はなものがたり

キラメキ高齢女子! #1巻応援

はなものがたり schwinn
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

おばあさんがカワイイ。なんてこった、マンガでこんな体験初めてだ! ほうれい線やまぶたのたるみなどは最低限描きながら、シャンとして涼やかな描写は、ちょっとあり得ないと思われるかもしれない。でも、これは見ていて楽しい! 思えば若い女性の漫画表現だって、現実はあんなに目は大きくないし巨乳じゃないし腰は細くない。「カワイイ」は作者=読者の欲望の果てに作られた、実はあり得ない描写だと思えば、この「カワイイ高齢女性」表現もまた、作者=読者の欲望なのかもしれない。 ではその欲望とは……「年老いても輝いていたい」だろうか。 凛とした化粧品店の女性と、彼女に憧れる夫を亡くした主人公、二人の高齢女性に恋が生まれるかもしれない物語。それはオシャレと吉屋信子『花物語』を挟んで進んでゆく。 時々主人公の心に生じる、楽しく生きることを阻む夫の声。幸せだと思わされてきた自分に、本当は抑圧があったのだと気付かせてくれる女性同士の交流に、胸熱くなる。 そしてどんどん美しく、しなやかになってゆく恋する主人公。老いてからだって変わってゆける、というメッセージは、男性の私の心も明るくしてくれた。

おとりよせしまっし!

re;東京で楽しむ北陸ごはん百合! #1巻応援

おとりよせしまっし! ちさこ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

石川出身のアパレルデザイナー・加賀ひまり(28)は、このご時世の例に漏れず目下リモートワーク中。そんな彼女の楽しみは、お取り寄せグルメを探して賞味する事。 お取り寄せするのは、主に故郷石川、そして北陸の味。主食もお酒もおつまみも、多様な北陸グルメは美味しそうだったり味の予想がつかなかったり。 そんなお取り寄せグルメは、時に他の女性と共に食される。フェミニンで明るいひまりは、会社の後輩女子や隣人の女性、さらには宅配のお姉さんまで虜にする、なかなかの人たらし。ふわっと柔らかいひまりの笑顔と優しさに、こちらもドキッとしてしまう。ひまりと女性達の関係を追いたい、百合漫画として最高の魅力に溢れた作品なのです。 ……ところで。 主人公の名前と「北陸」と聞いて、すぐにピンとくる方もおられるでしょう。 そう、この加賀ひまりさん、同じちさこ先生の『北陸とらいあんぐる』の主人公でもあります。 『北陸とらいあんぐる』では高校生だった彼女。ちょっと雰囲気違いますよね?大人になるとこうなるんだ……というのは興味深い。そして本作でお酒を楽しむ彼女を見ると、時の流れを感じるのと北陸グルメの紹介の幅が広がるのと、両方の面白みがある。そして『北陸』の登場人物も……。 興味のある方は『北陸とらいあんぐる』も是非!

FX戦士くるみちゃん

JD×FX=ホラー #1巻応援

FX戦士くるみちゃん 炭酸だいすき でむにゃん
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

〇〇×女子という作品は、ジャンルを緩く紹介するものを想像しがちですが、本作はそういう感じではありません。1巻を読み終わって、私自身の経験……FXでは無いけれども少しだけ相場(個別株)に触れていた時の事を思い出して、身体が強張りました。 主人公の女子大生は、過去に母親がFXで大損の末自殺に追い込まれたのを、自分の責任の様に感じている。 お金のためではなく、自分の戦いとして始めるFX。奨学金が貰える程の頭脳で、時間をかけてFXを学び、冷静さをもって始めたトレードでしたが、次第に泥沼にハマり冷静さを失ってゆく。危機に陥るたびに口当たりの良い言葉で自らをごまかし、気高い言葉で博打を正当化する主人公は見ていて辛い程。そこにゆるふわさはありません。 主人公を煽る投資仲間の存在も不穏。よく投資について助言したり情報を流す人はオンライン・オフライン問わず存在しますが、そういう人達が何を思っているのかを考えると、こういう人もいるのかもな……と、正直怖くなる。 カワイイ絵で描かれる表情の変化は次第に狂気を伴って、激しいチャートの浮き沈みに人が翻弄される様を残酷に描き出す。今まであった金融系漫画の泥臭さよりはむしろホラーに近い読み心地の、恐ろしい作品でした。

34歳無職さん

休むも歩むも自分で決める

34歳無職さん いけだたかし
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

仕事を失った34歳の女性、バツイチ子供と別居……その「無職さん」は、一年間「何もしない」と決めて、安アパートで一人暮らし。 この作品は物語というよりは、生活の描写をひとつひとつ積み重ねる。それは淡々としていながら、かなり心が痛くなる。 仕事の無い平穏なはずの生活は、気楽さの中に意外な程の腹立たしさ。何度も描かれる、ぼんやりした無職さんの小さな失敗。それを見てモヤッとする私も、実は同じ事を日々している事に気付けば……ああ、無職さんは、私だ。 無職さんに大きなカタルシスは望めない。小さな喜びと不幸がランダムに訪れる日々。しかし彼女は暮らしをきちんとしようとして、それが達成できた瞬間「ちゃっ」とポーズを取る。この時、妄念に満ちた私の心に、リアルな身体感覚が蘇る。これは殊の外、清々しい。 ただ普通に生きる事が難しい……無職さんはそう嘆く。独り身でも〈一人で〉生きている訳では無く、人との関わりに苦しむ事からは逃れられない。それでもなるべく自分の在りたい様に、休むも歩むも自分で決める。 そうして人生を自分の物にして脱力している無職さんの在り方は、私の肩の荷を少し、降ろしてくれた。