赤塚不二夫の旗の下に フジオプロの青春

フジオプロが一番輝いていた時代を知る

赤塚不二夫の旗の下に フジオプロの青春 てらしまけいじ
ひさぴよ
ひさぴよ

数々の逸話を残す赤塚不二夫のプロダクション「フジオプロ」での日々を回顧したエッセイ漫画です。 主に70年代の思い出が中心です。チーム体制でバカボンのアイデアを練っていたブレーンたち、長谷邦夫、古谷三敏の活躍や、小学館の武居俊樹、五十嵐隆夫などの名物編集者、曲者だらけのアシスタントたちが登場します。タモリとのエピソードも少しだけ出てきます。フジオプロが一番輝いていた時代。 さまざまな媒体でフジオプロの逸話は語られてきましたが、これまでのイメージをさらに上回ってメチャクチャな現場のように感じました。これでよく制作現場が成り立ってたな・・・とあきれるような感心するような。 フジオプロといえばやはり、お酒のエピソードには事欠かない様子。 職場で飲むのは当たり前、仕事終わりはみんな深夜まで飲んで騒ぎます。 迷惑な酔っぱらいでしかないのですが、やることなすこと面白いから許せてしまう所がありますね。叱られたときは「ごめんなさい!永井豪とダイナミックプロでーす!」と騙って逃げるのには笑いました。 漫画内では貴重な写真をはさみながら、東京新宿区の落合エリアの紹介もされていますので、聖地巡礼する際には参考にしたいと思います。 全体的に湿っぽい話はほとんどなく、楽しい気持ちだけが残る漫画でした。 あとがきは、酒の勢いに任せて書いた文章ということですが、ちょっと意味するところが分からない部分もあり、もう少し真面目に締めてほしかったのが正直な所。しかし同時に「これでいいのだ」とも受け取れました。

東京入星管理局

超絶技巧のSFバディアクション!

東京入星管理局 窓口基
ANAGUMA
ANAGUMA

宇宙怪獣・秘密組織のエージェント・バディアクションのうちどれかひとつでも好きなものがあったら読んでほしい一作です!ちなみに僕は全部好きです! 宇宙人の「入星」を取り締まる管理官の仕事っぷりを東京を舞台に描いたSFバディアクション。 高田馬場とか出てくるけどもう「タカダノババ」感がすごい。それくらいパンク。 洋画的な小気味いいテンポのセリフの応酬と、スピードに乗った超絶描き込みのアクションを組み合わせて バキバキに盛り込まれた設定がサーッと披露されていくのが超気持ちいいんですよ…。 どう見てもワケありのツギハギJK「ライン」と、カタコトのストロングファイター「アン」のちょい百合っぽい主人公チームも見てて楽しいです。(あともうひとり文字通り「割って入る」オッサンが居る) 宇宙人周りの管理官ったら当然二人組ですよね!ってノリで他のエージェントコンビも1巻から山盛り出てきて活躍してくれます。このサービス精神はなに??? もう一切読者に遠慮せずに絵と文字と話の情報密度を詰め込んでやったぞ!!っていうタイプのマンガなので この手のモノが好きな人は鬼のようにハマるはず。 最後に僕が初見で心奪われてしまったポイントを紹介します。 ラインの銃の構えがC.A.R.システムっていうとこです。 このこだわり!!

さくらのはなみち

横綱になりたかった女性の熱血相撲物語

さくらのはなみち 希戸塚一示 西山田
兎来栄寿
兎来栄寿

初めて読んだ時は「また新しい、そして面白い相撲マンガが出てきたな!!」と思いました。そしてようやく単行本になってくれて嬉しかったです。 この作品、始まりが良いんですよね。主人公は相撲部屋の親方の娘として生まれ女子相撲でチャンピオンになった美女。しかし、所詮は女子の世界。どんなに望んでも、願っても、自分は女の体であるので国技館で闘うことは叶わないし、横綱にはなれない。その深い深い絶望感。しかし、彼女はそれならば自分は横綱を作り出してやる、と涙ながらに熱弁します。そのシーンにまず心打たれました。 誰しも一番なりたいものになれる訳ではなく、どこかで諦めた結果の今という部分を抱えていると思います。しかし、そうした道の先でも花は咲くのだと語ってくれる希望に満ちた物語でもあります。 そして、実際に意外な所から意外な男を見つけてきて横綱にするべく鍛え上げていくのですが、『マネーベースボール』的な科学的に捉え直した相撲論や成功も失敗も入り混じった成長過程がまた楽しいです。また、脇役も含めてキャラクターが魅力的に描かれており、相撲以外のシーンも面白く読めます。 相撲に興味がないにもオススメできるマンガです。