祖母の髪を切った日

良い話だけではない、認知症介護のリアルも描く

祖母の髪を切った日 しかばね先生
六文銭
六文銭

自分もおばあちゃん子だっただけにタイトルだけでグッとくるものがあって読んだが、予想の斜めうえをいく展開で逆にそれが良かった。 シンプルに祖母との関係を描いた泣ける話かと思ったが、どっこい認知症になってしまった祖母の介護で精神すりへっていく苦悩も描いた作品でした。 主人公の幼少期の複雑な家庭環境、母親がおらず父親はいつもいないから、祖母に育てられたという状況も相まって、祖母への愛情と、認知症になったことで罵詈雑言を投げかけられ辛さの愛憎渦巻く感じがリアルだなと思った。 添付画像のように、介護に疲れた主人公が泣き言を吐くシーンも多々あり、人によっては嫌悪感を抱くかもしれないが、自分は共感できてしまった。 良いところばかり強調し表現されるよりも、誤魔化しがなくよっぽど良かった。実際は、こういうもんだと身につまされた。 認知症の祖母との生活や、幼少期の不幸話が多いので基本暗い展開が多いが、それでも読後感は不思議と悪くない作品でした。 死んだら思いでしかもっていけないと言われているのに、大事な人も思い出も忘れていく認知症が一番怖い病気だと改めて痛感した。

ファンタジー老人ホームばるはら荘

もしもかつての勇者たちを"介護"することになったら…どうする?

ファンタジー老人ホームばるはら荘 岡村アユム
sogor25
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かつて魔王との死闘を繰り広げた歴戦の勇者たち。その死闘から数十年、彼らも加齢という敵には抗うことができず、平和になった世の中でひっそりと余生を過ごしていた。そんな余生を過ごす家、特別養護老人ホーム「ばるはら荘」。 そこに職員として紛れ込んだ魔王の孫娘・マリー。彼女の目的は祖父の復讐、つまり年老いた勇者たちに自らの手で仇を打つこと。しかし彼女は知らなかった。勇者たちは年齢を重ねても現役時代と同様の魔力・戦闘力を保っていること、そしてそれにも拘らず、すでにボケが始まっていて時折能力を不用意に暴走させてしまうことを… という、剣と魔法の世界×老人ホームという異色の組み合わせの作品。ファンタジーの雰囲気を保ちながら実際にやってることは老人介護というアンバランスさ、そして勇者たちを介護するために集められた超有能な職員たちと、その辺の事情を全く知らずにノコノコと介護の現場という"戦場"に足を踏み入れてしまったマリーの振り回されっぷりがクセになる。現段階でもすごく面白いけど、今後の展開の仕方、それとマンガ読みの間での認知のされ方次第では「ダンジョン飯」になるポテンシャルを秘めている、そんな作品だと思ってます。 …というのが、この作品をファンタジーもしくはコメディとして見たときの感想。それに加えて私個人としては"介護を描く作品"としても非常に注目しています。 作品全体としては介護の対象が勇者たちなだけあって"異世界モノ"特有のフィクション性の高い設定も数多く見られますが、入居者に対する個々の介護の様子を見てみると、現実の介護にも当てはめられるような描写も多く見受けられます。 現実世界では"介護"もしくは"介護士"というと非常に厳しい環境に置かれており、半ば社会問題となりつつあるように思います。そんな介護の現場をリアルに描こうとすると、社会性が高くなる他方でエンタメ性を保てなくなり、敷居の高い作品となってしまうのではないでしょうか。 そんな中でこの作品は、ファンタジーとして作品のエンタメ性を確保しつつ、いずれは誰もが接することになるであろう"介護"という存在をよりポップに読者に伝える、そんな意図も隠されてるのでは、というの深読みしすぎでしょうか? いずれにせよ、コメディとしての面白さもあり、介護というものに気軽に触れることもでき、読んでいていろんなものを得られる作品であることは間違いないです。 1巻まで読了