豚の復讐
転生しても元の世界とつながる復讐劇
豚の復讐 黒田高祥 仁藤砂雨
六文銭
六文銭
転生ものって大体、現実世界がうまくいかなくて、リセットされた異世界で心機一転の生活を送るものだと思ってましたが、本作は違い、そこが新しく感じました。 タイトル、豚の復讐とあるように、学校で「豚」として同級生から凄惨ないじめをうけていた主人公が、ある日転生して異世界へ。 容姿がオークに似ていたことからか親しくなり、オークの村で平穏な生活を送る。 ここまではいつもの異世界モノ。 が、しかし、その平穏を壊したのは、なんとかつての同級生。 彼らもまた異世界にきており、しかも転生の際に得た特殊能力で「勇者」としてたたえられ好き放題している感じ。 そこから主人公とオークの復讐がはじまる、という展開。 (ちなみに主人公の能力は?となっている。) 結構グロい描写も多々あるので、その点は読む際にご注意ください。 どうやってクラスメイトたち、特に黒幕である安田に立ち向かっていくのか?だけでなく、主人公がいじめられた背景・理由がなんだったのか?とか、ちょっとした謎もあって気になります。 あとクラスメイトが絵に描いたようなクズばかりなので復讐される様は、スカッとします。 転生しても、前の世界の因縁と繋がっており、単純な現実逃避になっていない、むしろ異世界でできた仲間と立ち向かっていく様が個人的によかったです。
オーディンの舟葬
残忍なヴァイキングへの復讐譚 #1巻応援
オーディンの舟葬 よしおかちひろ
兎来栄寿
兎来栄寿
今でこそ「北欧」というと福祉が充実している幸福度の高い国であったり、サウナであったり、ヒュッケであったり、オシャレな雑貨であったりの穏やかなイメージが強いかもしれません。しかし、かつての北欧は圧倒的な「暴」の支配する土地でした。北欧神話などにもその影響は色濃く受け継がれています。 本作は『ヴィンランドサガ』と同じ11世紀初頭を舞台に、ヴァイキングの脅威に晒される側であったイングランド王国はロンドン北の小村から物語は始まります。 「狼の子」と呼ばれる狼に育てられた少年と、心優しい神父・クロウリーの出逢い。クロウリーによってルークという人間の名前を与えられた少年は少しずつ人間としての暮らしや知恵を教えられていきます。しかし、そこでヴァイキングによる悲劇がもたらされ、ルークは「戦狼(ヒルドルヴ)オーディン」と呼ばれる復讐鬼へと変貌していきます。 ルークの仇敵である白髪のエイナルは、笑いながら人を殺し村を焼きながら生首の山の前でダンスを踊る凄惨さを見せます。現代日本とはあまりに倫理観や死生観が違いすぎる過酷な世界ですが、だからこそ見知っておく価値もあります。人類がこういった歴史を歩んできた上で、今という時代があるということを。 本作で特に面白いのは、仇敵であるエイナルというキャラクターの掘り下げです。エイナルがいかにしてそのような人物となっていったのかという部分を読むと、人類の業の深さを感じずにはいられません。 よしおかちひろさんの勢いのある画風も、そんな峻厳な時代を描くのに非常にマッチしています。筆ペン的なもので描かれた部分の線の迫力など非常に際立っています。 北欧神話ではオーディンは最後にフェンリルに喰われますが、血に塗れた神話の神の名を冠したルークは本懐を遂げることができるのか。 帯コメントが幸村誠さんから寄せられているのは圧倒的な納得感です。『ヴィンランドサガ』を好きな方、歴史マンガが好きな方は特に、そうでない方にもお薦めです。
魔女大戦 32人の異才の魔女は殺し合う
FGOに影響力受けすぎた一昔前のソシャゲ感(絵はSSR級)
魔女大戦 32人の異才の魔女は殺し合う 河本ほむら 塩塚誠
mampuku
mampuku
『終末のワルキューレ』のバトルヒロイン版としか言いようがない漫画。可愛い女の子がいっぱい出てくるので自分はこっちのほうがすき。 読んだことない人向けに説明すると、バトルはナレーションが能書きを述べてより強そうな技をぶっ放したほうが勝ちの、カードゲームやソシャゲ、漫画だとバキに近い感じです。原作が『賭ケグルイ』の河本ほむら先生だからといって高度な心理戦を期待するとがっかりしますが、キャラモノとしては間違いなく面白いです。 先程ソシャゲに喩えたように、誰でも名前は聞いたことのある歴史上の人物(ジャンヌ・ダルクやマリー・アントワネットなど)をそのままモデルにした美少女キャラが盛りだくさんとなっており、ある程度誰でも知ってそうな程度の史実ネタを引用しながらバトルを展開させていきます。 たとえば1巻では、自慢の怪力で大太刀を振り回す巴御前を相手に苦戦する敵が、巴は近接タイプだろうと読み距離をとって飛び道具で嬲り殺しにしようと試みたところ、どっこい武士のメインウエポンは実は弓なのである!とドヤ顔で巨大弓で返り討ちにする……などこのように大味で簡単に先が読めてしまう展開の連続ではあるのですが、言い換えれば読んでいて疲れずスナック感覚で美少女バトルを読みたいという欲求を満たしてくれる娯楽作品でもあるということになります。 ときおり試合中に腹に穴が空いたり四肢が吹っ飛んだりしますが、シグルイとか天上天下とかと比べるとキャラクターたちが痛がるそぶりをあまり見せないため、それほどしんどさは無いです(その点はどちらかといえば『一騎当千』のほうが近いかも)
東京カンナビス特区 大麻王と呼ばれた男
大麻を売って家族を守れ
東京カンナビス特区 大麻王と呼ばれた男 稲井雄人
六文銭
六文銭
主人公・千東森生(ちとうもりお)は学生時代に植物を専門していたこともあって花屋を経営するも、あまりうまくいかず家計は火の車状態。 ある日同窓会で、大学時代の友人・加賀山と出会い、金策に苦しんでいる千東をみかねて大麻の栽培を勧めてくる。 当然、犯罪であるから一度は断るも、そんな折に千東の妻が車の事故に会い入院費や壊れた車の買い替えなどで必要な出費に迫られて、ついに大麻の栽培に手を出してしまう。 元々、植物を育てることに才能があった千東は大麻でもその能力を発揮。 抜群の効き目から、高値にも関わらず、どんどん売れる。 しかし、彼のつくった大麻が広まると、今度は反社の人間に目をつけられてしまい・・・という展開。 ただの一般人でも、一度悪に手を出すと、どんどんぬかるみにハマって、抜け出せなくなっていく感じが怖くもあり刺激的です。 特に反社の人間から何をされても、自分も捕まってしまうから警察などの公権力に頼れない感じが絶望そのもの。 だからこそ、自分の力で何とかするしかないのですが、元々気弱だった千東が腹くくって反社の人間たちと対峙する姿にはグッときます。 家族を守るため、父親としてやるべきときはやるんです(まぁ犯罪なんですけど) ずっと反社の連中に追い回されたり、抵抗して殺して?しまったりピンチな状態が続いているんですけど、ここからタイトルにある「大麻王」にどうなっていくのか? 予測ができない感じで、今後が楽しみな作品です。 余談ですが、『銭麻』という作品でも大麻を売っていましたし、捕まっている人も多いし、大麻、密かにブームなのかな。(ダメ、ゼッタイ)
さるまね
恐怖の猿軍団#1巻応援
さるまね 吉田薫
六文銭
六文銭
猿って怖くないですか? 猿好きな方には申し訳ないのですが、 自分、小さい頃から猿ってあんまカワイイと思ったことないんですよ。 リスザルやメガネザルは多少愛嬌があるとか言う人もいたけど、全然理解できなかったす。 たぶん、微妙に顔が人間似ているところとか、愛嬌どころか打算的というか小賢しい感じが好きくない理由なんだと捉えてます。 日光さる軍団の猿回しとか正気の沙汰じゃないっすよ。(なんでだよ) そして、まさに自分の気持を投影し、逆撫でしてくるような作品がでました。 それが、この作品です。 猿が人間のマネをして、人間の道具や武器を使いこなし襲ってくる話。 その習得の仕方なんですが、目をギョロギョロして道具を眺めるんですけど、それが見ていて心底腹立つんです。 なんだ、その目は!と昔の体育教師ばりに顔面平手打ちしたい。 すぐにマネできるくらい知性はあるんですけど、基本理性がないので、本能で行動している感じも余計に腹立つ。 対策として、マネされないよう武器を使う姿を見せてはいけないようなので、何もしない、我慢するだけなのですが、それも歯がゆい。 とまぁ、腹がたってばっかですが、実際内容は結構ホラーで全然笑えないです。 マネできたこと(投石や棒で殴るなど)で襲ってくる猿の容赦ない行動に村人はどんどん犠牲になっていきます。 また、舞台が江戸時代なので、火縄銃みたいな猟銃くらいしかなく、近代的な武器がないのも恐怖ポイント。 ライフルがあれば、ぶっ放したい。 主人公は温厚で優しすぎるきらいがあるようですが腕はたつよう。 まだ1巻では戦っておらず、彼が今後猿とどう戦っていくのか?気になります。 息子とか奥さん、主人公の家族が危機的な状況なのも不安です。 もし家族がこの猿たちに殺されてしまい、その怒りで、山にこもり、音を置き去りにしながら祈る時間が増えた状態まで仕上げてきて、 「この腕力までは真似できまい」 と、この世から猿達を駆逐する復讐鬼と化したら最高だと夢想します