地の様々なファクターをワインという生産物に仕上げることの共通性に気づくなどして、ワインが芸術であることの認識を深めていく。  自然派ワインの巨匠と社会派バンド・デシネ作家、異質な二人の交流と発見を描く実録マンガ。フランスでは累計27万部を売り上げ、およそ14言語で翻訳出版された話題作が待望の邦訳化。

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芸術、愛、革命―― 深く胸を打つバンド・デシネ! えすとえむ氏絶賛!! 「自然が創りだす光と影、人の手が作りだす光と闇、その美しさ残酷さを描き切ったルパージュの手は私の心臓をわし掴んだまま離してくれない。」(えすとえむ【漫画家】)1976年、ニカラグア。独裁者“タチート”ソモサとその軍隊がこの中米の小国を支配している。首都マナグアの良家の息子で若い修道士のガブリエルは、キリストや聖者、“キリストの受難”など宗教画を描くのに長けており、その才能を見込まれ、山岳地帯の小さな村サン・フアンのルーベン神父のもとに送られる。最初は権力者の側近の裕福な家系ということで村人から疎まれていたガブリエルだが、次第に村人たちと深く係わり、彼らのことを知り、愛するようになる。そこに至るまでにはルーベンの励ましがあった。ルーベンはガブリエルに村人を血の通った肉体を持つ生身の男や女として描くことを勧めたのだ。「ものの表皮をめくる」ことにより、ガブリエルは徐々に農民を迫害する軍隊のことだけでなく、自分に重くのしかかる自身の欲望と官能をも発見することになる。彼にとっても村人にとっても、抵抗の時が目覚めつつある革命とともにすぐそこまで来ていた…… 芸術、愛、革命―― 『ムチャチョ』は、若き修道士の複雑かつ波乱万丈な運命を通して描かれる情熱の物語だ。作者エマニュエル・ルパージュは、熱く率直な思いを込め、その才能と豊かな人間性を駆使して普遍的なテーマの作品を造り上げた。深く胸を打つのみならず、愛と政治参加についても考えさせられる作品。

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2026年、ナイキ・アッツフェルドは驚異的な記憶力で過去を蘇らせ、自分が生まれた1993年、戦火のサラエヴォでの出来事を思い出す。生後数ヶ月で出会った同じ境遇のふたりの孤児、アミールとレイラのこと、生涯ふたりを守りぬくと誓ったこと。さまざまな宗教が覇権を争う時代、ナイキは離れ離れになったふたりを探しに行く。レイラは今や有能な宇宙物理学者で、人類の未来に大きな影響をもたらす可能性のプロジェクトに関わっている。一方アミールはかつてサッカーのゴールキーパーとして鳴らしていたが、今では科学、文明、思想の三つを抗争の柱に掲げる国際テロ組織の手先となっている。3人は意図せずして地球規模の闘争に巻き込まれるが、この闘争を陰で操っているのが「モンスター」という謎の人物だった。エンキ・ビラルは世界的に有名なバンド・デシネ作家、及び映画監督。「モンスター」は彼の代表作と言える傑作。第一部は1997年に発表され、10年余りの歳月をかけ、2006年にようやく完結。9.11の同時多発テロ事件、急進的な宗教団体の台頭、異常気象などを暗示するようなシーンに驚くとともに、独特の幻想世界に堪能するばかり。エンキ・ビラルは鮮やかに既存のマンガとSFのコードに挑戦し、新たな可能性を示す。第1部「モンスターの眠り」。

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あの日を境に、私は「軽さ」を失った―― シャルリ・エブド襲撃事件生存者、喪失と回復の記録 2015年1月7日、パリで発生したテロ事件により12人の同僚を失うなか、 ほんのわずかな偶然によって生き残ったカトリーヌ。 深い喪失感に苛まれながらも、美に触れることによって、 彼女は自分を、その軽やかさを少しずつ取り戻す。 序文:フィリップ・ランソン(2018年フェミナ賞受賞) ウォリンスキー賞(ル・ポワン誌主催)、ジュネーヴ・テプフェール賞受賞 アングレーム国際マンガフェスティバル作品賞候補最終ノミネート ●内容紹介● シャルリ・エブド襲撃で、「軽さ」を失ったカトリーヌ。「人生の補佐役」たるプルーストゆかりの地をめぐるも、なにも感じない。事件で犠牲になった仲間の言葉も思い出せない。1月11日、フランス全土で400万人がテロに抗議する「共和国の行進」。暴力のツナミの後にきたのは支援のツナミ――。 そんな「1月7日症候群」を相殺するため、スタンダールが経験したように「美に埋もれ、溺れたい」と願い、彼女はイタリアへと飛び立つ。 美と文学で悲しみ(トラウマ)を乗り越える1年間の記録 ●著者紹介● カトリーヌ・ムリス 1980年生まれ。25歳のときに風刺画家のリュスとシャルブに誘われ『シャルリ・エブド』に加わり、報道マンガの世界に入る。主な作品に、『Mes Hommes de lettres(わたしの愛する文学者たち)』(2008年)、『Moderne Olympia(現代のオランピア)』(2014年)など。 ○訳者: 大西 愛子 1953年、東京生まれ。フランス語翻訳・通訳。父親の仕事の都合でフランス及びフランス語圏で育つ。バンド・デシネの翻訳多数。

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ブラックサッド

マンガ家にファンが多い(気がする)海外マンガ

ブラックサッド 大西愛子 ファン・ディアス・カナレス フアンホ・ガルニド
ANAGUMA
ANAGUMA

メビウスとかマイク・ミニョーラみたいになんとなく「日本のマンガ家のあいだで名前が通っている海外マンガ(家)」ってのがあると勝手に思ってるんですけど『ブラックサッド』はその中ではまだまだ知られていないとさらに勝手に思っています。なので今日このクチコミを読んで知ってほしい。 マンガ家に人気の理由の一端はページを開いてすぐわかるんですけど、作者は元ディズニーのアニメーターでとにかくべらぼうに絵がうまいです。 その絵のうまさも、正確な形を描き出すデッサン力、演出に合わせた色彩感覚、決まりまくった画面構成(レイアウト)…と、もう絵を描く人だったら喉から手が出るくらい欲しい物が全部網羅されています。 まず動物擬人化ものって技術がないとどうしてもコミカルにやりがちというか、生き物の構造を無視した描き方に逃げちゃうことが多いというか…写実とデフォルメのバランスが難しいジャンルだと思うのですが、本作の場合は動物がきちんと描けるひとなんだなというのが一瞬で理解できます。 海外マンガに慣れてない人が敬遠しがちなフルカラーも色合いが水彩ぽくてソフトですし、各場面に合わせた演出としてコントロールされているので違和感なく読めるんじゃないかなと思います。「マンガを読む」という行為を邪魔しない、むしろ上手に手助けするような色使いがされています。 色合いとダブルで効いているのがパキパキとしたカメラアングル。作品のハードボイルドなテイストにすごく合っていて、この辺りも映像畑出身の方の上手さだな…と舌を巻いてしまいます。 …とダラダラと書いてきましたがひとまず試し読みで見てほしい作品です。海外マンガ、「百聞は一見にしかず」タイプの作品が多いですが、そのなかでも『ブラックサッド』は特に「見たらわかる!」度が高いマンガだと思うので…。

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