終末の人類に文明は必要ですか?

ピュアだが「糞尿垂れ流し」感大ありのカップル

終末の人類に文明は必要ですか? TALI
OsamaBinLaden

長文失礼します。 このストーリーにはなぜか魚の名前がついている「カサゴ」「メバル」の二人が主人公。その登場人物ほぼ全員必要最低限の思考と語彙しかないしゃべり方をしていてぶつ切りでゆるい感じである。だが物語自体はかなり不穏である。まず最初に出会ったカサゴや「天使」の連中は「神」の名のもとに電子機器などの文明を奪い取っていた。その傲慢な姿勢はナイジェリアのイスラム過激派「ボコ・ハラム”西洋教育の罪”」を彷彿とさせる。彼らも「女子供を楽園に行かせる」という名分で自爆テロ要員確保のため誘拐にまで手を染めていた。そのカサゴだが文明を集めるためなら躊躇なく銃を手にする手際の良さから実際に何人か殺めているのだろう。メバルも最初カサゴと会った際に性交と引き換えに食べ物をねだっていた。その手慣れた様子から彼女もすでに何人もの男から(成果)にありつけたことがうかがえる。 そんなモラルもデリカシーも根本からない「糞尿垂れ流し」という言葉がお似合いの二人だが決して下劣ではない。「レジスタンス」という武装勢力と取っ組み合いの場面ではラジカセから聞こえる音楽に二人そろって涙を流し、カサゴはメバルが歌う姿を見て「所詮素人だ」とけなした次の場面ではいきなり崩れ落ちて号泣し「泣いてる…アタイ泣いてる!」と一人称まで変わるほど動揺する。さらに二人の仲にも変化が起きる。メバルがセクハラじみたからかいを言われると「私はカサゴとしか”しない”」と本人の前で言ってカサゴを赤面させていたし、文明(ゲーム機)を奪おうとするカサゴをメバルが泣いて止めたのに対し、父親の死に関係した人間を前に逆上したメバルを今度はカサゴが止めていた。お互い「大切な人に一線を越えさせたくはない」「この人と一緒にいたい」という感情が芽生え始めている。むしろ二人はピュアな方だろう。これからどう物語が進むのか見当もつないが多分バッドエンドでも二人はお互い笑っていけそうな気がする。

ガレキ!-造形乙女の放課後-

ガレキとは文字通り命を削って創るもの #1巻応援

ガレキ!-造形乙女の放課後- ヨゲンメ
兎来栄寿
兎来栄寿

古くは島本和彦さんの『ガレキの翔』から、最近では『となりのフィギュア原型師』など実は良作が多い造形ジャンルのマンガ。 本日発売したこの『ガレキ!-造形乙女の放課後-』も、そこに名を連ねるべき名作です。フィギュアとガレージキット、何が違うのか判らない。そんな人こそ、このマンガを読むと楽しめることでしょう。知らない世界を知ることは楽しいものです。 本作の主人公である、うどん屋の娘の真白もフィギュアのことなどまったく知らなかったのですが、ガレージキットを自作しワンフェスに出展しているクラスメイトの雛瑚と出逢ったことで、未知の世界へと入門していきます。 真白の性格がとても良く、ややもすれば否定的になられてもおかしくない雛瑚の趣味に対して、優しく積極的な理解を示す姿勢を見せてくれます。何なら創作元のアニメも一晩で観てくれるなど、雛瑚にとっては神対応の真白。しかし、ガレキの道は1日にしてならず。何なら有毒ガスの出る作業や危険の伴う工程もあり、文字通り命を削って作られている側面もあって素人には厳しい道ですが、真白は果敢に挑戦していきます。そうなったらもう、雛瑚との距離は縮まっていかざるを得ません。優しい世界がそこには広がっています。 読者としては、何も知識がなくとも真白と同じ目線で少しずついろいろなことを知りながら楽しく物語を追っていけますし、詳しい人はあるあると共感しながら真白の成長・沼へと脚を沈めていく様を笑顔で眺めていく楽しみ方もあろうと思います。 「無いなら自分で作る」 という、ガレキや引いては二次創作の究極的な部分も非常に気持ちよく描かれていて、好感触です。 令和的な感覚ですが、世間的にはこうした趣味も20〜30年前より格段に受け入れられ易くなっているのだろうと思います。アニメを観るのは普通のことになり、フィギュアもより身近なものになりました。真白のように、自分で積極的に手にしたことはなくても、それを創っている人に対して尊敬を持ち、好意的になる若い世代の子は増えていることでしょう。そう考えると、ある意味では良い時代になってきているなと。 気が早いですが、この作品がアニメ化されて人気が出たらそこから原型師になる人も出てくるでしょう。長く続いていって欲しいです。

逆境ナイン

これは相当上位にランキングせざるを得ない野球マンガ

逆境ナイン 島本和彦
酒チャビン
酒チャビン

失礼ながらそれまで全然存じ上げなかったのですが、半年くらい前に初めて作品に触れて、いまはサインをもらいたいマンガ家ベスト3に入ってくる島本和彦先生による野球マンガです。 アオイホノオをはじめとするマンガ家マンガの面白さについては大信頼をしていましたが、その他のスタイルのマンガについては、これまた失礼ながら完全にナメてました(だってアオイホノオで描かれているものが軒並み面白くなさそうだったんですもん!!)。 が、WBCに備えて世の中の全野球マンガを制覇しておこうとしている以上、避けては通れないということで手に取りました。 これは相当上位に来てしまいます。 もう第1話からめちゃ面白いです!!! あとはとにかく作中に通底する熱いメッセージがとにかくしびれます。最後の最後、飛行機がなぜあんなに高く飛べるのかについての答えとして、「すさまじいばかりの空気の抵抗があるからこそなのだ‼︎」で脳天にカミナリが落ちました。 努力や特訓を描いてその大切さを説くマンガは多く、そういったマンガはわたしも好きなのですが、このマンガは正面から努力や特訓のシーンを描くのとは少し違った形で、そういったものの大切さを教えて下すってます。こういうやり方もあったんか。。。 あまり努力とか頑張るとかそういう熱さが似合わない時代なので、多分この作品を面白いと感じる人は少ないと思いますし、あえて読んでほしいとも思わないのですが、島本先生には引き続きわたしのような者を熱くみちびく作品を著し続けてほしいと心から願っています。サインください!!!

ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~

社畜、ゾンビワールドで人生を取り戻す!!

ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~ 麻生羽呂 高田康太郎
たか
たか

みんな1度は考える「世界がゾンビに襲われたらどうするか」を地で行く、超ハッピーな終末世界・ポストアポカリプス作品。 少女終末旅行、ヨコハマ買い出し紀行のような「心地よい破滅」と違い、ポジティブで享楽的なのが魅力。 (今のところ終末世界特有の切なさは感じられない) 元ラガーマンで溌剌とした輝(アキラ)は、3年のブラック企業努めで精機を失いゾンビ化(比喩)していき、家はゴミに溢れ、街頭のポストに謝り、ホームに入ってくる電車を見つめて死を思う。 しかし、ある朝起きると世界はゾンビと化した人間(本物)で溢れ崩壊していて―――というオープニング。 このあとの、 ***もう会社に行かなくていい!! いままでやれなかったこと、全部やっちゃう!! 部屋も掃除して昼間っからビール飲んじゃうよ!? 昼ビール最高〜〜!!*** という、『負の抑圧が開放されるカタルシス』が最の高!🍺 サンデーうぇぶりで連載を追っていて1巻が出たので購入したけど、やっぱゾン100面白い〜! 香坂さんご夫婦の存在は、本来のゾンビワールドに怯える正しい反応で、アキラの社畜からの開放による異常なハイテンション&ポジティブと対照的なのがいい! そしてこんな非常時にもかかわらず。階の上下でのご近所付き合いをするのがほのぼのしてて好き(こんな非常時なのに意外と図太く注文つける奥さん、ナイスキャラ!) 1巻の続き。ケンチョと合流したあとの展開がポストアポカリプスものの理想形をしているので、ぜひ連載もチェックしてほしい…!! (画像は1話より。アキラが人生を取り戻した瞬間の、暗いゾンビと輝(アキラ)の輝く笑顔の対比が最高)