雪の峠・剣の舞

秋田・群馬/一風変わった歴史物二点

雪の峠・剣の舞 岩明均
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

岩明均先生の戦国〜江戸期の中編二点。いずれもある程度史実に即し、誰もが知っている物の誕生秘話を描いて、読み応えのある物語になっている。 【雪の峠】 関ヶ原で西軍につき、今の秋田に領地替えとなった佐竹藩。藩主の判断を巡り、古参と若い近習の間でわだかまる中、新しい城の候補地を巡り対立が起こる。 切れ物の若い近習と、上杉謙信をよく知る古参は、頭脳で戦いながらも賢い者同士、理解し合っている。その複雑さ、合理性と矜恃とのせめぎ合い、世代交代の切なさ……様々な感慨の中で生まれる都市に、驚かされる。ああ、成る程! 【剣の舞】 上州(今の群馬県)で新陰流の当主・上泉信綱(かみいずみ・のぶつな)が「撓(しない、今の竹刀の元祖)」を考案する所から始まる物語。信綱の高弟は、ズブの素人の女性に撓で稽古をつけることに。 家族を殺し、自分を凌辱した武士に復讐するため、剣を教わる女性。その中で少し心を通わす二人だったが、戦は近く、仇討ちも目の前に。真剣勝負とは?剣は何のために?命を遣り取りする虚しさへの、柔らかな回答としての撓。静かな虚無感が、心に焼き付く。

めんけぇなぁ えみちゃん

秋田弁女子の春夏秋冬

めんけぇなぁ えみちゃん 沼ちよ子
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

おばあちゃんと二人暮らしで秋田弁強めの中二女子・えみちゃん。田舎暮らしの毎日はとっても楽しい! 読んでいくと、秋田独自のイベントや風物や食、細かな風習の多さに驚かされる。意外と楽しさいっぱいの秋田を素直に享受し、楽しむえみちゃんは、最初から最後まで純粋で愛らしい。 さらに共に楽しむ方言少なめ幼馴染のかなこ、カルチャーショックを楽しむ東京出身のみよしさんの三人娘が揃うと、途端に賑やかになって楽しい。 食べること大好き、演歌大好き、ゆるキャラ大好きな、まだまだ垢抜けないえみちゃんには、「素直」という言葉がよく似合う。その感性を通して見る世界のきらめきは、例えば『明日ちゃんのセーラー服』と同じような眩しい感動を与えてくれる。 春の芽吹きにときめき、眩しい夏に弾け、秋の実りに喜び、長い冬にも楽しみを見つける、とことん前向きなえみちゃんと、無数に散りばめられた「秋田あるある」を楽しむ、どこまでも明るい秋田漫画。方言を使いたくなる! (ちょっと調べた限りでは、ここまでしっかり秋田を舞台にした漫画って、見当たらない。そういう意味でもレアな漫画かもしれない、多分)